1/9
プロローグ
私、ノルベルト・スビアーナ伯爵が貴族学校の講堂に来たのは二十年ぶりだ。前回は自分の卒業パーティーで、今回は娘のシルヴィアの卒業パーティーで。
四年前に妻に先立たれてから、再婚せずに一人で育てた娘の卒業式。普通なら感動で胸が一杯になるはずだが、私の胸は緊張と不安で一杯だった。
卒業パーティーに出席する保護者は例年はそんなに多くない。大人の貴族はそれなりに忙しいからだ。だが今年は保護者の八割が出席している。事情があって所領から離れられない者以外はほぼ全員が出席している。今年だけ出席者が多いのにはもちろん理由がある。国王夫妻が出席するからだ。第三王子のガリレオ殿下は今年の卒業生であり、国王夫妻はその保護者として出席している。
そのガリレオ殿下は壇上で盛大なやらかしの真っ最中だ。
「シルヴィア・スビアーナ、おまえとの婚約を破棄する!」