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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4 混ざる世界と交わらないキミたち

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第107話 そんな肩書は通じない

 今回の襲撃はどうやら俺がターゲットらしい。おトイレ休憩で男子トイレに入ったら、ニヤニヤ笑うチンピラの群れに遭遇した。


「おめぇが常盤奏久かぁ!運が悪かったなぁ!!滝野瀬の当主に恨まれるなんて馬鹿なやつだぜ!!しかし本当に最高の仕事だぜぇ!お前を殺しても後始末は依頼主様がやってくれる!派手に血をぶちまけなぁ!!へぶぅ!!」


 おしゃべりでバカなチンピラ君の顔面に拳を叩きこんで気絶させる。


「てめぇよくもおかしらを!!みんなやっちまえ!!ぐぼぉぉおお!」


 周りのチンピラーズがバットやらナイフやらを振り回して襲い掛かってくるが、俺から見ればどいつもこいつも動きが鈍い。適当によけたり捌いたりしつつ、カウンターを打ち込んでるだけでチンピラーズは全員床に倒れ伏した。


「ば、バケモン…」


「はぁ?お前らが弱すぎるだけだよ。俺はまっとうな小市民だ」


 所詮群れるしか能のないチンピラなんて、前の世界で五十嵐の元カレーズと戦った俺にしてみればただの雑魚である。つーか元カレーズが異常なだけだ。あいつら本当に強かったなぁ。今思えば無事生き延びて結婚にまで辿り着いたの奇跡な気がしてならない。しみじみとそう思い出に浸りながら、用を足して外に出ると五十嵐がベンチに座って遊園地のマップを見ていた。そして俺に気がつくと、なんか気まずそうな顔で。


「おトイレ長かったね。なんか男子トイレからうめき声も聞こえてたし…。お腹大丈夫?やっぱりジェットコースター怖かったの?ウンチゆるいの?」


「ちがいますー。ウンコなんてしませんー。てかやめてまじでやってないからね」


「そうなの?でも大丈夫じゃなかったらちゃんと言ってね!私、ティッシュはいっぱい持ってるから!」


 やめてほしい。デートでうんこした男のレッテルを張られたら俺のメンタルはきっと耐えられない!さて襲撃犯は滝野瀬であることが判明した。しかも遊園地とグルになっているらしい。ここで俺を殺しても証拠を隠滅して警察にもパクられずに済むようにしてあるようだ。マジで葉桐の女って感じの陰謀の周到さに若干イライラする。そして襲撃はさらに続いた。例えばゴーカート乗り場で俺と五十嵐がカートで競争していた時のことだ。


「常盤くん!おそい!おそいよ!!あはは!」


五十嵐がわりと上手い運転で俺の先を走っている。そして彼女と俺との距離が少し空いた時だ。俺の後続車にいかにも遊園地に似合わない怪しげな風貌の男が乗っているカートがあった。男はリュックからボーガンを取り出して、俺の頭に向けて容赦なく撃ってきた。


「わぉ!でも狙いは正確過ぎないほうがいいぞ!」


 俺は思い切りハンドルを切って、カートを後ろに180度回転させてその矢を右手でキャッチする。


「そ、そんな!?矢を掴んだ!?」


 男は俺のやったことに驚いているが、まだまだこんなもんではない。俺はカートをそのまま男のカートの方へと走らせて、すれ違いざまで矢を相手のタイヤに突き刺した。


「う、うわああああああ!」


 男の車はそのままコースアウトして壁にぶつかって大破した。男はその衝撃で気絶してぐったりと車の傍に倒れてしまう。


「飛び道具に頼るなんて男らしくないことするからそうなるんだよばーか」


 俺はそのまま五十嵐とのレースに戻る。だけどこの騒ぎのせいで大きく五十嵐に離されてしまい、俺は五十嵐に敗北してしまった。


「私の方が速かったし、帰りは私が運転してあげる?」


「それは男のプライドが傷つくのでダメです。助手席になんて絶対に座ってやらねーから」


 俺は女の子にへっぽコドライバー認定をされてしまったようだ。滝野瀬ぜってぇ許さねぇ。なにかしら落し前はつけさせてやる。


「ここが最こわのお化け屋敷!!」


「見るからにおっかなそうだな」


 廃校舎をモチーフにしているらしいお化け屋敷の列に俺と五十嵐は並んでいる。なかからは女の子の叫び声がしょっちゅう響いてきていた。リタイア扉から怖がりながらも楽しそうな笑顔でカップルが出てきてた。


