EPILOGUE
人類の起源はアフリカにあるという。
人類、猿人→原人→旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・ネアンデルターレンシスなど)→新人へと進化が進んだ。
人類は、二足歩行をすることで自由になった「手」で、道具を使うようになり、火を利用するようにもなった。
人類は、あかり、暖房、調理、猛獣からの防御に火を利用してきた。
「猛獣からの防御か。今はネコ科の猛獣には効果が無いかもしれないな」
赤々と燃える焚火の前で、当代のケニア王パンジャが言う。
確かに、今ではライオンも火を使う。
パンジャは狩りで得たインパラの肉を焚火で炙り、俺に御馳走してくれている。
「そうだね、今は猛獣が起こした火を調理に使う時代だものね」
そう言うと、俺は焼き立ての骨付き肉にかぶりつく。
インパラはウシ科に分類される偶蹄類、肉は牛肉に似た味がする。
ライオンと肩を並べて焚火を眺めるなんて、人類滅亡前は思ってもみなかったよ。
1万年前に初めてケニアを訪れて以来、俺は雄大な自然や夕焼けに魅せられて、頻繁に遊びに行くようになった。
俺のフォースでライオンたちを癒すこともよくある。
王家の子供たちの出産の際には呼ばれることが多く、パンジャの誕生時にも立ち会った。
生まれて間もない赤ん坊時代からパンジャと既知の中となり、一緒に原野でキャンプを楽しむことも多い。
パンジャは見た目の変わらない俺を追い越して、今では貫禄のある王様になっている。
俺とは親友だと言って「様」付けや敬語は断られ、タメ口で話す仲だ。
「そういえば、凍結卵子の複製化を断ったんだって?」
「うん」
ふと思い出したように、パンジャが訊いてくる。
ケニアに残る古代遺跡の中から、クローン技術の文献が見つかったのは最近のこと。
ケイトの卵子を複製&人工授精して子供を複数人作ってはどうかとアニーに言われたけど、俺はやっぱりやめておくよと断っている。
「同族を復活させなくてもいいのかい?」
「死んだ両親や友人知人が戻ってくるわけじゃないし」
人類の時代は終わったんだ。
俺はそれを無理に復元する気は無い。
他に人間がいなくても、寂しいとか悲しいとかいう気持ちにはならない。
「俺には、ネコ科の友人たちがいるからね」
俺は穏やかな気持ちでそう言うと、膝の上で丸くなって眠る白猫を撫でた。
───END───




