表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/24

幕間3「りんご飴と綿あめの二択? 当然両方ね!」

「はー、温泉ってそんな意味があったのね。さすが金柑ハゲ、やるわねぇ」


 かつて首都機能を京都から江戸へと一時的な転居を行うことになった時、自分に協力してくれた謎の僧侶南光坊天海。魔皇リーエマは何故か彼を金柑ハゲと呼ぶが、その理由は不明である。


「それにしてもあのクソデカ蛇。今もキモいし大嫌いだけど、確かに言われてみるとあいつが私達に協力してくれた意味って大きいわね。ゴミを分けてやってるだけで働いてくれるんだから底知らずのバカだとずっと思ってたんだけど……ケイ素? ってのが欲しかったのね。まぁ米のもみ殻って軽いから多分軽素なのね。そういうのが好きなら今度わたあめでも差し入れてあげようかしら。ふふっ、きっと喜ぶわ」


 軽いのはこいつの脳みそだろう。ダチョウとなら良い勝負になるかもしれない。


「でも火山の多さって確か地震の多さと関係があるのよね。なんかずっとデスリーストのやつが南海トラフ南海トラフって言ってるし。北日本もそうだったけど、ちょっと前の阪神淡路や関東もマジやばかったからなぁ。特に関東の時は私ここに居て流石にこの世の終わりを覚悟したし……あのクソデカ蛇もそのくらいなんとかして欲しいわね。いや、もしかしてこれってあのクソデカ蛇の寝相が悪いせいじゃ……?」


 確かに、今の日本の強さは世界の10%の火山をその国土に含むが故だが、それは同時に日本を世界的な地震大国にしてしまうという弊害ももたらしている。

 さらに言えば日本は台風の通り道でもあり、伊勢湾台風の際の致命的な被害も少なくとも魔皇リーエマの記憶には新しい。それに伴い世界的にも急流河川が多い日本は、豊富な水資源の豊富さと同時に治水工事に追われる歴史を辿ってきた。

 だが、火山や河川に功罪両面があるように、台風もまた同じである。むしろ、もしも日本が毎年台風が通らない場所にあったなら、今に至る繁栄は存在しないと断言できる。難しい話だ。


「しかし、そうねぇ。なんか久しぶりに温泉に行きたくなったわね。箱根もいいし、那須もいいわね。ふふっ。奴隷に背中を流してもらって、湯上がりのコーヒー牛乳を一気飲みして、その後で奴隷といっしょに卓球を遊ぶの、いいわよねぇ。あなたもそう思うでしょ?」


 リーエマは誰も居ない一人の部屋でそう言って振り返った。彼女は確かに認知症を疑いたくなるほど独り言の多いへっぽこだが、少なくともこの時の彼女にはそのはっと気付いて表情が暗くなるところを含めて多少の同情を感じるかもしれない。


「……そう、だったわね。あの奴隷は……もう、いないんだったわ」


 7000年以上の月日をともに生き、振り返ればいつもそこに居た奴隷、近藤玲司。彼が彼女の前から消えたのは、ついこないだ。ほんの80年前のことである。魔皇リーエマはまだ奴隷の居ない日常に、慣れることができないでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