「すごいね。最後まで行けたら記念品貰えるんだってー!頑張ろうね!でもウンチゆるくなったらちゃんと言ってね!私はリタイアあり派だから安心してね!」


「だからウンコしてないってば。しかし夜の学校がモチーフか。俺学校に帰宅部で学校に残ってなかったから、実際のところ夜の学校とか歩いたことねぇな」


「あっ帰宅部だったんだ。あれ?美術部とかじゃなかったの?美大受けたんでしょ?」


「俺は我流だからね」


「どんなの書いてるの?」


 俺はスマホに最近書いた絵を表示させた。風景画や抽象画。俺はけっこう雑食なので何でも書く。


「あれ?これ浜松城?!なんかかわいいね!イイねこの絵。かわいい」


「この間のGWの合宿で描いた絵なんだ。けっこう出来が良くて気に入ってる」


「そっかあ。あの時の…。うふふ。絵って不思議だね。浜松城に二人で行ったわけじゃないのに、今私ふたりで行ったような気持ちになってるよ」


 五十嵐は優し気な笑みを浮かべている。この笑みにさせたのだから俺は自分の絵の腕を自慢に思ってもいいかもしれない。五十嵐は俺のスマホをスワイプして俺の絵を次々と鑑賞していく。


「うふふ。色々書いてるんだね?あれ?この絵…」


「あ?それはダメ!」


 俺はスマホの画面に手を置いて絵を隠した。だけど五十嵐は静かだけど強い声で俺に言った。


「見せて」


 その声の真剣さに俺は抗えなかった。だからスマホから手を離した。


「これって駒場キャンパスの池だよね?この女の人は誰?」


 その絵は駒場キャンパスの池を描いたものだ。淡い月明かりと水面の蒼さを描き。左端に膝まで水に浸かる白い布を纏う裸の女性を描いた。だけどまだ作りかけただ。髪の毛は真っ白のままで埋まっていない。顔も描いてない。


「何をモチーフにしたの?」


「うーん。この間アーサー王伝説を聞いてね。それで描いた絵なんだよ。女神が駒場キャンパスの池にいたらって感じかな?」


 というか裸婦画なのであんまり女性相手に見せたくなくてかなり恥ずかしい。


「女神…?でも髪の毛も顔もまだ描いてないんだね」


「どんな色なのかちょっと思いつかなくってね。保留中」


「そうなんだ…うん…。それなら色は…」


 五十嵐は自分の髪の毛をどこか落ち着きなく触っている。だけどその手はふっと止まって。彼女の視線は俺の絵から離れてしまった。


「ねぇアーサー王って確か最後には死んじゃうんだよね」


 どこか冷たい声で五十嵐は言った。


「ああ、戦の傷が原因で死んで、湖から女の人が出てきて、その女に連れられて天国だかなんだかそんなところに行ったんじゃなかったかな?まあ未来に復活するとかなんとかって話もあるけど。そこまでは知らない」


 真柴からアーサー王伝説を聞いた後に調べたけど、天国に行っただの、湖の底で眠りについてるだの、未来に復活するだのとアーサー王の設定がもりもりに積み込まれすぎててよくわからないことになってる。


「ならその絵の女神の髪の毛は灰色にだけはしないでね」


「え?それってどういうこと?」


 俺はその五十嵐の言葉に虚を突かれたように感じた。五十嵐の髪の毛は灰色がかった茶髪だ。灰被ったような色。シンデレラカラー。


「…え、ああ。えーっとね。うん。さすがにほら。なんか自分と同じ髪の毛の色の裸の女の子の絵を常盤くんが描いてたらなんか恥ずかしいし。…それだけだよ。うん」


「そうか。まあそうだよな。あはは」


 何かピースが嵌らないような違和感。どうしてもぽっかり空いたような虚無感。真柴の言った女神とは一体なんなんだろう?


