廃工場の影
目を開けると、仮眠室の天井がぼんやりと視界に広がっていた。
時計を見ると、入眠からきっかり三時間経過している。香織の命令通りに眠ったはずだが、体の奥底にまだわずかな疲労の残滓が漂っている。
ブーツを履き直し、廊下へ出る。解析室からは低い機械音と、複数人の話し声が漏れていた。
扉を開けると、モニターの光に照らされた木島が、端末を叩きながら資料をスクリーンに映している。
玲華は壁際で腕を組み、香織は背後で腕を組みながら無言でモニターを見ていた。
「起きたか、清」
木島が振り返る。眼鏡の奥の瞳は赤く充血し、徹夜続きであることを隠そうともしない。
「証拠の解析は終わった。結論から言うぞ」
⸻
スクリーンには、廃工場で押収された資料、通信ログ、そして清が直接入手したデータチップの解析結果が並んでいた。
「まず、押収物の中からEMP装置の設計図と、運用マニュアルの一部が見つかった。だが、それは単なるカモフラージュだ。本命は——」
画面が切り替わり、衛星写真が映し出される。
港湾区域から少し離れた、山間部の小規模施設。
「ここだ。EMP装置はあくまでも囮。本当の目的はこの施設に保管された試作兵器の奪取だ。廃工場は陽動、セルゲイの部隊は時間稼ぎをしていた」
清が顎に手を当てる。
「つまり、黒幕——ドラガノフは、俺たちを港に釘付けにしている間に、本命を動かそうとした」
「そうだ。証拠を突き合わせた結果、動き出すタイミングは……今夜だ」
玲華が口を開く。
「でも、その施設は山奥よ? 港湾区域からのアクセスは時間がかかるんじゃない?」
「それも計算済みだ。奴らは輸送ルートにヘリを使う。」
香織が腕を組んだまま低く言う。
「つまり、先手を打たないとアウトってわけね」
⸻
清は皆の視線を受け止め、息を整えて口を開く。
「今回は少数精鋭で行く。大人数だと接近がバレる可能性が高い。俺と玲華が現場へ、木島は本部から支援」
木島が眉をひそめる。
「二人だけか? 無茶だぞ」
「だからこそだ。俺たちが目立たないルートで先に潜入し、敵が動き出す前に押さえる。だからお前は通信と情報の支援に専念してくれ。現場で情報を刻々と更新してもらう必要がある」
香織は数秒沈黙し、やがて小さく頷いた。
「分かったわ。作戦中、撤退判断は私が下す。危険と見れば即座に呼び戻すわ」
玲華も前に出て言う。
「現場では私が清をカバーする。サポートは任せて」
清は短く「頼む」とだけ返した。
⸻
打ち合わせが終わり、清と玲華が出発準備をしようとしたその時、木島が清を呼び止めた。
「待て。お前たちの足はこれだ」
シャッターの奥から現れたのは、漆黒のスポーツセダン。
ボディラインは滑らかだが、ところどころに戦術装備を積み込んだ痕跡がある。
「見た目は市販車だが、中身は別物だ。防弾仕様、EMP耐性あり。赤外線偽装も搭載してるから、ドローンにも捕捉されにくい。
さらに——」
木島がドアを開けると、運転席の前に多機能コンソールが並び、助手席には折り畳み式のドローン射出台が組み込まれていた。
「緊急時には座席下から小型の無人偵察機を展開できる。航続時間は10分、映像はリアルタイムで俺の端末に送信される」
玲華が感心したように口笛を吹く。
「やるじゃない、木島」
木島は少し照れくさそうに咳払いし、机の上から小さなケースを取り出す。
中には米粒ほどの金属片が並んでいた。
