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宮本武蔵★剣劇鳴鵙図  作者: akiyasu
3/15

第三話 但馬国の秋山剛力 

「久野次左衛門の首、討ち取った!」


 前線に大音声だいおんじょうが響く。見ると、山のような巨漢の兵が左手で、天高く次左衛門の首を掲げていた。


「我は、秋山剛力なり!」


 と、名乗る兵の右手には、血で汚れた長大な大太刀が握られている。


 敵の大友軍の陣営から、


「うおおおーっ!」


 歓声が沸き上がり、一気に士気が高まったようだ。


 対して、こちらの陣は弱気になる。無理もないだろう。勇猛果敢な久野次左衛門が討ち取られたのだ。


「あの秋山剛力とは、何者なのだ?」

「但馬国では、高名な武芸者らしい」


 黒田軍の兵が逃げ腰になり、口々にヒソヒソと話していた。このままでは士気が下がり、少数の敵に撃ち破られてしまう。だが、その時、


 ババッ。


 一騎の騎馬武者が駆け抜けた。その武将は秋山剛力の前にでると、騎乗から名乗りを挙げる。


「曾我部五右衛門と申す。一騎打ちを所望!」

「受けて立とう。相手にとって、不足なし!」


 徒歩かちの秋山剛力と、騎馬武者の曾我部五右衛門は一対一で対峙した。そして、


 ザッ、


 槍の一閃。先制の一撃を放ったのは五右衛門だが、その矛先を、


 カキン。


 剛力は大太刀で跳ね上げ、次の瞬間。


 ザシュン。


 一振りで鎧ごと五右衛門を両断する。恐ろしいまでの剛の剣だ。騎馬から、ずり落ちる五右衛門。


「うおおおーっ!」


 再び、敵陣から大歓声があがった。


「秋山殿に続け!」


 勢いを得た大友軍が、多勢の黒田軍に襲いかかる。数では圧倒的に不利な大友軍だが、


「行けええぇーっ」


 勢いに乗じて、一気呵成に攻め込んできた。


 戦いは数だけでは決まらない。勢いという魔物が、味方した側が勝つのだ。その時、


せがれよ、秋山剛力を討て」


 父、新免無二斎が、俺に命じる。


「おう!」


 と、俺は槍を突き出し、敵陣の中へと駆け出す。乱戦の中で剛力を探し、見つけると、俺は槍を投げつけた。


 ヒュウゥゥーン。


 槍は勢いよく飛んだが、剛力は、


 ササッ、


 と、身を翻してアッサリと避ける。


「離れて槍を投げるとはな、卑怯な小僧だ」


 剛力は嘲るように笑ったが、俺は助走をつけて地面を一回転、転がりながら、大きな石を掴んで投げつけた。


 ガゴン!


 剛力の頭部を直撃する石。不意の投石に意表を突かれたのだろう。


「いっ、痛たたぁ」


 よろける剛力。頭が割れのか、額から血が流れていた。そのまま俺は、巨漢の剛力に飛びかかり、組み付く。


「この、小童が」


 剛力は、やや体勢を崩し、この機を逃さず俺は、足を払って投げ技を出した。


「ぐあっ、小僧が」


 地面に転がる剛力を、俺は必死に押さえ込み、短刀で首筋を掻っ切った。


 ブシャアアァァァッ。


 噴き上がる鮮血。


「ぐっ、ぐがあぁっ」


 断末魔をあげた秋山剛力は、大量の血を流して絶命したようだ。


「秋山剛力、討ち取ったり!」


 俺は叫んだ。この雄叫びで、敵陣には動揺が走る。


 ここで東軍・黒田如水の軍勢は総攻撃にでた。こうなれば多勢に無勢である。


 事後、大友軍は総崩れとなり、敗走した大友義統は自刃を決意したが、家臣に説得されて降伏したらしい。


 これと時を同じくして、本州の関ヶ原でも、東軍の徳川家康が西軍の石田三成に勝利していたという。

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