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997話 料理プレイの達人

 【Raid Battle!】



 【兎月舞う新緑の主】


 【荒れ狂う魚尾砲】


 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】




 「はい、今日も元気にログイン!

 今日はとうとう料理を作るぞ~!

 テンション上がってきたな!」


 回転しながらログイン処理を終えた霧咲朱芽(きりさきあやめ)

 ここ数日は明確な成果が上がり続けているためテンションが高いのだろう。

 この裏で、現実でのトレジャーハントで新たな宝を手に入れていることもあってかなおのこと有頂天になっているわけである。


 

 「なんか今ならあの兎鰻レイドボスにも勝てそうな気がしてきたぞ!

 この勢いのまま挑んでくるかぁ~!」








 樹都エリアで兎鰻レイドボスに上半身と下半身を分断され草原エリアへと死に戻りしてきた霧咲朱芽(きりさきあやめ)は負けたことを気にせず、そのまま【鍛冶士】の鍛冶場へとたどり着いていた。

 そんな霧咲朱芽(きりさきあやめ)は目を爛々と輝かせながら鍛冶場の中へと無断侵入していき、平然と【鍛冶士】へと声をかけていく。


 

 「よう、【鍛冶士】元気か?

 俺はここ数日で一番元気だぞ!」


 「ガハハ!!!

 それは見ればすぐにわかる!!! 

 そしてワシは聞かれるまでもなく常に元気だ!!!

 愚問だぞ!!!

 何せ、とうとうお前の料理を食べられるのだからな!!!」


 「それは良かった。

 俺の料理を万全な状態で受け取れるってわけだからな!

 最後の晩餐でも良かったが、お前はこれからも俺と組んでもらわないと困るからどっちかというと兄妹の杯……というよりは相棒としての杯の肴ってことにしておこうか」


 そんな柄にもないことを言う霧咲朱芽(きりさきあやめ)であったが、自分で言ったことに対して恥ずかしさを感じているようで【鍛冶士】から顔を背けて顔を赤らめているようだ。

 


 「ま、まぁ……それに相応しい料理を作るからちょっと待ってろよ!」


 そして恥ずかしさに耐えられなかったのか霧咲朱芽(きりさきあやめ)はその場から駆け出し、前日に準備した料理スペースで下準備を開始した。

 

 (……!? あいつ、俺がログアウトした後しれっと料理場の設備をアップグレードしてやがるな!?

 そんなこと何も言ってなかったのに憎いやつめ!)


 すると霧咲朱芽(きりさきあやめ)がいざ料理を始めようとしたところ、昨日最後に見た光景とはうって変わって料理場の快適さが明らかに向上していたのだ!

 前は炉の上に炎が上がるようになっていただけの簡素な場所だったのが、水洗いをするところや食材を切るスペース、そして昨日完成した鍋やフライパンのサイズに合わせた火を扱う場所……といったように高機能ではないがあると便利な配置が整えられていた。



 (この様子を見ると、やろうと思えば本当は現実のキッチンレベルの設備を作れたんだろうが、俺が『最低限の装備でやりたい』……的なニュアンスを伝えたからあくまでも料理の質に影響しにくい快適さだけを向上させたんだろうな。

 1を伝えれば10で返してくれるとはまさにこのことだ!

 なんという出来る男……色々と恐ろしいやつ!?)


 そんなことを考えつつも料理の手を止めず、手際よく食材を切り分けていく。

 ニンジンにじゃがいも、たまねぎ……そして一般野生生物の肉だ。

 モンスターではない生物も一定数存在しているが、ポップするペースよりもプレイヤーたちによる狩りのペースの方が早いため肉は希少となりつつあるがそれを霧咲朱芽(きりさきあやめ)は確保してきたのだろう。



 「ふんふんふーん、あぁ……ようやくこの包丁を正規の役割で活かしてあげられているのが嬉しいな~!

 プレイヤーを切り裂く感覚は最高だが、それと同じくらい食材を切る感覚もいいんだよ……」


 食材を切るところから目を放さずそれでも表情を緩ませながら悦に入っているが、余程ゲーム内の料理に焦がれていたのだろう。

 それを陰から見ている【鍛冶士】も両手を組みながら瞳を閉じて静かに頷いていた。

 つかの間の至福の時を二人は同じ光景を見つつも各々別で感じ取っていたのだ。


 そして……




 「完成だっ!!!

 【包丁さん】特製肉じゃが!

 醤油も砂糖もみりんも無かったからフルーツの果汁とかで誤魔化した感はあるが、いわゆる日本家庭の味っていうのはこの料理のことを言うらしいぞ!

 俺の味をた~んと味わってくれよな!」


 「おおっ、美味しそうではないか!!!

 どれ、さっそくワシが味見してやろう!!!」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)が鍋に入った肉じゃがを木製のお椀に盛り付けそれを【鍛冶士】へと手渡していく。

 それを受け取った【鍛冶士】は自作していたであろう鉄製のスプーンでゴロリと入った肉じゃがの具を掬い上げ口へとゆっくり運び入れていく。

 



 「これは……っ!?

 今までワシが食べてきていたものは何だったのか後悔したくなるほど暖かい味……!!!

 心の芯から温まるような、包み込まれるような不思議な感覚だ!!!

 隠居を決め込んでいたワシだが、まさかこんなところで心を動かされるようなものに出会えるとはな!!!

 実に僥倖!!!」


 「うん、ウマイ!

 あっ、甘いけどな」


 二人は出来上がったものに満足し、力強く握手をして感慨に耽っていくのであった……








 美味しそうだったとか……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] 『兄妹の杯……というよりは相棒としての杯の肴ってことにしておこうか』 サラッと自分が妹分になる事を容認してて笑う
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