「これが新作の発信機だ。超小型で、最大5キロ圏内なら俺が追跡可能。磁力で貼り付けられるから、車両や装備品だけじゃなく、人間の衣服にも仕込める」
清は一つ手に取り、光にかざした。
「……軽いな。バッテリーは?」
「連続稼働で72時間。お前らが使うときは絶対に予備も持って行け」
清は頷き、ケースごと受け取った。
⸻
全ての準備が整い、車のドアを閉めようとした清は、一度立ち止まった。
「……その前に、やることがある」
そう言って、腰のポーチから軍用暗号通信端末を取り出し、素早く番号を入力する。
呼び出し音の後、低い声が応答した。
『こちら陸上自衛隊東部方面総監部、一等陸佐・南條だ。清か』
清は短く答える。
「ああ、俺だ。急で悪い。至急、山間部施設の警備を強化してほしい。試作兵器を狙った動きがある」
『……廃工場の件か。やはり繋がっていたんだな』
「間違いない。こっちでも潜入を行うが、敵の動きを完全に抑える保証はない。だから自衛隊側でも二重の防衛線を張ってくれ」
受話器の向こうで、南條が深く息をつく音がした。
『了解した。私の権限で即応部隊を配置し、監視強化を行う。だが、君の言葉を全面的に信じての判断だぞ』
清は微かに笑みを浮かべ、静かに応じた。
「信じてくれて助かる。万が一の時は——こちらが時間を稼ぐ」
『……分かった。こちらも腹を括ろう。君の無事を祈る』
通話が切れると、端末の画面が暗転する。
清は深く息を吐き、端末をしまった。
玲華が助手席から問いかける。
「今のは?」
「自衛隊の南條一佐だ。古い知り合いでな。あの人が動けば、監視網は鉄壁になる」
「……心強いわね」
木島が腕を組みながらニヤリと笑う。
「清、お前はどこに行ってもコネを持ってるな」
「生き残るには、持ってるカードは全部切るしかない」
そう言って清は車に乗り込み、エンジンをかける。
今度こそ、全ての準備は整った。
香織が二人を見据えた。
「くれぐれも無茶はしないで。撤退命令が出たら、どんな状況でも従うのよ」
清は短く「了解」とだけ返す。
エンジンが静かに始動し、低い唸りをあげる。
玲華が助手席に乗り込み、清が運転席でシートベルトを締める。
木島は最後まで手を振り、通信機越しに声が車内に響いた。
「俺の可愛い相棒を壊すなよ。あと発信機は忘れるな」
清はわずかに笑い、アクセルを踏み込む。
黒い車体が夜の都市を抜け、山間部へと向かっていった——。
⸻
薄暗い早朝の空気を切り裂くように、黒い車体が静かに滑る。
東の空はまだ濃紺に沈み、地平線だけがわずかに赤みを帯びていた。
そのわずかな光すら、これからの任務の危うさを示すようで、清の胸に鈍い重さを落とす。
助手席の玲華は端末を操作しながら小声で言った。
「衛星の監視データ、工場付近に大きな動きはないわ。でも、正面のゲートにだけ熱反応がある」
「見張りか」
「可能性は高い。ただし人数は二人前後。パターン的に巡回ではなく“監視”だと思う」
清はハンドルを握る手に力を込めた。
「……つまり、中にはもう“待っている”ってことだな」
その言葉に玲華は小さく頷いた。
二人の間に沈黙が落ちる。
それは決して気まずさではなく、互いの思考に集中するための静けさだった。
車内に流れる空気を破ったのは、車のHUDディスプレイに浮かぶ青いアイコン。
木島が設計した戦術支援システムだ。
