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文学

作者: 緋西 皐

 広き大地に雷は予想もできず、降り注ぐものであった。深き森林を焼き尽くしそうであったり、海に敢え無く離散したり、草原の鹿のすぐ隣を掠ることも、寂れ廃れた地ならば天使に見えたか、いやはや、その後は悪魔と罵るものでしょう。

 ある人が言いました。「雷は神様の天罰である」と、また別の人は言いました。「雷は地を這いずる堕天使の所業」だと。また別の人は「万能なドラッグ」だとも、また別は「神の祝福」だと。

 ようように雷は角ばっているというのに解釈のほどはえらくよれているようです。けれども愚かな人々はその疑念を確証だと錯覚しているようであります。そこに雷があるのはたしかなのに、どうしても頭になるとうまくいかないのは、異国間の伝言ゲームの真似事だろうか。


 ある土地では雷を「憎むべき対象」あるいは「未来の天命」とでもいうのでしょうか。いやはや、その幼稚な思考はまさしく地を這う悪魔のごとく伝染して、人々を犯していきました。

 しかしながらこういった原因は雷にあるわけでなく、また土地にあるわけでもなく、土地を縛る獣にあるように覚えられる。それもまた土地というならば、それもそうだろう。元より雷の落ちる場所を定めてしまえば、土地が雷を操ったように、土地は残酷なまでに雷を信仰し、けれども実のところは雷など見ていないのでしょう。

 そこに落ちる雷の悲鳴は大地に強く嘆くようで、無理やり曲げられたようで、また重い鎧をつけられて身動きが取れないようでもある。


 雷はそこにあるだけだというにどうして人々はそう熱くなるのだろうか。甚だ疑問であるが、愚かな人々程とち狂っていくのは、雷次第も笑っているだろうか、窮屈なものである。ともあれば雷もたまには晴れた空に落ちてみたいと願うものでしょう。

 けれどもそうして落ちた雷が土地を歪ませてしまうこともあるでしょう。ゆえに扱い難い雷はどこからも理解されないだろうか。


 私はそういった雷を見て今日は「また降ってきたな」と心湧きたつところ、感激するところでありますが、少しばかりは避雷針と勘違いされていると悩むこともあります。それは私が死体になっても雷はぶつかってくるせいである。

 これもさほど土地にとって愚かであるが、私はやはり初めて雷にぶつかった時の刺激を信じていたいと願うあまり、そう若くはなれないようだ。

 

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