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猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました~  作者: BIRD
第2章:猫文明とフォース
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第12話:トマトと鮭

 家庭菜園を始めてから1ヶ月が経つ頃。


「……早くない?」


 ベランダで真っ赤な実をつけているトマトを見て、俺は呟いた。

 何故かって?

 種が入っていた袋には「種まきから収穫まで約4ヶ月」って書いてあるんだよ。

 なのに4週間くらいで収穫期を迎えてしまった。


「もしかしたらタマのフォースが影響しているのかも」

「つまり、俺のフォースは治癒以外にも何かあるってこと?」

「うん。治癒系のフォースは生命に影響を与えるものだから、植物の生育を早めるのかもしれない」

「なるほど」


 すっかり園芸仲間と化したハチロウと話しながら、俺は美味しそうに熟したトマトの収穫を始めた。

 園芸鋏は種やプランターを見つけた研究ユニットにあった物。

 二千年も経つのに全く錆びていない。

 長期保存の技術はこのハサミにも使われているらしい。

 パチンという音と共に枝から切り離された果実は完熟していて、ツヤツヤ赤くて美味そうだ。


「そういえば、猫ってトマトを味見しても大丈夫か?」

「赤く熟したトマトの果実を食べることには問題ないよ。未熟な果実はトマチンという成分があって危険だけど」

「トマチンってどんな成分?」

「虫を寄せ付けない自衛のための成分だね。赤く熟す前の青い果実にはそれが含まれているよ」


 詳しい植物情報を教えてくれるハチロウは、食べ物を調べるフォースに長けた猫だった。

 食べられるか否かを調べるフォースは猫たち全員が持っているそうだけど、その中でも特にハチロウが優れているのかもしれない。


 ハチロウに手伝ってもらって完熟した実だけを収穫し終える頃。

 誰かが部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


 って言ったんだけど、入ってこない。

 誰だろう? と思ってスライド式の扉を開けたら、なんかデカイ魚が扉の前に置いてある。


「えっ? 魚?」 

「なんでこんなとこに……」


 俺もハチロウも、しばしポカンとしてしまった。

 魚は獲れたて新鮮で、水から出されてそんなに時間が経ってないのか体が濡れている。

 二千年前の俺は釣りなんて子供の頃にオヤジと少しやったくらいで、魚にはあまり詳しくない。


「これ、何ていう魚だろう?」

「試しにフォースで調べてみるといいよ。タマもフォースがあるなら食べ物を調べられるかもしれない」

「どうやるの?」

「調べたい物を見ながら、どんな成分かな? 食べられるかな? って考えてみるといいよ」


 ハチロウに教えられて、俺は初めてフォースを使って魚を調べた。



 サケ(北海道産)

 サケ目サケ科サケ属の魚。

 ビタミン類やアスタキサンチン、DHAやEPAなどの栄養素が豊富に含まれている。

 食べることで期待できる健康効果の一つに、免疫力の向上がある。

 摂取できる代表的なビタミン類は、ビタミンB群やビタミンA、C、D、Eなど。

 野生のサケにはアニキサスなどの寄生虫がいることが多いので生食を避け、加熱か冷凍を推奨する。



「えっ? 鮭?! こんなのここらじゃ獲れないよね?」

「誰かが魚屋さんから買ったのかな?」


 俺が見慣れない魚なのも当然だ。

 鮭なんて二千年前は切り身かサケフレークしか見たことなかったぞ。

 こんな丸ごと1匹を見たのは初めてだよ。


「って魚屋さん、どこまで魚獲りにに行ってるの?!」

「魚屋さんは美味しい魚を求めてあちこち旅しているよ」


 ……旅する魚屋……。


 それ、もはや遠洋漁業じゃないか?



挿絵(By みてみん)


↑鮭が遡上するペレケ川(北海道)

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