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猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第6章:秘められたもの

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第59話:ライオンの城

 ワニを倒す為にフォースを使い過ぎて気絶しちゃった仔ライオンを抱えたまま、俺は10頭のライオンたちと共に要塞のような造りの城内に入った。

 姫様を横抱きにしている、これが本当の「お姫様抱っこ」というやつか?

 抱っこしているお姫様、ライオンだけど。



 すれ違うライオンたちも、俺と一緒に歩いているライオンたちも、たてがみが無いからメスだろうか?

 二千年前のライオンは、1頭のオスと数頭のメスで群れを構成すると言われていた。

 所謂ハーレム。

 オスメス混合で暮らすマヤー王国の城を見慣れた俺には、メスばかりの城内が珍しく思える。



「よく来てくれたね。それに、皆を助けてくれてありがとう」


 穏やかな口調で話しかけてくる王様は、最も身体が大きく立派なたてがみがある、城内唯一のオスライオンだった。


 ケニアの王シンバ様。

 郵便屋のヤマトはそう言っていた。

 二千年前に俺が見たことがある動物園のライオンとは、雰囲気や眼力が全然違う。

 その身に強大なフォースを宿しているのも感じられた。

 彼はケニア全体を統べる「王」であり、他のオスライオンたちは「領主」として各地を管理しているらしい。


 シンバ様は謁見室で俺を待つのかと思いきや、回廊まで来て迎えてくれた。


「お招きありがとうございます」

「そろそろ夜が明ける。ついておいで、我が国自慢の朝焼けを見せてあげよう」


 王の風格に圧倒され気味の俺を、シンバ様は城の屋上まで自ら案内してくれるという。

 嬉しいけれど、俺は姫様を抱っこしたままなんだ。


「その前に、姫様をベッドに寝かせてあげた方がいいかもしれません」

「ベッドに寝かせるよりも、君が抱っこしている方が回復が早いだろう?」

「そ、そうですね」

「ということで、エルザもそのまま連れて行こう」

「はい」


 姫様の名前はエルザか。

 王様曰く、意識が戻るまで俺が抱っこしていればいいらしい。

 っていうか、気が付いたら知らない奴に抱っこされてるなんて、姫様驚くんじゃないか?

 ワニを倒す前に俺が手助けしたことくらいは覚えているかもしれないけど。


 石造りの螺旋階段を上へと進み、扉の無い出入口を通り抜けると、開けた場所に出る。

 そこが、この城の屋上だった。


「エルザ、そろそろ目を開けて、客人に挨拶した方がいいのではないか?」


 まだ星は見えるが明るくなり始めた空の下、シンバ様がこちらを向いて言う。

 目を細めて口角が上がっているので、どうやら笑っているようだ。

 キョトンとする俺が抱っこしている姫様に視線を向けると、そ~っと目を開けるエルザ姫と目が合った。


「……ぴゃっ?!」


 目が合って驚いた様子の姫様、なんか変わった声を出したぞ。

 いつから意識が戻っていたんだろう?


「あ、驚かせてすいません、今降ろしますね」

「だ、だめ!」

「え?」


 回復したみたいだから降ろしてあげようとしたら、しがみつかれてしまった。

 可愛いのでそのまま抱っこして挨拶しよう。


「初めまして、俺のことはタマと呼んで下さい」

「私はエルザ。タマの抱っこは凄く癒されるのね」

「俺は回復のフォースを持っているんです」

「もうちょっとだけ、抱っこしてもらえる?」

「いいですよ」


 姫様と話している間に、朝焼けが始まった。

 ケニヤの広大な大地の果て、地平線から朝日が昇る。

 まるで映画のワンシーンのような、夜明けの風景が見える。

 逆光で輝く木々、茜色に染まる空、空の色を鏡のように映す湖面、遠くに見える川も朝焼け色だ。

 言葉が出ないくらい、心が揺さぶられるのは感動というやつだろう。

 俺はエルザ姫を抱っこしたまま、その雄大で美しい風景に見惚れた。


挿絵(By みてみん)

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