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993話 検証の始点原点拠点支店

 【Raid Battle!】



 【兎月舞う新緑の主】


 【荒れ狂う魚尾砲】


 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】




 「はい、今日も元気にログイン!

 今日は調理器具作成のための鉄材、廃材を集めるぞ!」


 上空に向かって拳を突き上げながらログインしてきた少女の見た目のプレイヤー霧咲朱芽(きりさきあやめ)

 ログインする時に毎回元気であることを宣言しているが周りにプレイヤーがいることの方が少ないためほとんど独り言となっている。

 そんなことも気にせず霧咲朱芽(きりさきあやめ)は目的である調理器具作成のための鉄材、廃材集めにむけて歩みを進め始めた。





 

 ……兎鰻レイドボスに胴体を貫かれ死に戻りした霧咲朱芽(きりさきあやめ)は草原エリアにいる【検証】青年のところへと赴いていた。

 木材を切り倒して組み立てたログハウスのようなみための建物が【検証】青年の拠点である。



 「【検証】~俺が来たぞ~!」


 扉を勢い良く蹴り開きログハウスへと押し入った霧咲朱芽(きりさきあやめ)を既に建物にいた数人のプレイヤーがギョッとした表情を浮かべて立ち上がった。



 「げっ、【包丁】っ!?」

 「まるで狂戦士のように包丁を振り回すっていうあの……」

 「こんな可愛い見た目なのに戦士みたいに戦うって嘘だよな……!?」

 「まあ、入ってきた荒々しい感じなら納得だけど」

 「そんな【包丁】がどうして検証班の拠点に!?」


 良くも悪くも目立つ振る舞いをしているためか霧咲朱芽(きりさきあやめ)の噂は多くのプレイヤーに広がっており、ましてや数々の情報を集めることが必要となる検証班のメンバーは恐れを感じているようだ。



 「あっ、【包丁さん】よく来ましたよ。

 教えていなかったんだけどボクたちの拠点をよく知っていたね」


 「その辺でプレイヤーキルしながら脅したら教えてくれる親切なやつがいてな!

 建物の特徴さえ聞けば何処にあるかは分かりやすかったぞ」


 自分の居場所を教えてもいない人が訪れてくるという出来事に対しても動じていない【検証】青年であるが、それは普段から情報を求めて多くのプレイヤーがこの場所を訪れてきていることの裏返しであるという証明となる。


 そんな【検証】青年を訪ねてきた霧咲朱芽(きりさきあやめ)の用件とは……



 「お前って鉄材とか手に入る場所の情報って持ってるか?」


 「鉄材ですか……

 一応その情報はありますが何を作るつもりですか?

 【包丁さん】の噂を聞く限り戦闘に役立ちそうな武器……盾とか投げ物辺りでしょうか?」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)は自分が求める情報を【検証】青年に説明した。

 すると【検証】青年はこれまで得た霧咲朱芽(きりさきあやめ)の情報を脳内で整理し何を作りたいのかまで推測し、その憶測が正しいか聞き直した。

 だが……



 「確かにその辺もあれば便利だがまだ戦闘で消耗品を使う気にはならないな……

 定期的に手に入るルートの確立が出来てるならともかく、今のゲーム開始後黎明期で戦術に組み込むにはリスキーだ!」


 「……確かにその通りですがそれなら何を作るつもりですか?

 これ以上は当てずっぽうの予測しか出来ないですよ」


 いくら多くの情報を取り扱う【検証】青年であっても似たような傾向……つまり戦闘関係でしか霧咲朱芽(きりさきあやめ)の情報を知り得ていないためこれより話が広がることがないのである。

 それを察した霧咲朱芽(きりさきあやめ)は勿体ぶる必要がなくなったので鉄材の使い先について明かすことにした。


 

 「そろそろ本目的の料理をしたくてな。

 この包丁をチュートリアル武器に選んだのも料理をメインに据えてゲームを遊ぼうと思ったのもあるぞ!

 だから鉄材を集めて調理器具を作ってもらおう……ってわけだ!

 だから答えは鍋とかフライパンとかだな」


 「意外と家庭的な面もあったんですね……

 それはそれとして作ってもらうということは鉄材を扱えるプレイヤーをご存じで……?

 ……あっ、いえ、そういえば【包丁さん】は【鍛冶士】さんと知り合いでしたね。

 それなら鉄材も無事に加工出来るでしょうし納得です」


 「それで肝心の鉄材の入手先は?」


 「それはこの草原エリアの南側にある岩山エリアの麓周辺ですね。

 まだ頂上周辺は道の整備が出来ていないので立ち入りが出来ませんが、麓なら問題なく入れます。

 幸いにも洞窟が既にあってそこを進めば鉄鉱石の採掘が出来るので【包丁さん】はそこに行くといいと思います」


 「なるほどな!」


 「岩山エリアは資源面で気になることが多いので検証班の支部を後々置きたいと思っていますが、今の慌ただしい状況だと動きを広げられないので人が増えてからになりますけど……」


 「そうなったら俺も色々と手伝ってやるよ!

 それが今回の情報の報酬でいいか?

 今はまだお前に支払える対価なんて持ち合わせていないからな!」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)は薄い胸を張りながら【検証】青年へとふっかけていく。

 素寒貧な状態は誇るものではないのだがそれを逆手にとって自信の都合のいいように物事を運ぼうとする意図があるのだ。



 「……ボクの先回りをしてくるとは【包丁さん】はちゃっかりしてますね。

 そういうところがボクは気に入ったよ、今後も何かあればこの【検証】を頼ってもらえると力になるよ。

 【包丁さん】の戦闘力はいつか必要になるだろうしその時には存分に働いてもらいたいからね」


 「はっ、そういうお前も俺を使おうとするなんていい度胸じゃないか!

 俺もお前を気に入ったぞ、【検証】!

 ただ、いつまでもタンクトップだと締まりがないから情報を取り扱うならそれ相応の格好をしておいた方がいいぞ?

 ……まぁ、それは俺も当てはまるけどな!

 何はともあれ、俺のような可憐な乙女と行動をする男ならビシッと服装もキメろ!」


 「ボクはあまりファッションに詳しくないんですよね……

 【包丁さん】的にはボクは何が似合うと思いますか?」


 「そうだなスーツとか……白衣とか似合うんじゃないのか?

 じゃっ、ログイン時間もそんなに残ってないし今回はこれでお暇させてもらうぞ!

 サラバダー!」

 


 そうして思いつきのアドバイスを言い残して霧咲朱芽(きりさきあやめ)はログハウスの扉を再度蹴り飛ばし嵐のように過ぎ去っていった。

 残された【検証】青年は……



 「白衣……白衣かぁ……

 【包丁さん】はそういうのが好みですか……うん」


 過ぎ去っていった霧咲朱芽(きりさきあやめ)を遠い目をしながら見送っていたのであった。




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[一言] これは惚れましたね
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