表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

991/2205

991話 快楽殺人者のイモ掘り

 【Raid Battle!】



 【兎月舞う新緑の主】


 【荒れ狂う魚尾砲】


 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】



 「はい、今日も元気にログイン!

 さて、あのレイドボスはまだ近くにいないようだな……?

 それなら今のうちに【鍛冶士】の野郎を唸らせるような料理を作るための食材を調達するべきか!」


 元気良くログインしてきた霧咲朱芽(きりさきあやめ)

 だが何をするのか決めてもなおすぐには動き出さずに物陰に隠れながら何やら思案していた。



 「……って言ってもプレイヤー全員がこの辺からログインしてくるなら手近にある素材は持ち去られてるか……

 流石に目に見えやすいところには落ちてないぞ。

 となると前みたいに木登りしてみるか、隠れている場所を見つける方に専念した方が効率も良さそうだ!」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)はログインして早々に周囲を確認し、兎鰻レイドボスが周りにいないことを確認した上で戦闘ではなく生産に意識を向けた動きをし始めた。

 木々の根元や茂み付近を片っ端から探していくことで何かしらの食材を見つけようということなのであろう。

 レイドボスに支配された樹都エリアでは霧咲朱芽(きりさきあやめ)に限らず他のプレイヤーも自由に闊歩することが出来ないため、結果として手頃な場所にあったものは有効な素材になりそうなものはキレイに回収されてしまっているのだ!

 これが現実であれば環境美化運動として誉められた行為になる場合もあるのだが、今回の場合はプレイヤーたちの私利私欲にまみれた行動の産物であるためこの場に残されているのはただのゴミや廃墟が崩れた後の破片、動物か何かの抜け毛など……言ってしまうのであれば役に立たないものとプレイヤーたちに見捨てられたものである。



 「まぁ、そんなゴミでも役立つことはあるけど稀だからな……

 大人しく食材らしい食材を見つけたいが……」


 そんなことを考えながら探していると今まさに根菜類……イモのようなものを掘り出しているプレイヤーたちの姿が目に入った。



 「おー!

 こんなところにイモが!?」

 「やりますねぇ!」

 「もっとありそうだし掘ってみようぜ!」


 そんな和気藹々としたプレイヤーたちの姿を見た霧咲朱芽(きりさきあやめ)は顔の表情を緩ませてにっこり……するはずもなく、何かを企んでいるような人相が悪そうな表情を浮かべていた。



 「よおお前ら!

 イモがいっぱい掘れて景気が良さそうじゃないか!」




 「誰?」

 「可愛い娘だけどオレの知り合いじゃないな?」

 「ワイも違う」

 「じゃあ普通に通りすがりの女の子か。

 それならこのイモ少し分けてあげようか!」

 「まぁ、ちょっとくらいならいいんじゃね?」


 霧咲朱芽(きりさきあやめ)が何の脈絡もなく話しかけたプレイヤー集団は霧咲朱芽(きりさきあやめ)の見た目から自分達よりもかなり年下の女の子という判断をし、見つけたばかりのイモを少し譲ろうとしていた。

 物資が中々手に入りにくい状況でこのように譲り合えるというのは善良なプレイヤーたちであるという証拠である。

 そして一人のプレイヤーが三個ほど手に持ち霧咲朱芽(きりさきあやめ)に渡そうと手を差し伸べた瞬間……








 「そんなんじゃ足りないな!

 悪いが根こそぎもらっていくぞ!

 根菜類だけにな!」


 「えっ……」


 こともあろうか霧咲朱芽(きりさきあやめ)はその手首ごと包丁で切り裂き、地面にポトリと落としていった。

 あまりの出来事に善良なプレイヤーたちは目を見開いたまま動き出さずに霧咲朱芽(きりさきあやめ)の方を見て棒立ちしている。


 「プレイヤーキラーだとっ!?」

 「なっなっなっ、なんだ君は!?」

 「平然と手首を切り落としやがった……」

 「そんなにイモが欲しかったのかよ」


 

 「俺はプレイヤーキラーだからな!

 欲しいものがあれば他のプレイヤーをキルしてでも奪い取るし、欲しいものがなくとも気ままにプレイヤーキルをする。

 それが俺だ、覚えておけ!」


 そう吐き捨てた霧咲朱芽(きりさきあやめ)はまだ身動きの取れない他のプレイヤーたちの側に駆け寄り包丁で心臓をひと突き、さらに通りすがりに脇腹を横凪ぎで切り裂いていく。

 次々に身体が切り裂かれていくプレイヤー集団であったが抵抗という抵抗を見せずにそのまま全員が光の粒子となって消えていった。



 「あ~やっぱりこの感覚……止められないなぁっ!

 皮を裂き肉を断つ感触が包丁経由で伝わってきて最高だ!

 そして極めつけはあの顔っ!

 くっくっくっ、思い出しても俺の嗜虐心をこれでもかというほどくすぐる驚愕と絶望と苦痛の顔だった!」


 他のプレイヤーを切り裂いた包丁を指に挟んだまま、両手で緩んでいる頬を持ち上げながら悦に入っている霧咲朱芽(きりさきあやめ)はまさに快楽殺人者と言えるであろう。

 


 「あ、ついでにあいつらが掘り出したイモをもらっていくか。

 これはあっても無くても良かったが、タイミングが良かったからな~!

 折角だし【鍛冶士】に食べさせてやる料理にこれを使うか……うん、それがいい!」


 そうして気分ルンルンな霧咲朱芽(きりさきあやめ)はイモを採取した後、兎鰻レイドボスに素早くキルされて生き草原エリアへと死に戻りしていくのであった……







 これは、心地のいい罪の気配っ!?

 生きているとか、いないとか……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この子に生産は無理です! 堪え性がなさすぎる。 うん、まぁ今更ですけどね
[一言] こんな初期から大罪魔が見ていた?なんか違う気もするけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