第一話
俺は今朝からを振り返る。
今日は試験あけの週末で、所属していた部活も休みだった。
というか、あまり活動してない部活だから、いつも通りだが。
俺しかいない割り箸工作部。
割り箸とゴムでたんに遊んでいるだけだし、俺の通う高校は、進学率がたかいので、もっとスペックがたかい部にみんないる。
小学生みたいに輪ゴムを飛ばして遊んでるのは、俺くらいだ。
俺の部室には、出目金が一匹いるだけで、俺がいまネットでハマってるのは、いろいろな水槽ネタだし?
まあ、休みだけど、でめちゃんに、餌やり行こうかと早起きして、学校に行って、でめちゃんに餌やりして、
ー帰宅しなければ、よかった。
なんで、俺は寄り道をしなかったんだろう?
ー朝はやすぎて、100均がまだあいてなかったからか?
割り箸の補給ができなかったんだ。
仕方ないから自転車こいで戻ってきたんだ。
ー朝早くに。
土曜日の朝に。
せめてコンビニで、朝メシ買ってきたらよかった?
でめちゃんのエサ味見してないで、俺のエサがいったよな?
俺の家は、ふつうに住宅街にある一軒家で、とくべつなことはない。
親父はサラリーマンで、母さんはパート。
俺はひとりっ子で、とくに可もなく不可もなく、高校に通うやつ。
公立の中学にはいり、公立の高校に入学した。
ふつうに進学する奴らがいる高校で、進学しない奴らもあたりまえにいるレベル。
ようは、どこにでもあるタイプだ。
レベルも頭いいやつらは、国立にクラスで何人かうかる。ってかんじだし。
まあ、俺は理系コースにいるから、勉強はわりと真面目だけど。
ーまだ受験なんか考えてない。だって、中3の受験を乗り切って、また受験を考えるのは、
ーやだ。
なだけだ。
でめちゃんのぷくぷくをききながら、割り箸とゴムで、半永久的にまわる濾過システムってないんかなあ?
って、我ながら気長に遊んでる。でめちゃんは、金魚だし、わりとつよいから、飼育コストはやすいが。
止まっても俺が簡易ボンベ持って行く間はもつだろうし、水草もいれてるしなあ。
台風の時とかは、でめちゃん連れて帰るし?
ああ、でめちゃんにあいたい。
今日は一日、部室にいたらよかった。
そうすれば、
ーとなりの家の玄関からでたコイツと鉢合わせしなかった。
だって、コイツは、幼稚園から、
ーうちの地域では有名な私立に通ってる。
レベルは俺が通ってる公立とは、比べられない。
というか、外部進学率がたしか低いかなあ?大学は別枠だけど。
「あれ?おはよう?学校だったの?」
俺をみて、ほんとうに同じ年か?って大人びた笑顔を浮かべた。
みためそのまま、お嬢様みたいなやつ。
おじさんは、地元じゃ有名メーカーの幹部だ。
じいさんが創業者だったか?
まあ、金がかかる学校にいくだけはあるんだろう。
なぜかうちの一般階層とも仲がいいのは、たんに、この辺も少子高齢化で、同い年は俺たちだけだ。
たんに、それだけ。お互いに一人っ子だしなあ。
うちのパワフル母さんのおかげで、専業主婦だったおばさんもパートしてる。
そういえば、きょうは職場の飲み会とか言ってたな?
ー迎えに行くついでに、父さんとおじさんも飲み会とかだっけ?
まあ、こいつの家はセキュリティしっかりしてるしな。
やばいのは、俺か?
たまに窓開けたら、コイツの生着替えとか昔はあった。
ガキの頃だしな。セーフだよなあ?うちの高校じゃ、絶対に言えない。
最寄駅でマドンナ化してるらしい。俺がチャリ通してる最大の原因だと思う。
たしかに、背中までのきれいな栗色の髪に、茶色い瞳に、全体的に色素うすくて、華奢だし?
仕草もふつうに女の子、だろう。
ー傍目には。
幼なじみは幼なじみだから、たんに小さな頃から知ってる。
美少女って言われたら、
ーそうなんだ?
くらいだ。ただ、俺がいまだに初恋もないのは、悪友たちに言わせたら、美少女を見慣れてるせいらしいが。
ー美少女って、ひとりいたら、見慣れるのか?
基準がおかしいのは、どっちだ?
でめちゃんが俺には可愛いけど。
ちなみにでめちゃんは、
ーヤローだ。
…でめちゃんが可愛いのは、あってる。
俺は初恋をたしかに知らない。
…一応、共学えらんでるよな?
でめちゃんが可愛いは、
ーおかしくないよな?
「…相変わらず、変人っているんだね?」
「でめちゃんは、美男魚だぞ?そういえば、知ってるか?なんか最近、人魚の化石をCTしたら不思議なことなったらしいぞ?」
「はいはい。わかったから、いま、ひま?」
「ひまにみえるか?」
「学校から、まっすぐ帰るならひまだよね?」
「じゃあ、ひまだ」
素直に抵抗しない俺の、
ーどこが悪かったんだ⁈