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998話 モフモフである

 【Raid Battle!】



 【兎月舞う新緑の主】


 【荒れ狂う魚尾砲】


 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】




 「はい、今日も元気にログイン!

 とりあえず料理関係が整ったから他にも色々と手を出してみたいところだ……

 とりあえず一般野生生物でも狩るか!

 貴重な肉材料のポップ場所を回っていくだけでも時間は過ぎるからな」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)はログインするなりすぐに移動を開始し、サービス開始後からの経験則で一般野生生物が出現する場所に見当をつけて待ち構えていた。



 (兎鰻レイドボスが近寄る場所にポップ場所が多いんだがプレイヤー側が途中でヤられることを考えると狩場としてはウマくないんだよなぁ……

 だからこそこの穴場にいるんだが、再出現までの時間が長いのがネックだ……)


 一般野生生物に気取られないように気配を潜め声を出すことも抑えている霧咲朱芽(きりさきあやめ)だが、中々現れない一般野生生物に痺れを切らしているようである。

 


 「うおっ、急に来た!?

 だがちょうどいい、くらえっ!」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)はポップした一般野生生物……茶色と白色の毛をした狼を見つけそのまま手にしていた包丁で切りかかっていく。

 狼はやられまいとして迎撃しつつ逃げようとしていたがカテゴリーとしてモンスターに括られていないため戦闘力に乏しく、そのままあっさりと狩られてしまったようである。



 「解体もこの場で済ませるか!

 周りに他のプレイヤーの気配もないし、処理は早い方がいいからな!」


 そうして手慣れたように皮を剥ぎ肉を確保していくが、他の一般的プレイヤーではこうもスムーズにはいかない。

 皮はボロボロになり肉は可食部が少なくなってしまうのだが、霧咲朱芽(きりさきあやめ)の場合はそうはならず可食部は最大限に、毛皮は毛並みが綺麗に揃った状態で確保できているのだ。



 「おお……モフモフだな……っ!

 肉は俺が料理に使うとして、せっかくだしこの辺の毛皮は【鍛冶士】に渡してみるか!

 何か装備とかに使えるかもしれないし、使えなくても他のやつに売り捌けば問題ない!」


 






 珍しく兎鰻レイドボスに倒されることなく樹都エリアを抜け出し草原エリアに到達すると、一目散に【鍛冶士】の鍛冶場へと駆け込んでいった。



 「おーい、今日は毛皮を持ってきたぞ~!

 【鍛冶士】がこれを扱えるか知らないがまずは見てくれよ!」


 そう言って相手の承諾も得ず鍛冶場の床に狼の毛皮を広げていく霧咲朱芽(きりさきあやめ)

 その傍若無人っぷりには流石の【鍛冶士】も一瞬度肝を抜かれたようで、目をパチクリしていたのであるが……



 「ガハハ!!!

 中々綺麗な毛皮ではないか!!!

 これはお前が解体したのか!!!???」

 「そうだぞ」

 「実に丁寧な仕事だな!!!

 他の()()()()()からの持ち込みも何度かあったが、このレベルで状態がいいものはそうもお目にかかれないぞ!!!

 お前にこのような1面があるとは驚かされた!!!」


 

 驚きつつも咎めることなく、それが自然体であるかのように話を進めていくことにしたようである。

 一々怒りを露にするよりも、ある程度のスルースキルが必要だと何日も関わり続けた結果分かったのだ。

 霧咲朱芽(きりさきあやめ)はそういう扱いをした方が都合がいい人物である……【鍛冶士】の脳内ではきっとそのように位置づけられたはずである。



 「それで、【鍛冶士】はこれを扱えるのか?

 鍛冶メインなら毛皮なんて使えないかもしれないが、最悪装飾とかに使えるかもと思ったんだが……」


 「心配するな!!!

 ワシは鍛冶を好むがそれが専門ではない!!!

 せっかくだ、お前の持ち込んできた毛皮とワシが元々持っていた素材を合わせてお前の装備を整えてやろう!!!

 そろそろその()()()()()初心者のようなタンクトップだけでは見栄えも悪い頃だろうからな!!!」


 「見栄え……ってことは武器だけじゃなくて鎧とか服みたいな装備も作れるのか!?

 性能だけを拘るのも当然凄いが見栄えも拘れるなんて、お前も人のこと言えないくらい芸達者じゃん」



 【鍛冶士】の言葉を聞いた霧咲朱芽(きりさきあやめ)はヤレヤレと言わんばかりに肩を竦めていた。

 人のことを言える立場にないのを直前に指摘されていたのにも関わらず、あえて無視して【鍛冶士】に指摘を飛ばすのは図々しいというより強心臓と言うべきかもしれない。

 


 「装備の希望はあるか!!!???

 格好いい重厚な装備から可愛らしいフリフリの装備までワシにかかればどのようにでも再現してやるぞ!!!」


 【鍛冶士】の提案に対して霧咲朱芽(きりさきあやめ)は指を顎に当てながら視線を宙に漂わせ、思考の海へと潜り自分の進むべき道について考え始めた。



 (格好いい重厚な装備にも憧れる気持ちはあるが、チュートリアル武器が包丁の時点でどっしり構えて戦う戦術は似合わないな……

 かと言って可愛らしいフリフリの装備なんて柄じゃないし流石に俺も恥ずかしい!

 それならこの2つの中間……)



 「うーん、羽織れるマントみたいなのを頼めるか?

 風景に自然に馴染めるようなやつでワイルド感のあるように仕上げてくれると助かる。

 あと、パンツ(ズボン)は膝少し上くらいの長さで裾にモフモフな感じのやつをつけて欲しいぞ!

 せっかくいい感じのを手に入れてきたわけだからな!」


 「ガハハ!!!

 思ったよりも見た目の要望が多いな!!!

 お前のことだからてっきり性能を重視すると思っておったが杞憂だったな!!!

 だが、ふむ……これ以外にも足りない部分はワシが想像で補って装備を整えていいか!!!???

 色々と思うところがあるからな!!!」


 【鍛冶士】は霧咲朱芽(きりさきあやめ)を頭から足まで舐めるようにじっくり見つめると、そのようにさらに提案を重ねてきた。

 何やら考えがあるようだが、霧咲朱芽(きりさきあやめ)には【鍛冶士】が何を考えているか分からないので『おまかせで!』というだけで深く考えずにそのままスルーすることにしたようだった。

 





 【Bottom Down-Online Now loading……】

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