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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4 混ざる世界と交わらないキミたち

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第105話 サービスエリアにある変なキーホルダーがエモい!!

 大学生生活における勝ち組にはいくつかの基準がある。一番のリア充は授業をさぼって一日中エッチするカップルだと思う。これはハードルが高い。だけどもう一つ地味にハードルが高い行為がある。付き合ってはいないけど、お互いに気にはなってる同士が授業をさぼって遠出デートする。個人的にはこっちの方がエモいと思うんですよね。はい。というわけで、俺と五十嵐は授業をさぼってただいま高速道路に乗って富士興ウルトラランドに向かっていた。


「それでね。佐藤さんがカレーパン食べたら、舌が痺れるくらいに熱かったんだって!それで隣の席の加藤くんに水を貰ったんだってさ!パンには気をつけなきゃだめだよねぇ」


 高速道路に乗ってからはひたすら五十嵐が日常の話をし続けていた。俺は返事をしたり相槌を打ったりまったりとした時間が流れていた。BGMとか用意してたけど、特に必要なかったらしい。けっこう編集がんばったんだけどね。


「そう言えばその佐藤さんと加藤くんって一緒にいること多い気がするな。学食とか図書館でも一緒だった気がする」


 今日の五十嵐は短めのフレアスカートに黒のパンストを合わせていた。だからたまーに助手席に座る五十嵐の太ももをちらちらと見てしまうことがあった。


「たしかにそうだよね。あっ…ああ…そういうことかなぁ。あはは」


 五十嵐が恥ずかしそうにはにかんでいる。頬をほんのり赤く染めて可愛らしく見えた。


「あ、ああ。なるほどなぁ」


 おそらくその佐藤さんと加藤くんは付き合いだしたんだろう。大学生活では何がきっかけとなって男女が仲良くなるのかわからないものだ。雑談が恋バナに変わってしまい、俺たちはどことなく甘い気まずさを覚えた。なにせ俺たちだって授業をさぼってデートしてるんだ。世間から見たら秒読みみたいなもんだろう。


「そ、そうだ。県境またぐとラジオってけっこう変わるんでしょ?!つけてもいい?」


「あ、ああ。どうぞ」


 きっと話を反らしたくって、五十嵐はラジオをつけた。


『次のニュースです。指定暴力団のフロント企業と目されていた会社の社長とその役員の合わせて5名が殺害されました。銃の線条痕より先日の暴力団員の殺害事件と同一の犯人と推定されておりますが、目撃情報もなく捜査は難航しているようです。次のニュースです。トルコの遺跡調査に皇都大学の研究チームが参加を表明し…』


「物騒なニュースだねぇ。もっといいのないかな?」


 五十嵐はラジオのつまみを弄ってチャンネルを変えた。


「ラジオネーム・緑色のガラナジュースさんからのお便りです。『日本のニュースだとブラジル人の名前が英語読みとかローマ字読みになってて何かもやっとした気持ちになります。もっと日本の方々にブラジルを知ってほしいです。なのでボサノバをリクエストしますね』とのことです。番組でも調べましたが、たしかにブラジルのニュースの単語を英語やローマ字読みして翻訳が微妙になってることがあるみたいですね!相手の文化を尊重する姿勢が我々には問われていると思います!ではリクエスト曲をどうぞ!!」


 ラジオからブラジル音楽が流れだす。陽気なものを想像していたが、なにかどことなく叙情的なリズムの曲だった。


「サンバーって!感じの激しい奴じゃないんだね?こういう甘いリズムの曲もあるんだね」


「みたいだな。ブラジル文化も奥が深いってことなんだな」


 ブラジル文化を日本人なら陽気でサンバでって感じくらいにしか理解していない。だけどスオウはそういう陽気さとはどこか遠いイメージがある。だからふっと思い出した。『スオウに気をつけろ』という真柴の言葉を。あれはいったいどういう意味なのだろうか。