「あ、常盤くん!そろそろ私たちの順番みたいだよ!」


 気がついたら順番が回ってきていた。俺たちは係員の誘導に従って、お化け屋敷に入った。薄暗い中で五十嵐の顔を盗み見る。彼女は楽し気に笑っていた。だから俺も笑うことにした。楽しもう。今はこの瞬間だけを楽しもう。そう思ったのだ。


『うう!夏休みの宿題が一枚足りないよぅううう!!!先生!本当はちゃんとやってるんですぅ!信じてくださぁああいいい!!ぎゃゃああああああああああああああああああああああああああああ』


 子供の幽霊らしき声がスピーカーが響いてくる。つっこみどころが満載じゃないかな?だけど雰囲気は出てる。隣の五十嵐はワクワクな顔で楽しんでる。


『ぐぁああああああぁああ!!』


「「ぎゅあああああああああああ!!」」


 俺と五十嵐の前にゾンビみたいな恰好をした女教師の幽霊っぽい奴が登場した。唐突な登場に俺たちは実に楽しく悲鳴を上げてしまった。


「ヤバいね今の!すごくリアル!!超怖かった!あはは!」


 五十嵐は全然怖がってる感じじゃないが、俺にぎゅっと抱き着いてきた。胸の柔らかさにドギマギする俺。なんだろう。まともに遊園地してる。だけどね。ここは所詮は葉桐の陰謀の中なんですよ。よく耳を済ませると、明らかにおかしな足音が天井から響いていた。俺は目の前の謎解きギミックを指さして。


「お前あれ解ける?」


「え?そういうのって男の子がドヤ顔で解くもんじゃないの?」


「こういうのは他人に解かせて慌ててる様を見るのが楽しいんだよ」


「うわぁ!常盤くんがすごく悪い男にしか見えないよ!!でも謎解きゲーム結構好きだよ!うふふ!」


 五十嵐は楽し気に謎解きギミックと向かい合う。その隙に俺は壁を蹴って跳んで、天井のダクトの出入り口に掴まった。それを工具でこじ開けてダクトの中に入る。するとそこには刀を持った忍者みたいな恰好をしたやつがいた。


「え?忍者って実在してたのかよ…?!」


「というかお主は拙者の気配に気がついたのでござるか?!」


「喋り方まで忍者かよ!まあ良い!時代遅れの忍者は歴史の闇に消えろ!!」


 忍者は背中の刀を抜いて俺の首に突きを放った。だけど俺はその突きを背中に隠していた十手を抜いて絡めとった。


「十手?!どう見ても反社のお主が十手?!」


「反社いうなこの野郎!ふん!」


 俺は十手に力を込めて忍者の刀を叩きおる。


「刀が!拙者の刀がぁ?!」


「梃子の原理を応用ってやつだ!!おりゃ!くたばれ!!」


 忍者のこめかみに手刀を叩きこんでやった。忍者はその場に気絶した。こうして忍者は歴史の闇に消えたのである。俺はすぐにダクトから出て謎解きギミックの五十嵐のところに戻る。


「うーん?やっぱりあいうえおを逆にすれば解けるのかな?」


「まーだ悩んでるの?ふー」


 五十嵐の耳に俺は息を吹きかける。


「きゃん!もう常盤くん!なにするの!変な声出ちゃったじゃん!もうぅ」


 ぷりぷりと怒る五十嵐が可愛かった。


「で、問題は解けたの?」


「ううん!全然解けなかった!常盤くんにまかせる!」


「ええぇ。まあいいけど」


 俺はちゃっちゃとギミックを解除する。するとドアのカギが開いて通路が現れた。


「わーすごい!常盤くんって頭よかったんだね!」


「ふっ。まあ俺は本来頭脳派だからね」


 ちょっとドヤ顔を浮かべられた。楽しいって思えた。俺たちは通路を進む。途中でお化けに遭遇して怖がったりしてみて楽しんで。そしてゴールにたどり着いた。貰った記念品は富士興ウルトラランドのマークがついた特別な写真立てだった。五十嵐はそれを貰ってすぐにジェットコースターの時に撮られた写真を入れた。


「なんか思い出がゴージャスになった!」


「なんだろう。あらためて見ると自分がやったことなのにちょっと恥ずかしいわ」


「される側はもっと恥ずかしかったけどね!ふふふ。これは大事に飾っておくね」


「どうぞご自由に」


 そして俺たちは次のアトラクションに向かって通路を歩く。その時、遠くにキラりと何かが光ったように見えた。それは展望タワーの頂上だった。俺はその瞬間、敵の狙いを察知した。今までの襲撃はただの囮。本命の攻撃がこれから来る!






































