元貴族の少年、冒険者登録をする(冒険者ボック、受付レナ初登場)
貴族の家族から追放され、ひとり街へと向かうクリス。
道中、魔物の群れと遭遇したが、何とか勝利。
その後、出会った女商人フィラと意気投合し、
街まで彼女の馬で一緒に行くことに・・・。
頂いたアイデアを使わせていただいての更新です。
ありがとうございました!
「や~、無事到着っスね」
女商人フィラは、馬上で緊張が解けたように言った。
彼女とその馬のおかげで、日暮れ前に街へと着いた、クリス。
「うん、助かったよフィラ」
「いや~、お互い様っスよ。
護衛お疲れ様でした、クリス君」
そのまま問題なく検問も通過。
通関料は少々高かったが・・・。
約ひと月ぶりの街。
地面がしっかりと整備され、
建物も全体的に清潔感がある。
街ゆく人たちの顔も明るく見えるし、
日暮れ近くにもかかわらず、大通りには活気ある店が切磋琢磨するように並んでいる。
街全体が明るい雰囲気に包まれているようで、
そこにいるだけで気持ちが前向きになれる・・・。
そんな感覚をクリスは味わった。
「さて、ウチはこれから商人ギルドに向かうつもりっスけど、
クリス君はどうするっスか?」
「冒険者ギルドに行こうと思う。
無事に登録できるといいけど・・・」
「あはは、大丈夫っすよ、クリス君なら多分」
「多分・・・ね」
「だってウチ、商人っスから。
冒険者ギルドは専門外っスよ」
そう言って、首から紐でぶら下げたプレートを見せるフィラ。
全国に支部を持つ、商人ギルドに登録している商人という証である。
「ま、家なしのクリス君が生活するには、冒険者ギルドに登録するのが一番っスね。
登録証があれば、身分証明にもなるっスから」
そんな歯に衣着せぬフィラの物言いに、クリスは苦笑した。
だが、気持ちは軽くなった。
「ありがとう、フィラ。
・・・また会えるよね?」
「ええ、しばらくはこの街で露店でも開くつもりっス。
きっとすぐに有名になるから、探しやすいっスよ」
どこまでも前向きなフィラ。
たった半日の関係だが、
クリスはこの二つ上の女商人に友情を覚えていた。
そのまま二人は笑顔で別れた。
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冒険者ギルドは大通りの先、
噴水のある広場に面して存在していた。
見た目は三階建ての、木製建築だ。
入り口の自由扉を開いて、クリスはギルドの中に入った。
日暮れという時間帯のせいか、中にいる冒険者は少ない。
鎧のヒゲ、ローブの厚化粧、長い槍を持ったモヒカン頭等々・・・と、
目視で数えられる程度だ。
皆、クリスより一回りは年上だ。
とりあえず、受付の女性に声をかける。
「すみません、冒険者登録はこちらでお願いできますか?」
「はい、承っております。
まずは、こちらの書類に必要事項を・・・」
そう言って、カウンターに記入用紙とペンが置かれる。
名前、年齢、出身、職歴、スキル等々・・・、
書ける所は全て正直に書いて、クリスは用紙を提出した。
「はい、確認します。
クリスさん、13歳。
出身は・・・、割と近いのですね。
職歴は特になし・・・と」
一つ一つ内容を確認していく受付嬢。
その時、それまで見ていた一人の冒険者が、
二人に近づいてきた。
「おいおい、13にもなって職歴なしかよ?
どこの貴族の坊ちゃんだよ」
革鎧に身を包んだ、ごつい男だ。
「冒険者ってのはな、魔物退治が基本だぜ?
これまでロクに鍛えてもこなかったガキが通用するほど、
甘い世界じゃないんだよ」
「・・・」
どう答えたら良いものか、クリスは迷った。
ガラの悪い男だが、言っている事はもっともだと思ったからだ。
受付も、
「ボックさん、人にはそれぞれ事情があるのですから」
と、軽くいさめる程度にしている。
だが、ボックと呼ばれた冒険者は止まらなかった。
「はん!だったら、もっと楽に稼げる店に行けよ。
顔だけは需要がありそうだし、貴族の変態共をたらしこめばいい思いが出来るかもしれないぜ、ひっひっひ・・・」
そう言って、下卑た眼でクリスを笑ってきた。
「ボックさん!」
さすがに言葉が過ぎると感じたか、
受付が強い口調で注意する。
「・・・」
クリスは、運がいいと思った。
ここに来るより前に、あのフィラと出会えていて。
彼女と過ごして、すさんだ心が洗われていなければ・・・、
間違いなく、このボックという男に挑みかかっていただろう・・・。
「参考にしておくよ」
とだけ言って、もう相手にしない事に決めた。
受付もそれに合わせて、二人で登録の手続きを進める。
それでもしつこく突っかかってくるボックだったが、
クリス達が暖簾に腕押しのような態度を崩さないので、
やがて、
「チッ!態度の悪い新人だぜ。
こりゃ絶対早死にするな~」
と、捨て台詞を残して離れていった。
それを確認すると受付は、
クリスにだけ聴こえるように言った。
「立派でしたよ」と・・・。
――全ての手続きと説明が終わり、
クリスは新人のE級冒険者となった。
証明となるプレートを、
紐を通して首からかける。
(フィラとおそろいだな・・・)
と、そんな些細な共通点が嬉しくなる。
E級冒険者・・・、
これが自分に与えられた新しい肩書。
(ここからだ・・・)
ここから頑張ろう。
クリスは改めて強く思った。
(頑張って働いて、強くなって、何かになって・・・)
そして本当の自分の居場所を・・・!
(そのためにもまず・・・)
働かないと。
クリスはそのまま、
受付に仕事がないか聞いてみた。
「ありますよ~、おすすめの依頼が」
待ってましたとばかり、受付は一枚の依頼書を取り出した。
【つづく】
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
そして・・・、
『冒険者となったクリス。
受付の提案する依頼内容とは?』
あなたの想像・・・いえ、創造されたアイデアをコメント欄にてお贈りください!
簡単な一言だけで結構ですので・・・!
『薬草採取』とか、『ゴブリン退治』とか、『老人ホームの介護』とか・・・。
物語の続きを紡ぐためにも、
どうぞよろしくお願いします・・・!
――というお願いをお聞きくださり、
本当にありがとうございました!
最新話では新たなお題を募集中ですので、
どうぞよろしくお願いします・・・!