「あっ!?またスオウのこと考えてるの?!私なんてガソリン代だって割り勘なのに!」


「すまんすまん。ちょっと心配になっただけだよ。まだ富士興にはついてないからセーフセーフ」


「ふーん?私プイって顔をそむけてもいい?」


「そりゃ勘弁して欲しいね。そろそろサービスエリアだからそこでご機嫌治してよ。なんか面白いもん見つけてみせるからさ!」


「そう?じゃ頑張って面白いもの見つけてね!期待してるからね!」


 そして俺たちはサービスエリアに車を停めて休憩にしゃれ込んだのだ。




 サービスエリアは面白い場所だと思う。なぜか演歌のカセットテープが売ってたり、よくわかんない謎のご当地ランチがあったり、お土産っぽいものがあったり。ネタには事欠かない。


「これおもしろくね?」


「それ面白いっていうの男の子だけでしょ!あはは!すべってるよ常盤くん!あはははは!」


 キーホルダーコーナーにて竜とかどくろとかが巻き付いた剣を見つけて俺はちょっと興奮してしまった。だから五十嵐にそれを見せたらなんかケラケラと笑われてしまった。


「じゃあこれどうよ?」


「ん?なにこれ?!水の中に濃い水色の液体?砂時計みたいに落ちてる?!すごーい?!」


 正式名称は知らないけど、水の中におそらく比重の違う色のついた水が入った砂時計みたいな謎のアイテムに五十嵐が興味深々になっている。すごく楽し気にひっくり返したり振ってみたりしている。買ってあげようと思った。だけどこの子はおごられるのが好きじゃない。だから提案した。


「五十嵐。俺にこの謎の剣を買ってくれ。その代わりに俺がそのなぞの水砂時計もどきを買うからさ」


 俺の提案に五十嵐はにっこりと笑って頷いた。俺たちはサービスエリアでこのしょうもない子供しか喜ばないようなおもちゃを割り勘で買ってサービスエリアを後にした。





 そしてサービスエリアからしばらく車を走らせて、高速道路を下りると富士山の麓の富士興ウルトラランドに辿り着いた。とても広い駐車場に多くの車が止まっていた。


「わぁすごく広い駐車場だね!あはは!なんか楽しい気持ちになってきたよ!」


 五十嵐はまだ入場していないのに、興奮気味である。このまま放っておくと駐車場で車に引かれかねない気がしたので、俺は彼女の右手をとって、俺の左手に組ませた。


「走り回ると危ないからね。一緒に行こう」


「うん。そうだね。一緒に行こう。うふふ」


 俺たちは手を組んで駐車場を歩く。


「ねぇねぇあのバイクすごくない?超強そう」


 五十嵐が指さす先にメッチャごつくて早そうなバイクがあった。マフラーとかやべぇいかつい。緑色と黄色でカラーリングされていてすさまじく目立つ。かっこいいとは思うけど個人的には前の世界でバイクにひかれたことがあるのでバイクは苦手だ。


「たしかに強そうだな。きっとモヒカンとかが似合うムキムキなお兄さんが乗ってるんだろうね。おっかな」


「モヒカンかぁ。常盤くんは似合わなさそうだね。うーんというか常盤くんは何が似合うのかな?髭面な時あるしなぁ。なんか難しいなぁ。もう男らしく坊主にする?」


「それ考えるのめんどくさくなっただけでしょ。まあ男は女の子ほど髪型ヴァリエーションないしね。五十嵐は髪型あんまりかえないけど、こだわりある?」


 五十嵐はいつも三つ編みハーフアップをやっている。たまーに変わったりすることはあるけど、この基本は変わらない。前の世界ではとくに触れなかったけど、なにかこだわりでもあったのだろうか?と思ったのだが。


「別に。この髪型にしておかなきゃだめだからね。たまに休む時は休むけどね。うん」


 五十嵐がまるで感情を感じさせないような声でそう答えた。そして顔を見て地雷を踏んだって気がついた。まるで能面みたい感情を感じさせない冷たい顔をしている。


「そ、そう。あはは。あ、そろそろチケット売り場だ。そう言えばここにはなんかウルトラランド戦隊なんていうマスコットキャラがいるんだってさーあはは」


「へぇそうなんだ!あはは!じゃあ怪人とかもいるのかなぁ?まあ常盤くんの顔よりこわいってことはきっとないよね、あははははは」


 俺が話を逸らすとすぐに五十嵐はいつも通りののほほんとした笑顔に戻ってくれた。前の世界じゃ結婚したのに、彼女のすべてを俺は知らない。それがとても悔しかった。



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