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猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第3章:人類滅亡の真実

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29/92

第25話:人類滅亡後の猫カフェもどき

 俺は持ち帰ったコーヒーの実から種を取り出して、育苗ポッドに蒔いてみた。

 この種が芽吹いてコーヒーノキになり、実をつけるまで数年かかる。

 コーヒーノキは寒さに弱く、基本的に気温が0 ℃を下回ると枯死し、風の強い地域では5 ℃前後の気温でも枯死してしまう。

 露地栽培が可能な地域は、年中気温が高いままで安定している赤道付近に限られる。

 俺が生活している研究所はコーヒーベルト内に入る地域にあり、コーヒーノキの露地栽培が可能だ。


「いつか自分で育てた豆を使ったコーヒーが飲みたいなぁ」

「人間は変わった飲み物を好むんだね」

「コーヒーの良さは分からないけど、タマが嬉しそうなのは良いことだね」


 俺の願望は、コーヒーが飲めない猫たちにはよく分からないようだ。

 しかし俺がコーヒーを飲んでリラックスしている様子は好ましく思えたらしい。


 コーヒー林と化していた農園跡地で採集したコーヒーの実は、栽培に使う分を取った他は種子(コーヒー豆)を取り出して焙煎(ロースト)したのを密閉容器で保存した。

 その工程はOISTに残された書籍に写真つきで載っていたので、ハチロウが全自動(フルオートマチック)でコーヒーの実から種を取り出すところから、焙煎して挽いてコーヒーを淹れるところまで出来てしまうマシンを作ってくれたよ。

 収穫した実を焙煎まで済ませて貯蔵した後、飲む分だけ挽いてコーヒーを淹れられる。

 相変わらず至れり尽くせりな仕様だ。


「ハチロウ~っ、ここに乗って」

「はいはい」


 ソファでくつろぎつつ膝を指さして呼ぶと、ハチロウは苦笑しつつ俺の膝に乗る。

 超天才猫を膝に乗せつつ飲むコーヒーは格別だ。


「あ! ズルイ! ボクも乗る~っ!」


 今日も遊びに来たミカエルが走ってきて、ピョーンと膝に乗った。

 可愛いが詰まってる仔猫が追加されると、幸福感大UPだ。


「タマ、この書物を解読してくれるかい?」

「OK」


 遺跡から文書や書物が見つかると、モリオン博士はまず俺に見せるのが常となっている。

 ゆっくりと空中を飛んできた本を手に取り、読み始める俺。

 その膝に、モリオン博士も乗ってきた。


「古代の人間たちの中には、猫を膝に乗せてコーヒーを飲む【猫カフェ】を好む人が多かったそうだね」

「猫カフェは個人の趣向ではなく、店舗のことだよ。お店の中にたくさん猫がいて、人間がお店に行って猫たちと触れ合うのを楽しむ店を猫カフェと呼んでいたんだ」


 今の俺の生活は、猫カフェより猫たちとの関係が親密になっている。

 人類は滅びちゃったけど、俺はちっとも寂しくなかった。

 それは多分、猫たちがいるから。

 話し相手がいるからだと思う。



 挿絵(By みてみん)

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