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猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第3章:人類滅亡の真実

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第27話:研究生ケイト

 二千年ぶりに会う人間だ。

 幽霊でもいいから、話をしてみよう。


『俺の名前は玉那覇(たまなは)光一(こういち)、君の名前を聞いてもいい?』


 霊気を感じた際の鳥肌はすぐに治まり、特に恐怖を感じない俺は、トイレから出てきた女性の霊に話しかけてみた。

 女性の霊は日本人ではなさそうな象牙色の肌に青い瞳、ツヤツヤした金色の長い髪の美女だ。

 幽霊の姿って、怪談でよく聞く「死んだ時の状態」じゃないのか?

 彼女は特に怪我などしている様子は無い。


『そうそう、コーイチだったわね。冷凍睡眠装置にネームタグが付いているのを見たわ。私はケイト・セバーズ、カナダ人よ』


 女性はケイトという名前らしい。

 俺は彼女を見たことはなかったけど、ケイトはコールドスリープ中の俺を見たことがあるようだ。

 二千年前、研究チームのメンバーも他のチームの人も、俺をファーストネームで呼んでいたな。

 外国人が大半を占める学院だから、苗字(ファミリーネーム)で呼ばれることは無かった。


『あなたを最後に眠らせた研究生を覚えている?』

『10年後にまた会おうって言ってた人? 確かクリストファって名前だったっけ』

『そう。彼は私の兄よ』


 言われてみれば、ケイトの髪色と目の色はクリストファにそっくりだ。

 綺麗に整った顔立ちもなんとなく似ている。


『兄に届け物をしたときに、薬が効いて仮死状態になったコーイチを見たわ。10年後に起こすんだよって言うから、じゃあ私が目覚めのキスしてあげるねって言ったら、全力で止めてたけど』

『なんで止めるんだ……』


 どうやら、俺は知らないうちに美女とのファーストキスを逃していたようだ。


 OISTは英語が学院内共通語だけど、クリストファは日本語も堪能だった。

 だから二千年前、コールドスリープに入る前の俺のメディカルチェックを任されたと言っていた。

 俺を安心させるために日本語で会話を交わしながら、冷凍状態でも細胞が劣化しない薬品や仮死状態になる薬品を注射する役を担ったのがクリストファだ。

 欧米人ならではのスキンシップで抱き締められながら「良い目覚めを祈る」と言われたのを最後の記憶に、深い眠りに落ちていったのを覚えている。

 (目覚めは毛皮の海に落ちる夢からの窒息しかけでヤバかったけど)


『クリストファはどうした? 何故俺を起こさなかったんだ?』

『兄はあなたがコールドスリープに入った後、消滅してしまったから』

『消滅?!』


 ケイトは自分の兄を「死んだ」と言わず「消滅」と言った。

 そういえば俺を見て「みんな消滅したと思っていた」とも言っていたな。

 人間が消滅するなんて、ちょっと想像つかないぞ。


『そうか、コーイチは人類滅亡のわけを知らないのね』

『隕石が降ったのが原因らしいってことしか知らないよ』

『あれは隕石なんかじゃないわ』

『え?』


 ある日、空からたくさんの星が降り、人類は滅び去った。


 猫たちに伝承として残されている、遠い過去の災い。

 それは、隕石によるものではなかったらしい。

 俺はケイトから詳しく話を聞くことにした。



挿絵(By みてみん)

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