「ルート最適化完了」
電子音声が響き、スクリーンには工場周辺を迂回する赤いラインが描かれる。
清は鼻で笑った。
「木島のやつ、本当に余計なことまで作り込みやがって……」
「でも、便利なんでしょ?」玲華がわずかに口角を上げる。
「……まあな」
工場の数百メートル手前に差しかかると、清は車を路肩に停めた。
エンジンを切ると、あたりは急に静まり返り、夜明け前の虫の音と遠い波の響きが耳に届く。
「ここからは徒歩だ。準備しろ」
「了解」
玲華は無駄のない動作でイヤーピースを耳に装着し、タブレット型の端末を胸に固定した。
清は背中のリュックを背負い直し、腰のホルスターにサプレッサー付きの拳銃を収める。
装備は最小限。それでも重量は身体にのしかかる。
清はふと、出発前にかけられた木島の言葉を思い出した。
『無理はするな。生きて帰ることが最優先だ。だが、お前ならできるはずだ。信じてるぞ』
その声音には、科学者らしからぬ熱があった。
玲華が清の視線に気づいたのか、小声で囁いた。
「緊張してる?」
「まさか。ただ、また妙な既視感がある」
「既視感?」
「廃工場ってのは、どうも運が悪い」
冗談めかして返した清の目は、決して笑ってはいなかった。
二人は草むらを抜け、薄明りに包まれた工場の影へと近づいていく。
外壁は錆びつき、ひび割れた窓からは冷たい空気が漏れ出していた。
そこに潜むのは、ただの廃墟ではない“何か”だ。
清は拳銃を抜き、玲華に視線を送る。
「ここからが本番だ。援護は任せる」
「もちろん。死なせたりしないから」
玲華の言葉は静かだが、芯の強さが滲んでいた。
二人は視線を交わし、無言でうなずき合う。
工場の外壁を伝いながら、やがて裏口の鉄扉にたどり着いた。
清は手袋越しに冷たい鉄に触れる。
その瞬間、肺の奥で息が固まり、鼓動が速くなるのを感じた。
「行くぞ」
声は低く、それでいて確かな決意を宿していた。
夜明け前の空の下、潜入が始まる——。
⸻
工場の鉄扉は重々しい音を立てながら開いた。錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、長らく人の出入りを拒んできたことを示すかのようだ。清は息を潜めながら扉を押し広げ、その隙間から内部を覗き込む。
中は想像以上に暗く、湿った空気がよどんでいた。割れた窓から差し込むわずかな光が、埃の粒を銀色に浮かび上がらせる。床には古びた油の染みが広がり、機械の残骸が影を作っていた。
玲華が清の背に続き、目を細めて囁いた。
「……誰もいない?」
「いや、違う。気配はある」
清は足音を殺しながら進む。壁に張り付くようにして周囲を確認し、やがて中央の通路に目を向けた。その瞬間、視界に飛び込んできたのは、倒れ伏した人影だった。
清は手で制止の合図を出し、慎重に近づく。男は迷彩服を着た警備員。胸元に深々とナイフが突き刺さり、血溜まりはまだ乾ききっていない。
清は膝をつき、指先で血液をすくう。温かい。
「……死んでからせいぜい五分以内だな」
「つまり、まだ近くにいる」玲華が冷静に言った。
清はうなずき、拳銃を握り直す。
「俺たち以外に、もう一つの勢力がいる」
二人の視線が交わる。余計な言葉はなかった。ただ警戒を最高度にまで高め、前進を再開する。
⸻
奥に進むと、薄暗い通路に不自然な反射が見えた。
