表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第2章:猫文明とフォース
17/57

第14話:北国のボス

 イナリは翌週も魚を差し入れてくれた。

 秋の味覚、秋刀魚だ。

 北国で獲れたやつで、丸々太った美味そうな秋刀魚。

 魚は新鮮なうちに食えということで、研究所の中庭で秋刀魚パーティが始まった。

 新鮮な秋刀魚は刺身で食えるって初めて知ったよ。

 南国で生まれ育った俺にはあまり食べたことのない魚だけど、刺身が美味かった。

 それ以上に、炭火で焼いたら最高に美味い!

 皮がパリパリに焼けた秋刀魚を、俺だけ熱いうちにポン酢醤油をちょっとかけて食べた。

 猫たちは先に刺身を食べ終えて、冷めた頃に焼いたのを食べている。


「イナリ、君の病気を調べた時に『FIVは喧嘩の噛み傷から感染する』って出てたけど、誰に噛まれたの?」

「えっ?」


 秋刀魚を食べ終えた俺はふと気になり、イナリに聞いてみた。

 ウイルスを消去する前に見た情報が気になったから。

 イナリはギクッとしたようにシッポを膨らませた。


 高度な文明を築くほどの知性を持っても、猫たちは動揺するとシッポが膨らむのは変わらないようだ。

 そんな正直(?)な猫たちが、好ましく面白くもある。


「空気感染じゃなく体液の接触で感染するウイルスらしいから。イナリの喧嘩相手がFIV感染猫だったんだろうなって思うんだけど」

「恩人に隠し事をするわけにはいかないな」


 観念したように、イナリはFIVに感染した経緯を話してくれた。


「俺は毎年秋になると鮭を獲りに北国へ行くんだが、2~3年前の秋に鮭を捕まえるのにちょうどいいポイントに陣取っていたら、知らない(ヤツ)にいきなり襲われたんだ」

「その時に噛まれた?」

「ああ。いきなり後ろからガブリとな。で、抵抗してそいつに噛みつき返して、蹴りを入れて、どうにか逃げた。後で聞いたら、その辺りを仕切っている猫で、ナワバリに入るオスはみんな爪か牙の洗礼を受けるらしい」

「随分と荒々しい猫だなぁ」

「その辺りでは有名らしくて、【チンピラのチンさん】って呼ばれていると聞いた」

「チンピラのチンさん……」


 ……ネーミングがなんともいえぬセンスだが、とりあえず危ない猫なのは分かった。


「で、そのチンさんが、去年から体調を崩して激ヤセして、すっかり覇気がなくなっちまって、襲ってこなくなったから鮭獲り放題になったのはいいんだが……」

「体調不良の原因が、ウイルスによるものだった、と?」

「そういうことだ。噛まれた(ヤツ)が慢性的な口内炎になって、おかしいと思って検査したら感染が分かったらしい」

「チンさんは?」

「子分たちが『医者に診てもらった方がいいんじゃないッスか?』って言ったらしいが、『これはそこらの医者では治せん』と言って姿を消しちまったそうだ。その後は誰も姿を見ていない」

「FIVは治療薬もワクチンも無いからね」


 ハチロウが現在の医療状況を教えてくれた。

 医薬品で消せないウイルスは、浄化のフォースで消すしかない。

 しかし浄化のフォース持ちは滅多に生まれてこないという。


「タマ、北国の村に口内炎で苦しんでる連中がいるんだが、治してあげられないか?」

「俺はここで保護されている身だから、外出にはモリオン博士の許可がいるよ」

「よし、じゃあ博士にお願いしてみる」


 イナリは俺の北国行きの許可をもらいに、モリオン博士に話しかけている。

 博士の表情から、了承は得られそうな感じだ。


 北国ってどんなところなんだろう?



 挿絵(By みてみん)


 ↑チンピラのチンさん、モデルはこちら!


 毎日喧嘩ばかり、オス猫のみ攻撃していたボス猫。

 いつも返り血を浴びており、迫力あるオーラを放つ猫でした。

 後に激ヤセ、FIVキャリアと分かり、やがてどこかへ姿を消してしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