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猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第6章:秘められたもの

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第52話:史上初?

 クリストファにところどころ訳してもらいつつノートを読み終えた俺とジル陛下は、書庫を出たところで巨大猫と遭遇した。

 ジル陛下もデカイけど、廊下で待っていた猫は更にデカい。

 後足だけで立つと、俺より背が高いぞ。


 っていうか、本当に猫か?!


「わあ! 本物の人間だぁ!」


 瞳孔をキュルンと真ん丸にして、感動している様子の巨大猫は、どうやらまだ若いようだ。

 フサフサの長毛だし、ジル陛下に似ているから身内かな?


「はじめまして。ぼくは第三王子のベルだよ」

「はじめまして。タマです」


 巨大猫はやはり王族らしい。

 第三王子ということは、少なくとも2人は兄弟がいるわけだ。

 兄弟もデカいんだろうか?

 そんなことを思っていたら、ベル王子がズイッと寄ってくる。


「ねえねえ、抱っこしてもいい?」

「え? いや無理です」


 なんとなく言われそうな予感はしたけどね。

 ジル陛下ならまだ抱っこできるサイズだが、俺よりデカイこの猫は抱っこできないぞ。

 俺が困惑していたら、巨大猫がハッと気付いた。


「あぁ違う違う、ぼくが君を抱っこするんだよ」

「マジっすか……」


 巨大猫の要望に、ちょっと頭がついていかない。

 これまで多くの猫たちを抱っこしてきた俺だが、猫に抱っこされたことはなかった。


「ね? おねがい」

「タマ、ベルのおねだりを聞いてやってくれないか? 私も見てみたいよ。猫が人間を抱っこするという、史上初のシーンをね」

「いいですけど、落とさないで下さいね?」

「ぼくは二足歩行もできるし、腕の力もあるから大丈夫だよ」


 と言うベル王子に、俺は抱き上げられた。

 所謂お姫様抱っこ状態だが、俺は姫ではないので、これはなんというのだろうか?

 もはや猫というより猫型獣人みたいなベル王子は、俺を抱っこしたまま二足歩行で悠々と歩いている。


 っていうか、どこまで連れて行くんだ?


「タマ、ぼくと一緒にお昼寝しよう」

「では私も一緒しよう」

「ベル、父上!」

「ぬけがけはズルイぞ!」

「わたくしも人間に触れてみたいですわ」


 ベル王子の寝室(?)まで運ばれていったところで、デカイ猫が3匹増えた。

 多分第一・第二王子と、王妃様かな?

 デカイといっても普通の猫より大きいだけで、サイズ的にはジル陛下よりもやや小柄だ。

 ということはベル王子が飛び抜けて巨大に育ったってことか。


「……というわけでタマ、みんなで一緒にお昼寝しよう」

「お昼寝は決定なんですね」

「うん。大丈夫、モリオン博士には許可をとってあるよ」


 王族が初対面の者と一緒に寝ていいのかっていうツッコミは、もう今更なんだろう。

 この世界の王族、警戒心が無さ過ぎだけど気にしなくていいのか?


「じゃあ、タマは真ん中ね」


 俺の配置は、真ん中決定らしい。

 しかも、巨大猫の腕(前肢)枕つき。

 寝室にはキングサイズの2倍くらい広そうなベッドがあり、フサフサ大柄猫の王族たちと俺が余裕で一緒に寝転がれる。

 ツヤツヤサラサラの美しい毛皮たちに囲まれて、というかベル王子の毛皮に埋もれ気味で、俺は目を閉じた。

 ノートを読んで頭を使ったからか、すぐに心地よい眠りが訪れる。

 真冬の北海道、猫に埋もれて眠るのはホカホカ暖かくて幸せかもしれない。



 挿絵(By みてみん)

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