第12話 〜運命の歯車〜
―12年前
「もう嫌!!」
可愛らしい少女は辛い訓練、修行にやる気を無くし、声をあげた。
「私は、なんでこんなことしなくちゃいけないの?」
少女は、人界に降りた。ここは天界、そしてこの少女は、レイラ・デュナミス・ヴァルキュリアである。
―人界
(ここが人間の住まう世界。)
レイラはとある村に降り立った。不思議と懐かしい風が吹いていた。何かに呼ばれているような感覚に陥り、歩き始めた。
(こっちになんかあるのかな?)
レイラは、小さな公園らしき場所に着いた。そこには、魔法の練習をする男の子の姿が見えた。3、4歳ぐらいだろうか。レイラはふいに目を奪われた。小さい体から、圧倒的なオーラが感じられていることもあるが、レイラはその男の子に好意を抱いてしまった。
「…あれ?君は誰?」
男の子は首を傾げる。
「私は、レイラ。あなたは?」
「僕は、カイム。よろしくね。」
手を差しのべる。握手を求めているようだ。
「こちらこそよろしく。」
2人はすぐに気が合った。初対面のはずなのに、なぜかそんな感じはせず、魔法のことや父親のこと、キラキラと目を輝せて、レイラに話した。レイラは聞いて、うん、そうなんだ、と、興味深々にカイムの話を聞いていた。2人は楽しく喋り合った。
「―レイラ、遊びはここまでです。」
天界から迎えがきた。
「今日はここまでかぁ。」
「うん、ごめんね。また今度一緒に遊ぼう?」
「当たり前だよ。また逢おうね。」
「また逢える?」
レイラの瞳には涙が溢れ出してきた。
「もちろんだよ。約束だよ。」
カイムはレイラの手を握り、頬っぺたにキスをした。
「約束だからね。絶対だよ。」
レイラは手を振った。
「うん、絶対だよ。またね。」
―12年後
「レイラ、君はあの時の?」
「そうだよ。ほんとは10年前に逢おうと思ったんだけど、あんな事になってるとは思わなくて。」
2人はまた出逢えた。あの時感じた気持ちは、今でも衰えずに持ち続けている。"好き"という気持ちを。
「また逢えたね。レイラ。」
「うん。カイム…逢えて良かった。」
2人は抱き締め合った。
「父さんを助けてくれたんだね?」
「うん。」
「ありがと。」
2人は瞳を合わせた。
「オホン、そろそろいいかな?おふたりさん。」
2人は離れる。顔が紅く紅潮している。
「親の前でイチャイチャするな。さぁ行くぞ、カイム、レイラ!」
アズイルは駆け出した。その後を追うように2人も魔族を切り払いながら駆け出した。
「人間の分際で…生意気だ!」
空から槍を持った魔族が現れた。その槍は太古の昔にある聖者の血を浴びて造られたとされる伝説の槍、"ロンギヌス"と呼ばれる物だった。
「お前は誰だ!」
カイムが聖剣の切っ先を魔族の喉に向ける。
「私は、ヴァリエ。魔王様直属の将軍だ。」
"ロンギヌス"をカイムへ向けにやりと笑みを浮かべる。
「私に勝てるか…人界の強者よ!!」
魔族を相手に奮戦する連合軍。
果たして…