第8話 死闘〜ひとすじのヒカリ〜
見た目は、人間と同じだか、まわりに漂う雰囲気…肌の色など細かく見ると、魔族だということは分かる。身体能力や戦闘能力だって並の人間の倍以上ある。この魔族、"クーネ"は刀のような得物を持ち、身長は180以上はある。背中には漆黒の翼が生えている。ゆっくりとした足取りでカイム達3人に近づく。
「さあ、死合いましょう…英雄の卵達よ!」
刀の太刀筋がカイム達を薙ぎ払うように襲いかかる。
「させません!」
刹那が飛び出し、"正宗"を構える。
「神凪流奥義、"真空斬"!」
2つの刀から生じた、衝撃波がぶつかり、相殺した。その瞬間、油断してしまった刹那の懐にクーネが潜り込み、刀の柄の部分で腹を殴り、空中に吹き飛ばした。追撃をしようとするクーネにリオンが立ち向かい、クーネの眼差しをリオンに向けさせた。
「やらせるか!」
「ふっ…レオン・ファラドールの息子ですか…いい眼、いい腕をしているのですが…やはりまだまだですね。」
せめぎあっている最中、カイムは刹那を助け、直ぐ様、3対1の状況にした。
「どこからでもどうぞ…かかってきなさい!」
「行くぞ!皆!」
3人で息のとれた攻撃をクーネに繰り出す。しかし嘲笑うかのようにかわしていく。
「ふふっ…」
ニヤっと顔に笑みが溢れた。刹那、
「何!」
リオンの目の前に突然、巨体な火球が出現し、リオンをやきつくす。
「うわぁぁ!」
リオンはそのまま岩にぶつかり、気を失ってしまった。
「リオン!くそぉ!」
怒りに我を忘れ、クーネに突っ込む、カイム。
「くくっ…死に急ぎますか?」
刀を振りかざし、カイムを殺そうとする。
「危ない!」
間に入ってきた、刹那が身代わりとなり、斬撃を受けた。血しぶきがカイムの顔にかかる。出血の割には傷は浅いようだ。
「逃げてください…」
「くそ…どうすりゃ…」
(どうすりゃいいんだよ…)
―
「はぁはぁ…」
ミーナ達3人は山道を走りながら下り、本部に救援を頼むために走り続けている。
「カイム…大丈夫だよね?」
後ろを振り返り、呟いた。
―
「終わりですか?」
もうボロボロのカイム。既に、リオンと刹那は気を失っている。
「万事休す…か…」
カイムは聖剣を握る握力すら無くなっていた。
「これが英雄…人間の力でしたか?もっと張り合いのある生き物だったはずでしたがね。」
不敵な笑みを浮かべ、さげずむ瞳でカイムを直視する。
(こんなところで…終わるわけには!)
その時だった、聖剣が輝きだし、時が止まった。
「なっ、なんだ?」
訳が分からず、呆然とし周りを見渡す。
『聖剣の担い手よ…我の声が聞こえるか?』
いきなり、剣が喋り始めた。正確にいえばカイムに直接語りかけてきた。
『我は、初代の担い手だ。この剣の能力、君の能力を教える為、この剣を通じて話している。』
「担い手?」
ポカンとした表情で話しを聞く。
『そうだ。時間がないから簡単に話す。聖剣は、破邪の力を持っている。魔族に対して効果がある。これは知っていると思う。だが、君の能力は…』
「俺の能力って?」
『…聖剣の担い手は、"新人類"と呼ばれている"ブレイブ"という能力を持った人間でないといけない。どういう意味だか分かるな?』
「ああ…俺は"新人類"ってやつで、"ブレイブ"って能力を持っているんだろ?」
『そうだ。"ブレイブ"は、一時的に潜在能力を引き出し、強くなる力だ。しかし、発動条件は、何かを必死で守ることだ。その想いが聖剣に伝わり、輝いたら、発動できる。』
「分かった…」
ゆっくりと頷く。
『頑張れよ…我はいつでも味方だ…』
時が動きだす…そしてまわりには静寂が訪れる。微風だった風がぴたりと止む。まるで、今から激しく何かが始まることを恐れて…
(想い描くんだ…守りたいものが何なのかを…仲間を!)
「行くぞ…"ブレイブ"!」