清はすぐに手を挙げ、玲華を止める。
「ワイヤーだ」
腰を低くし、わずかな光で床から天井へと伸びる細線を見つける。仕掛けは単純だが、解除を誤れば即座に爆発物が作動する構造だ。
清はリュックから小型の解析デバイスを取り出す。木島が調整した改良型だ。
「頼むぜ……」と呟きながら、慎重にコードを接続。画面に走る緑のバーが進行し、電子音が小さく鳴った。
「……解除完了」
玲華が口元をわずかに緩める。
「こういう時だけは頼もしいわね」
「だけ、は余計だ」
罠を一つ突破し、二人はさらに奥へ進む。
⸻
その時、鋭い金属音が通路の先から響いた。次いで短い怒声。
清と玲華は即座に壁に身を隠す。
銃声が工場に反響する。
次の瞬間、弾丸が壁に跳ね、石片が頬をかすめた。
「……見つかったな」清が低く呟く。
「応戦する」玲華が冷静に銃を構えた。
清は反射的に角から身を乗り出し、二発を放つ。反動が手首を震わせ、敵の影が奥に飛び退くのが見えた。だがすぐさま別方向から弾丸が飛んできて、床に火花を散らす。
「三人はいる!」
「分かった!」
清は銃撃で敵の注意を引きつけ、玲華に合図を送る。玲華は低く構え、影のように横手の柱に滑り込んだ。
その直後、玲華が敵の一人に飛びかかる。拳銃を撃つ間もなく、彼女の肘打ちが顎を直撃し、男の身体が宙に浮いた。続けざまに回し蹴りが脇腹を捉え、骨が軋む音が響く。
「ぐっ……!」
男は呻き声を上げて倒れ込んだ。
清はその隙に二人目へと狙いを定め、弾丸を一発。敵の肩を貫き、悲鳴が上がる。玲華は即座にその男に駆け寄り、銃を奪い取って関節を極めた。
三人目が慌てて撃ってきたが、清が柱に飛び込むようにして回避。その反動を利用して接近し、ナイフを逆手に握って敵の銃口を逸らす。相手の引き金が引かれるが、弾丸は天井に吸い込まれただけだった。
清は低く唸りながら、敵の胸に肘を叩き込む。相手が一瞬たじろいだ隙に、玲華が背後から組み付いて締め落とした。
短い沈黙。
「……終わったか」清が息を整える。
「まだよ」玲華が首を振る。
「どういう意味だ」
「この程度の人数、陽動にすぎない。もっと奥に本命がいる」
玲華の言葉に、清は背筋を冷たい汗が伝うのを感じた。
⸻
二人はさらに工場の奥へと進んだ。
途中で何度も罠が仕掛けられていた。赤外線センサー、圧力式の地雷、さらには電磁トリップワイヤー。だが、清の知識と木島のデバイスはすべてを見破り、解除していく。
「次はこれだ。……センサーの波長は赤外線。こいつを逆位相でジャミングすれば……」
指を走らせ、数秒後に赤い警告灯が緑に変わる。
「クリア」
玲華は横で感心したように目を細める。
「ほんと、こういう時だけは——」
「その“だけ”はやめろ」
清が少しむっとして返すが、玲華の声にはかすかな信頼が混じっていた。
⸻
その時、背後から乾いた拍手が響いた。
「ブラヴォー……いい腕だな」闇の奥から現れたのは、十名ほどの武装兵だった。
黒い装甲服に身を包み、軍用の自動小銃を構えている。彼らの足取りは迷いがなく、廃工場の内部に慣れきっているようだった。
清と玲華は背中合わせになり、敵に囲まれる。
「数が多いな」清が冷静に呟く。
「倍はいるように見えるけど?」玲華の口調も落ち着いていた。
「いや……三倍だ」
「軽口を叩く余裕があるなら撃ちなさい」
合図もなく、敵が先に撃ち始めた。
——ダダダッ!
