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PROLOGUE

 その日、俺は毛皮の海に落ちる夢を見た。


 モフモフの毛皮がいっぱい。

 冬はいいけど、夏は暑苦しいな。


 っていうか……


 顔までスッポリ毛皮に埋もれるのはダメだ!


 息ができなくて苦しいので、俺はとっさに顔の辺りの毛皮を掴んだ。


「ニャッ?!」


 声がした。


 よく聞く動物の声だ。


 俺はそのまま毛皮を顔から引き離した。


「もう、いきなり掴むなんて乱暴だなぁ」


 そんな声がする。

 掴んでいる毛皮の方から。


「おお、目覚めたみたいだぞ」

「うんうん、心臓もちゃんと動いているな」


 別の声が、胸の辺りから聞こえる。

 そこには丸っこいモフモフが乗っていた。


 目を開けて見ると、横たわる俺の体の上で、モフモフまつりが開催されていた。

 ざっと数えただけで20匹、色とりどりの猫が乗っている。


「ね……猫?!」

「ふむふむ、言葉も通じるようだ」


 しかも、喋った!


 他の猫を踏み越えて(迂回しないのか)、1匹の黒猫が俺の顔の方へ歩いてきた。


「はじめまして。私の名はモリオン、考古学者だ。君の名前を教えてもらえるかい?」

「え? あ、俺の名前は玉那覇(たまなは)光一(こういち)です」


 なんで俺は猫相手に敬語になりかけてるんだ。

 喋る黒猫はモリオンというらしい。

 っていうか、考古学者?!


「たま…なは…人間の名前は長いな、タマと呼ばせてもらうよ」

「よろしくね、タマ!」


 まさか猫たちからタマと呼ばれる日がこようとは。

 微妙な顔になる俺に構わず、猫たちはニコニコしながら言う。


「人間に会うのは初めてだよ。もちろんこうして触れ合うのも初めてだ」

「我々の祖先は人間の膝の上に乗るのが大好きだったそうだよ」


 どうやら飼い猫(?)の子孫たちのようだ。

 人間に会うのが初めてなんて、一体ここはどこなんだ?


「あの~、ここはどこですか? もしかして俺、異世界転移しちゃったとか?」


 喋る猫がいるんだから、ここは異世界なんだろう。

 そう思ったので、聞いてみた。


「ここは地球だよ。といっても、君が眠りについた時から随分経つけどね」

「えっ?!」


 しかし、モリオン博士から返ってきた答えは異世界じゃなかった。

 地球?! ここが?!


「人類は遥か昔に絶滅したと言われている。生きている人間を見るのは君が初めてだよ」

「人類が……絶滅?!」

「そう。おそらく今この世に生きている人間は君だけだろうね」

「人間に一体なにが……?」


 どうしてそうなった?

 呆然とする俺に、モリオン博士は穏やかな口調で話す。


「コールドスリープに入ったのはいつか、覚えているかい?」


 モリオン博士に聞かれて、俺は眠りにつく前のことを思い出した。



挿絵(By みてみん)



【PROLOGUE裏話】

冒頭シーンは作者の友人の経験が元ネタです。


友人談

「毛皮の海で溺れる夢を見て、ハッと目が覚めたら顔の上に飼い猫(4kg)が乗っていた」


猫飼ってる人、寝るときは仰向けじゃなく横向きがいいかもしれません(笑)

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