980話 プレイヤー必見!森人の支援術
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はここ数日の流れで【槌鍛冶士】に会いに行こうと思うぞ!
……というわけでやって来ました新緑都市アネイブルの拡張エリアにある【槌鍛冶士】の鍛冶場!
他の次元から奪い取ったリソースで生まれたこの場所には皆困惑していたのだが、今ではすっかり包丁次元のプレイヤーたちも馴染んできている。
プレイヤーの順応力の高さを垣間見させられたな……
そんな鍛冶場にズケズケと我が物顔で入っていくと奥から金属を叩いている音が鳴り響いてきた。
どうやら今は作業中らしい。
だが俺はそれを無視してさらに奥に進んでいき、作業スペースへと到達した。
するそこには暑苦しい顔、ガチムチな身体をしたおっさん……【槌鍛冶士】が生産アイテムを作っている光景が広がっていた!
相変わらず今日も元気そうだな?
「ガハハ!!!
ワシはいつも元気だぞ!!!
そういうお前も元気そうでなによりだ!!!
はじめてお前と会ったときから思っていたが随分精力的に動くな!!!
そこまで活動し続けるのはNPCであるワシでも中々出来ないぞ!!!」
【槌鍛冶士】はそういうが、むしろNPCだからこそ活動が控えめになる傾向にあるかもしれないぞ?
基本的にエリアごとに縛られているのもあるが、それ以上に長いことこの世界で過ごしてきたんだから目新しいものも少ないはずだ。
それに対して俺たちプレイヤーは【槌鍛冶士】と比べてこの世界で過ごしている時間はログインしている間だけ……そして普段生活している世界とはまるで違う場所だからそれを満喫しようと動くのだろう。
……俺もその例外じゃないぞ!
冒険すること自体は日常のようなものだったが、建造物も生態系も違い倫理観の失われたこの世界を歩いていくのはそれとは違った面白さがあるからな!
「そういうものなのだな!!!
この世界でしか生きたことのないワシには分からん感覚だ!!!
もっとも、はじめて会ったときお前が盛大にワシがプレイヤーだと勘違いしてくれたお陰で色々と面白い経験が出来てよかったぞ!!!」
うっ、そう言われると今思い出すと恥ずかしい思い出ばかり甦ってくるな……
そりゃあのNPCが壊滅的にいない状況であのシチュエーションで出会ったら普通にプレイヤーだと思うだろ……
俺以外のやつらも全く気づいてなかったし、俺が間抜けだったわけじゃなくて【槌鍛冶士】の偽装が神憑りしていたと思いたいところだ。
「それが【森人】最大の強みだからな!!!
木を隠すなら森のなか、人を隠すなら人混みの中というのは鉄則だ!!!
だからこそプレイヤーたちが参入してきたタイミングでその場に居合わせることが出来たワシは包丁次元のプレイヤー環境の構築に自然と関わりやすいポジションを得ることが出来たのだ!!!
おそらく他の次元でも【森人】は陰ながらプレイヤーたちを導く役割を全うしていることだろう!!!
その方法はそれぞれの次元にいる【森人】たちの性格や能力によって大きく変わってくると思うがな!!!」
へー、お前は他の次元の【森人】と面識があるのか?
【菜刀天子】は次元天子同士である程度関わりがあったらしいが、他の種族でも似たような事例があったのかは気になるところだ。
「ガハハ!!!
特別に【森人】同士で集まるようなことは無かったが、【森人】同士合えばすぐに隠蔽している情報がお互いに筒抜けになるから分かりやすいぞ!!!
ワシがこれまで合ったのはこの前の聖剣次元との戦いにいた【精霊森林の緑女王】と、蛇腹剣次元との戦いにいた【最大森林の裁定王】の2体だけだがな!!!」
聖剣次元との戦いにいた【精霊森林の緑女王】はレイドアナウンスも直接聞いているから【アイシア】のことだと分かるが、蛇腹剣次元との戦いにも【森人】がいたのかよ!?
全く気がつかなかったな……隠蔽が上手すぎるぞ!?
「だが、あくまでもプレイヤーレベルでいる間は戦力として大きく活躍することはなかっただろう!!!
実際、ワシも生産アイテム以外の直接戦闘で大きな功績を上げたことがないからわかるだろう!!!」
……たしかにな。
【ジェーライト=ミューン】戦の時も第二段階の白虎ジェーの姿を拝むこと無く死んでいった記憶がある。
あくまでもプレイヤーの引き立て役が主な役割なのだろう。
聖剣次元の【アイシア】があそこまで戦えていたのは引き立られる側の【ランゼルート】が強すぎて、それを引き立てるためにはそれ相応の力を解放しないとついていくことすら難しかったからかもしれないな……
「普通はそうならないだろうからな!!!
何はともあれ、お前が成長し勝利を数多くおさめたのは相棒であるワシとしても鼻が高い!!!
これからも頑張るのだぞ!!!」
唯一無二の相棒にそう言われたらこれからも負けられないじゃないか!
いいぞ、この先もお前とならどんな困難だって乗り越えてみせるさ!
その代わり、お前もついてこいよ!
そうしてお互いの絆を確かめあった俺は【槌鍛冶士】の喉元に包丁を突き刺して死に戻りさせていったのだった……
やはりこいつの死に際にみせる粒子は俺を恍惚とした表情にさせるほど美しい……
これからもこの光景がずっと続けばいいのにな!
【Bottom Down-Online Now loading……】