第6話 ゲームをしよう
葵ちゃんとショッピングセンターへ行った翌日。
俺はたった1コマの講義を受けるために大学へ来ていた。
正直かなりだるい。たった90分のためだけにわざわざ大学にいかなければならないなんて。
「よう壮馬!」
「おはよう、黒瀬」
「!? あの壮馬が挨拶してきた……だと?」
「失礼な。俺をなんだと思ってるんだ」
「いつ見ても不機嫌そうな男」
「俺ってそんな印象悪かったのか」
相変わらずこいつは俺が来るのを待ってたんじゃないかというほど綺麗なタイミングで通学してくる。時間割同じだったっけ?
「どうしたんだ? 今日はやけにご機嫌じゃないか」
「別に。いつもと変わらないよ」
「もしかして、従妹ちゃんと何かあったとか」
「……いいや」
「図星だろ? 壮馬はポーカーフェイスみたいだけどわかりやすいところがあるからな」
やっぱり鋭い。こいつの観察眼には驚きを通り越してあきれるばかりだ。
「くぅーっ! イチャイチャしやがって!」
「ほんとにそんなんじゃないって。ただ買い物に行ってきただけさ」
「!? デート、だと?」
いや、人の話を聞けよ。
まあ葵ちゃんも言ってたしあれはデートってことになるのか?
「壮馬がそんだけ嬉しそうってことは従妹ちゃんは相当いい子なんだろうな」
「ああ。彼女はいい子だ」
「彼女!? ま、まさか付き合って」
「え? 代名詞としての彼女だぞ? 従妹同士で付き合うか? ふつう」
しかもよく考えてみろ、俺と葵ちゃんは5歳も離れているんだ。
妹みたいな情はあれど恋人とかそんな情は一切ない。
「そうだよな、あの人付き合いの悪い壮馬が女子と付き合うなんてありえないよな」
「マジでどんだけ印象悪いんだよ」
「自覚してないのか? 普段は無口だし滅多に笑わないし、そうかと思えば話しかけたらちゃんと返してくるし人付き合いが上手いのか下手なのかわかんないんだよな壮馬は」
「……よく見てるんだな、俺のこと」
「あったりまえだろ? 俺たちは同じ童貞の仲じゃないか」
「やめろ、一緒にするな」
黒瀬が言ったことは正しい。俺は自ら人付き合いをしようとは思わないが求められればそれなりに付き合いはする。はたから見れば謎の多いやつだと思われていることだろう。
……あの事件さえなければ俺も黒瀬みたいに毎日笑ってられたのかもしれないな。
講義が終わり、即行で帰宅した俺は葵ちゃんとゲームをしていた。
普段あまりゲームはしない方だが一人暮らしということもあり本当に暇なときには嗜んでいた。
「ううっ、まだ負けませんよぉ!」
「勝てるかな? この俺に」
ちなみに今やっているのはスマッシュシスターズというゲームだ。ジャンルは対戦アクション。
シスターズと名がついているのだから女性キャラしか出てこないのだろうと思ったら大間違いだ。
ゴリゴリの男性キャラが登場してくる。いや、むしろ7割方男性キャラで埋め尽くされている。
残る1割は性別不詳。女性キャラ2割しか出てこないのになんでこんなタイトルつけたんだよ……
「ううっ、負けましたぁ」
昨日ゲーセンで遊んでからというものの葵ちゃんがゲームにはまりだした。
学校を除けば長らく世間の遊びに触れてこなかったはずだし、熱中できるものが見つかったというのはいいことだ。ゲームのやり過ぎもよくないけれど、そこは俺が監督するとしよう。
聞けばスマホを触ったことがないらしいし、パソコンも学校の授業でほんの少し触っただけ。
葵ちゃんにはもっといろいろなものに触れてほしい。
これからもその手助けをしていこうと思っている。
「ははは、まあ葵ちゃんは今日初めてやったばかりだししょうがないよ」
「でも、悔しい! もう一回やりましょう!」
「望むところだ!」
俺も久しぶりに一緒に遊べる人がいて楽しいのかもな。
中学校の頃は途中からぼっちだったし、高校ではうわべだけの付き合いで遊んでこなかったからなぁ。
そう考えると自宅で誰かと一緒にゲームなんて小学生ぶりか?
なんだかんだで俺も葵ちゃんに救われてるのかもしれない。
「また負けたぁ!」
「俺が大学とかバイトに行ってる間ゲームしてていいよ」
「いいんですか!?」
葵ちゃんがテーブルから身を乗り出すようにして聞いてくる。
今着てる服はただでさえ胸元が緩い感じなのにそんなに身を乗り出したら、下着が見えてしまう。
俺も一応男ではあるわけで……
生物としての反応がまだ残っていたことに安堵しながらも
そんなハプニングにドキドキしつつあったのだが。
「真白さーん? ふふふ、もしかして見ちゃいましたか?」
「み……見てない! ギリギリ見てないから!」
「珍しいですね、真白さんがそんなに慌てちゃうなんて」
小悪魔的な笑みを浮かべ、からかってくる。
俺が困ってるのを見て楽しんでるようだ。
無自覚系Sか。将来が不安だ。
「こういうのには興味ないと思ってたんですけど、真白さんも男の子ですからねぇ。いいんですよぉ、私は気にしませんし」
ニヤリとした笑みを浮かべながらジト目で見てきた。
どうやらテーブルから身を引くつもりはないらしい。それどころか服の首元に手をかけ始めた。
「はぁ、葵ちゃんはかわいいんだからもっと注意しないと!」
「か……かわいい?! えへへ、照れるじゃないですか」
なんとかかわせてよかった。実際、葵ちゃんがかわいいのは事実だし。
たぶん道行く男たちにインタビューしてみても特殊な性癖の持ち主でない限りかわいいと答えるだろう。
いや、むしろ特殊な性癖の持ち主から絶大な支持を得そうだな。
――ちなみに何がとは言わないが水色だった。
まあ昨日洗濯してるんですけどね。
それでもただの下着と実際に身に着けているのは別物というかなんというか。
久しぶりにドキドキした俺であった。