弾丸の雨が鉄骨を削り、コンクリート片を飛ばす。清は玲華の肩を引き、残骸の陰に飛び込む。
「くそっ、完全に包囲されてるな」
「言わんこっちゃない」
清は銃口を覗き込み、呼吸を整えてから三発連射。
「一人ダウン」
「ナイス。でも遅い」
玲華は銃を持ち替え、素早く身を乗り出して二発撃った。
狙い澄ました一発は敵の肩を撃ち抜き、もう一発は足を貫通させた。敵兵が悲鳴をあげて崩れる。
清が思わず口元を緩める。
「やるじゃないか、珍しく真っ直ぐ当たったな」
玲華の眉がぴくりと動く。
「珍しく? ……何それ」
「普段はちょっと照準が甘いからな。まっ、俺がカバーしてるから安心しろ」
「……言ってくれるわね」
ムッとした玲華は、弾丸の雨をものともせずに飛び出した。
「おい、無茶だ!」清が叫ぶ。
だが彼女は低く身を屈め、滑るように床を転がって敵の間合いに踏み込む。
銃声が響いたかと思うと、次の瞬間には敵兵の喉元に掌底を叩き込んでいた。
「ぐぅっ!」
骨の砕ける音。倒れる兵士を盾にし、そのまま別の兵士の銃を払い落とす。
清は慌てて援護射撃を加え、玲華の死角をカバーする。
「突っ込みすぎだ! 射線に入るな!」
「大丈夫、だって当てないんでしょ?」
「信じるなそんな雑な信頼!」
清の声を無視して、玲華は拳と足で敵を薙ぎ倒していく。まるで獣のような動きだった。
⸻
だが敵も黙ってはいない。
二人の側面から回り込む影。
清は即座に反応、短く撃ち放つ。
「二人目ダウン!」
弾が尽きる。清は素早くマガジンを交換しながら視線を送ると、玲華が不敵な笑みを浮かべていた。
「銃の腕前、まだ文句ある?」
「うーん……まぁ“そこそこ”ってとこだな」
「そこそこ、ね……」
玲華の表情に薄い怒りが走る。
⸻
その瞬間、彼女は清のすぐ横を駆け抜けた。
次の敵に接近すると、腕を絡めて骨を折り、膝蹴りで昏倒させる。
玲華は素早く振り返り、目を細める。
「接近戦は私より弱いくせに」
「……ぐっ」清が言葉に詰まる。
「図星?」
「……あー、はいはい。そうですよ。俺は格闘より銃と頭脳派なんでね」
「自分で言うのね」
二人の軽口のやり取りの間にも、戦闘は続いていた。
⸻
敵兵が再び押し寄せ、弾丸が雨のように降り注ぐ。
清は壁際に滑り込み、反撃のチャンスをうかがう。
「玲華、右側を頼む!」
「了解!」
玲華が駆けていき、清はその間に正面の敵を狙撃。
弾丸が正確に眉間を撃ち抜き、兵士が崩れる。
一方の玲華は、敵の背後に回り込み、銃を撃つと同時に肘打ちを叩き込む。二人、三人と倒れていく。
「ったく……なんでお前はそんなに元気なんだ」清が息を切らす。
「鍛えてるもの」玲華があっさり答える。
「俺だって鍛えてる!」
「方向性が違うのよ。あなたは頭脳労働、私は現場仕事」
「はいはい、俺が弱いってことで満足か」
「最初から分かってるじゃない」
皮肉を交わしながらも、二人の連携は乱れなかった。
⸻
残る敵は三人。
清が牽制射撃を放ち、玲華がその隙に一気に踏み込む。
「はっ!」
玲華の踵落としが唸りを上げて敵の肩を砕き、その勢いのままもう一人に膝蹴り。最後の一人が慌てて銃を構えるが、清の弾丸が先にその銃を撃ち落とした。
「残念だったな」清が低く言う。
「終わりね」玲華が淡々と止めを刺す。
静寂が工場に戻る。倒れ伏した敵兵たちの呻き声がかすかに響き、埃と火薬の匂いが漂っていた。
清は大きく息をつき、額の汗を拭った。
「……ふぅ。やっと片付いたか」
「言ったでしょ? 接近戦は私の方が上だって」玲華が勝ち誇ったように言う。
「その自慢、あとで十分に聞かせてもらうよ」
二人は視線を交わし、小さな笑みを浮かべた。
⸻
だが安堵は一瞬だった。
中央のコンテナに視線を戻すと、赤い警告灯が点滅していた。
「……やばい、警報機が作動してるな」清が顔をしかめる。
「じゃあ急がなきゃ」玲華が応じる。
再び緊張が走る中、二人はさらに奥へと踏み込んでいった。