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第1章「7つの種族と世界の覇権をめぐる謎、太古のスタートライン」

 人類の歴史を考えるにあたってはまず、現在地球に暮らす7種類の人類種それぞれの進化の歴史から考え直す必要があるだろう。最新の遺伝生物学においては、7種類の人類種は3種類の別々の種の生物から進化したとされる説が一般的である。


 まず、600万年前にアフリカを脱出したホモエレクトスを起源とする人類種である。ホモエレクトス以前はゴリラやチンパンジーの近縁種であり、この種の人類はアフリカ、ヨーロッパ、シベリア、アジア、オセアニアでそれぞれ別々の進化の道を歩んだ。


 ヨーロッパで発展した彼らはクロマニヨン人が中心だ。同地で生まれた宗教観に伴って唯一の純正人類種であるとされ。それ以外を亜人として見る学説が近年まで根強く信じられていた。

 しかし、この説は優生学的、差別的であるとされ、近年では彼らをヒューリン種と呼称するべきだとポリティカル・コレクトネスを叫ぶ人々によって主張されている。この主張を迎合するわけではないが、本書においては以後彼らをヒューリン種と呼び、人類と呼称した場合は7種の人類種すべてを示すものとして扱う。


 アジアではドワーフ種と呼ばれる低身長、筋肉質の種が発展した。彼らの骨格はネアンデルタール人と呼ばれる古代人に近く、原始世界でクロマニヨン人とネアンデルタール人の間に種族間対立があり、それが彼らをヨーロッパとアジアに分けたとする学説が現在は主流である。

 また、ドワーフ種がアフリカにも広がっていることは中東の肥沃三日月地帯中心に繰り広げられたクロマニヨン人とネアンデルタール人の争いがネアンデルタール人の勝利に終わったことの証左でもある。


 シベリアに広がるのはオーク種である。ドワーフ種に近い骨格を持ちながら、ドワーフ種に比べて一回り大きく、比較的肥満気味になりやすい傾向がある。

 これは、寒冷地ほど生物が巨大化するというベルクマンの法則によって説明できる。現代のオーク種が肥満体質になりやすいことも、食料の少ない環境でより効率的にエネルギーを急襲に脂肪として蓄える進化が行われたことで説明ができるだろう。


 オセアニアの分布は話が多少ややこしくなる。この地域では後述するマーマン種と、ホモエレクトス起源であるエルフ種が島単位で別々の文化を築いたためである。DNA解析の結果、エルフ種がクロマニヨン人の子孫であることは間違いないとされているのだが、一部ではマーマン種との混血が存在している。

 古くはその混血種をダークエルフと呼び、粗暴で邪悪な種であるとする説が信じられ疎まれていた。しかし、オセアニア地域が島単位でエルフ種とマーマン種による縄張り分けがなされ殺戮を伴う大規模な争いが発生しなかった背景には、ダークエルフ種がこの両種の種族間友情の架け橋となったからだと考える説が今では一般的だ。ダークエルフの黒い肌こそ世界平和の象徴というポジティブな考え方が広く認められていることは現代人として歓迎すべき考え方かもしれない。

 ただ、エルフ種とマーマン種の分布の差は大陸移動の結果と彼らの早いもの勝ち的な縄張り意識、そして、両種どちらも自然と共生してきた故に帝国主義的思考が生まれる土壌が育たなかっただけであるという説が学術的には強い賛同を集めている。


 この流れで2つ目の系統にあたるマーマン種に移ろう。マーマン種の誕生地は諸説あり、太平洋起源説とインド洋起源説の間で未だに激しい論争が繰り広げられている。ただし、その進化が肺魚から続いたとされる説に関しては共通見解として認識されている。

 18世紀のアメリカで名を馳せた小説家、H・P・ラブクラフトは彼らの起源が南極であり、そこでは外宇宙からやってきた旧支配者の血脈が続いているという説を発表したが、今彼が生物学者ではなく小説家として扱われていることからその信憑性は推して知るべしだろう。


 続いてマヤアステカ及びアメリカ原住民である神の民、ダイノサウロイドを語ろう。彼らはまさに事実は小説より奇なりを体現する存在であり、ラブクラフトが奇抜な説を主張しはじめた理由でもある。DNA解析により彼らの起源が恐竜、すなわち現在の鳥類であることは事実なのだが、そこには明らかな人為的な遺伝子調整の痕跡が見て取れる。

 彼らに遺伝子調整を行った存在こそ、彼らが神として仰ぐ存在、すなわちエイリアンであり、その存在はマヤアステカに残る遺跡から確認できる。このエイリアンはシュメール神話におけるアヌンナキと同一存在であり、金の採掘のため地球に訪れていたが、金鉱山の枯渇に伴い地球から去っていった。これはインカ帝国の黄金郷伝説エルドラドや、近年発見されたパイティティ遺跡から事実であることが確認できる。

