魔法の練習
ようこそお越しくださいました。ゆ²の初投稿になります。どうか少年少女の命の物語が、貴方に届きますように。
どんな世界でも、苦しみも悲しみも、喜びも楽しみも、大して変わりはないのでしょう。何故と聞かれても、失って初めて気がつくなんて、よくある話ではないですか。
ええ。地獄があるのなら、この世界よりはきっとマシなものでしょう。生き地獄という言葉があるように、生きていることほど苦しいものはございません。でも、この世界ほど美しい場所もございません。この世はまさに天国です。
言っていることが矛盾している?えぇ、それでこそ常世です。天国と地獄が交錯するこの場所こそ、現世と呼ぶに相応しいと思いませんか?そうそう、忘れるところでした。少女から、今を生きるあなたへ、と伝言を預かっていたのです。
「先行き不透明なこの時代に、何かに縋ってなくちゃ生きていけないように、何かの所為にしなくては安心できないのです。それでも生きているあなたは、本当に凄いと思いますよ。」
では、この世界をお楽しみください。
ある麗らかな春の日、教会の裏庭に妙年のシスターと幼い少女が立っていた。少女の前には樽が置かれていて、緊張した面持ちでそれを見つめている。
「さぁ、集中して。ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫。魔法の1番の原動力は」
「想像力」
少女は、分かっている、と得意げに答えた。シスターが優しく笑う。
「ふふ、そう。さあ、あの樽を狙って。イメージするの。あの樽が燃えるところを。」
「・・・大丈夫」
「よし、じゃあ行くわよ?3、2、1」
途端、ボッと樽が燃え上がる。パチパチと木の爆ぜる音が聞こえる。少女はそれに喜色を浮かべ、シスターへ向き直る。
「やった!できたよ!」
「えぇ、さすがフロース。よく出来ました。」
シスターがそう言って、フロースと呼ばれた少女の頭を撫でる。フロースも気持ちよさそうにそれを受け入れた。孤独な狼も欠伸をするような、穏やかな春の日和だった。シスターも少女もこんな日が続くのだろうと、信じて疑わなかった。
初投稿、いかがでしたでしょうか?…と言っても、短い上にまだ始まったばかりですが。これから楽しんでいただけたら幸いです。