 バカと悪い奴ほど高いところが好きだ。これはきっとどこの国でも変わらないと私は思う。滝野瀬澪がカナタを狙うと聞いて、様々な可能性を私になりに考えた結果、この富士興ウルトラランドで襲撃を行うだろうと結論づけた。私はこの遊園地で一番高い建物である展望タワーの頂上に身を潜めカナタたちを監視し続けていた。そしてカナタたちがお化け屋敷に入ってすぐに滝野瀬澪がこのタワーの頂上に現れた。このタワーの頂上は本日は貸し切りになっていた。そんなことができるのは滝野瀬だけであり、そしてその目的はただ一つだけだ。滝野瀬は背負っていた長細いバックを床に寝かせてそこから大型のスナイパーライフルを取り出して組み立てと調整を行った。彼女は床の上に伏してスナイパーライフルを構えてお化け屋敷の出口に狙いを定めた。そしてカナタたちが出入り口から出てきた瞬間、滝野瀬はニヤリと笑顔を浮かべて、引き金を引こうとした。だから私は滝野瀬の後ろ頭に愛用の銃を突きつけて。


「動くな。動けばオ前ヲ殺す」


「な、え?その声はスオウさん?!」


 滝野瀬は私の方に振り向いた。ひどく驚いた顔をしている。


「どうしてここに?!それになんで邪魔をするんですか!!」


「なンでだと?ワタシはオ前の友達でもなければ仲間でもなイし同志でもなイ」


「あなたは葉桐さまの命令に従っている者でしょう!?わたくしに銃を向けるなんて裏切りに等しい行いですわ!!」


「葉桐とワタシはアくまでも債務返済の付き合イでしかなイ。借金がなければアイつに従う義理はなイ」


「嘘でしょう?!あなたはたかが借金返済のためだけにあんな恐ろしい命令に従っていたのですか?!葉桐様への御恩と愛なしであんなことができるのですか?!軽蔑しますわ」


 この女は私が葉桐の愛人か何かだと思っていたようだ。どうしてこう世間の女は甘くてナイーブな考え方をするのだろう。


「むしろ男への愛情だけでその恐ろしいことヲしでかそうとするオ前ヲワタシは軽蔑する。まあワタシがここにイる以上そンなことにはならなイが」


 私はスナイパーライフルを思い切り踏みつける。すると銃は衝撃に耐えきれずばらばらに壊れてしまった。辺りに銃弾が散らばり乾いた音を響かせる。


「くっ!かくなる上はわたくし自らの手で!!」


 滝野瀬は拳銃を腰のホルスターから抜いて立ち上がり、私のそばを駆けて階段の方へ向かう。どうやら直接カナタを殺すつもりらしい。


「そンなことにはならなイとワタシは言ったはずだが?」


 私は滝野瀬の左の太ももに狙いを定めて引き金を引く。


「ぐぅう!そんな!!わたくしを!?本気で撃った?!わたくしは葉桐さまの女のに?!わたくしを!このわたくしを撃つなんて!!」


 太ももを撃たれた滝野瀬はその場に倒れて痛みに耐えていた。


「まさかオ前はワタシが脅しで銃ヲ向けてイたと思ッたのか?」


 私は滝野瀬の傍によって、彼女の太ももを思い切り踏みつける。


「ぎゃああああああああああああ!ああああああああああああああああああ!!いあやあああああああああああああああああああああ!!」


「葉桐の女なンて肩書はワタシには通用しなイ。ワタシが恐れるのは罪ヲ悔イ改めて罰が消エることだけだ」


「あなたも罰を恐れているんでしょう!?ならばあなたも葉桐さまとわたくしたちの同志になれますわ!!だからもうわたくしを痛めつけるのはやめて!あの男を殺させてぇ!!じゃなきゃこの世界は救えない!!救いたいのぉ!世界を救ってわたくしも救い上げてぇ!!!」


「嫌だね。罰は自分一人で受けるものだ。一人だけで背負ウものだ。だけどその日までは楽に生きたインだ。罰を受けるワタシの傍にカナタは居てくれるんだ。だから殺させない。代わりにオ前が死ね」


 銃口を滝野瀬の額に向ける。そして引き金を引こうとしたその時だ。私のスマホが鳴った。このタイミングでかかってきた。こんなご都合主義が発生するならばあの男しかいない。一番近くを飛んでいるドローンを睨みつけながら電話を取った。






 


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