 ダイノサウロイドに遺伝子調整の跡があるのに、シュメールのヒューリンにそれが見られないことは、彼らが恐竜に対して特別な感情を持っていたためとされる。ユカタン半島に落下し恐竜絶滅の契機となった隕石は彼らによる事故で、その罪滅ぼしの遺伝子改造だったのではないかとする説がその補強としてよく使われる。しかし、マヤアステカ文明が文字を持たず、魔皇リーエマによる同地の征伐の際に当時の記録のほとんどが失われたこともあって、彼らが去った今その説を確かめる術は残されていない。


 そして最後が、本書の主役であり、現在世界の覇権を主張している魔皇リーエマに率いられている魔族である。日本という小さな島国を起源に持つ彼らからは、驚くべきことにこれまで紹介した3系統の人類の混血であることがDNA解析によって判明している。

 その結果、魔族が3系統の良いところだけを取り込んだ人類種進化の決定版とも言える存在であったことが魔皇リーエマと魔族支配に繋がったとする説は今も長く信じられ続けている。


 だが、現代の動物にも見られるように混血とはそんな良い話ばかりでもない。魔族は同時に3系統の弱点も引き継いでおり、特に医学の発展した現代においては魔族の寿命の短さがその種としての脆弱性を証明してしまっている。

 特に、オリンピック金メダリストの少なさや現在の国別魔力量測定により覇権国であるはずの日本が平均以下の記録しか残せていない事実は、魔皇リーエマの絶対神とする魔族内の優生学派閥によって長く無視され続けていた。このことから魔皇リーエマの覇権と魔族の生物学的優位性を結びつけることは、不可能である。

 逆に魔族が種として劣ることで彼らの民族共同体意識を強くさせ、カリスマ的指導者である不老不死の魔皇リーエマによって反骨心と共に大きなモチベーションを生んだとする逆境仮説も存在するが、これを信じるには他の種に対して魔族の種の脆弱性はあまりに差がない。


 これは他の6種族を主体的に見た時も同様であり、すなわち、現在地球上に存在する7つの人類種の種族的優位性の差は、多くの人々が抱いているイメージに反してまったくと言っていいほど、無い。すなわち、現代に至るまでの覇権争いの勝敗に種の能力差は大きな要因にはなっていないということになる。


 そうなった時気になるのは、アフリカに住むドワーフ種と、オセアニア特にニューギニア原住民であるエルフ種、そして、エイリアンの寵愛を受けた神の民、ダイノサウロイド種であろう。


 アフリカドワーフは前述の通り、ネアンデルタール人がクロマニヨン人に勝利した結果であり、人類史で最初に覇権を主張した存在である。また、ユーラシアとオセアニアに広がる3種類の人類種がアフリカを起源とする以上、彼らは最も長い時代を過ごした種であることに等しい。

 特に古代世界における中東の肥沃三日月地帯の文化的発展は目覚ましく、アフリカドワーフ種が中世にヒューリンから奴隷化されてしまうほどまで文化的発展から取り残された理由は、アレクサンダー大王による東方遠征の大勝利だけでは納得ができないし、そもそもこの大勝利がもたらされてしまうに至る発展性の低さの理由もわからない。


 一方、ニューギニアのエルフ種は古代において最も科学が進んだ種族だった。何故なら彼らは、マーマン種のような遠泳能力がないというのに、ニューギニア及びオーストラリアへの上陸を成功させているからだ。これは彼らが、人類種ではじめて船を発明した事実の根拠である。にもかかわらず、悪名高い17世紀の魔皇リーエマによるエルフの森焼きに至るまで、彼らは8000年以上の間まったくといってその科学技術を発展させることがなかった。それは、何故だろうか?


 ダイノサウロイド種に至っては、古代に恒星間航行技術を有していたエイリアンの超科学を身近で見ることができていたという圧倒的なアドバテージが存在している。そのほとんどはエイリアンの退去に伴って失われたが、少なくとも16世紀の魔皇リーエマと右将軍ダークピサロと左将軍ダークコルテスによるマヤアステカ征服の際にはその最後の反重力宇宙船が兵器として現存していた記録が残されている。しかし、彼らはそれを修理することができなかったし、エイリアンの超科学のほとんどを解析し自分達のものにすることもできなかった。それは、何故だろうか?


 もしも何も知らない現代の人類学者がタイムマシンを使って1万年前以前の地球を訪れたとしたら、種族間争いに勝利したばかりのアフリカドワーフ種と、最先端の科学技術を持つエルフ種と、エイリアンの超科学を間近で見ているダイノサウロイド種のどれかが最終的に地球の覇権を勝ち取ることになるだろうと予測するはずだ。ヨーロッパに敗走したヒューリン種に賭ける学者は指をさして笑われることだろう。

 まして今から1900年前、奇跡の復活を遂げたヒューリン種でアレクサンダー大王に率いられた古代ギリシャが人口5000万人を超える帝国主義的拡大を見せる中、ようやく日本で産声をあげ当時わずか180万の人口しか持たなかった後進国家である邪魔台国を支配した魔皇リーエマ率いる魔族こそ未来の覇権だと全財産を賭ける学者は破滅願望を疑われただろう。

 だが、結果的に人類の覇権を主張するのは知っての通り、中世まではユーラシアのヒューリンであり、最終的には日本の魔族となった。第二章以降では、改めてその理由を探求していこう。

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