972話 【8ターン目】ネタ装備トッププレイヤーたち(挿し絵あり)
「そうさ、かつて深淵の竜を滅ぼしたこの一撃でこの黒い茨たちもろとも君も終わらせてあげよう!!
流石に欠片も残らないように消し飛ばしてしまえば高速再生もされないだろうからね?
スキル発動!【必殺名技】!
ああ聖剣よ……わかっているとも!
共に今度こそ仇敵【包丁戦士】を滅する時!
早く門を開きにいこう!
そしてもう一度お前の力を見せてくれ!
【聖突破魔剣】っっっ!!!!!」
そして、【ランゼルート】は自らが持つ聖剣に語りかけたあと、スキルによって聖剣から神々しく光輝く聖なる光線を発し始めた。
聖剣を突き出すようにして放たれたその一撃は高速再生を繰り返していた俺の黒い茨たちを塵も残さず消し去りながら俺へと向かってきている。
不味い不味い不味い不味い不味いっ!?
流石にあれを迎撃しきれるほどの手札は持ち合わせていないぞ!?
そんな絶体絶命のピンチに陥りパニックになりかけた俺だったが、ふと脳裏に逆転の可能性が浮かび上がった。
……だが、このスピードで【聖突破魔剣】が迫ってきていては動こうにもその前に死んでしまうぞ!?
「【包丁戦士】様は倒させませんわ!
ワタクシが全力で護らせていただきましてよ!
称号【大量生産職人】をセット!クラフトマイスター権限起動しますわよ!
さらにスキル発動!【近所合壁】!」
【Warning!】
【創り上げるのは多くのもの】
【均一物こそ美しい】
【【クラフトマイスター】権限により【近所合壁】の連続錬成!】
【【トランポリン守兵】のチュートリアル武器が連続錬成されます】
ここで俺たちの後方に構えていた【トランポリン守兵】お嬢様が他へのサポートを一切打ち切って俺の防御に全力を費やし始めた。
聖剣から放たれた光線の前には次々とトランポリンが生成されていき、少しずつではあるがその勢いを弱めつつある。
これは防ぎきれるか!?
だが、そんな俺の期待に対して【トランポリン守兵】お嬢様の表情は芳しくなく……
「い、いえ……もう限界でしてよ……
こ、この一撃だけで、ワタクシの、集中力と、スキルに使うエネルギーを、全て、使い果たして、しまいました、わ……」
「残念だけど君の守りでは力不足だよ」
馬鹿な!?
攻撃が直撃していないはずの【トランポリン守兵】お嬢様が死に戻りしていっただとっ!?
空中に生成していたトランポリンが攻撃を受けただけのはずなのに……
まさかあの光線は術者に対してのダメージフィードバック効果があるのか!?
「ちょっwww
防御をガチガチに固めていた【トランポリン守兵】があっさりやられるなんてワロタwww
【包丁戦士】がやられたら負けなんだからオレが護る以外アリエナイwww
それがオレの役割理論ンゴwww」
今度は【ラクヨウ】を相手にしていたはずの【風船飛行士】が俺の前に立ち塞がり壁となりにきた。
……【ラクヨウ】もまだ健在のようだが戦いを放棄して無理矢理捻子込みにきたのだろう。
「ability【銀盃羽化】発動www
さらに……スキル【竜鱗図冊】っ!」
そう叫ぶと、腕に巻いていたシルバーを外し、口に運んだかと思うと、それをごくりと飲み込んだ。
そして、肩から提げていたポシェットの中から巻物のようなものを取り出すと、それを勢いよく広げた。
その巻物が鱗のように分解されたかと思うと、次の瞬間には【風船飛行士】の手元には銀色の杯が握られていた。
そしてその銀の杯で光線を反射しようと試みたのだ!
【風船飛行士】のアビリティは遠距離攻撃を反射操作する効果を持っているからな……
ただ、その操作が及ばない例外もあるようだがこの光線に通用するのか!?
「つ、通用してるがオレではこの光線を反射するキャパシティがないンゴねぇwww
可能な限り反射して相殺してるけどもうじき死ぬンゴwww
あ、後はまか、せ、た……」
「僕の【聖突破魔剣】を反射したところまでは面白かったけど、君の杯は僕の【聖突破魔剣】を収めるには器の量が及ばなかったようだね?」
ちっ、【風船飛行士】もヤラれやがったか……
時間稼ぎはきっちりしてくれたようだがやはり【ランゼルート】の攻撃を止めきることは出来なかったようだ。
【堕枝深淵】を二重に重ねても防げなかったんだから止められなかったとしても誰も文句は言わないだろう。
……むしろ、【聖突破魔剣】の勢いを大幅に弱めたことを考えればこの局面においては俺よりも活躍したと言えるだろう。
「こうなれば、私がこのゲームで培った絆の現れ……生産アイテムの力を借ります!!!
称号【同好氏族の纏め役】をセット!
【クランリーダー権限】の起動!さらにスイッチ!
称号【玄冬の生産職人】をセット!
【クラフトマイスター権限】起動!
【狩人の甲羅籠手】っ!!!
みんなで作り上げたあなたの力を貸してください!!」
【Warning!】
【志を同じくする者たちよ】
【集いて立ち上がれ!】
【【クランリーダー】権限によりクランメンバー召集!】
【【釣竿剣士】のクランメンバー【狩人の甲羅籠手】に宿る【ウー】が召集に応じました】
【Warning!】
【創り上げるのは玄冬に属するもの】
【玄き極寒に属するものこそ美しい】
【【クラフトマイスター】権限によりクランメンバーの連続錬成!】
【【釣竿剣士】のクランメンバー【狩人の甲羅籠手】に宿る【グウ】【ウイ】が連続生成され召集に応じました】
「ジョブ権限の二重行使に分身を生み出すアイテム……中々興味深いね?
でも、それだけで僕の【聖突破魔剣】を止められるとでも?」
「正直厳しいでしょうね……
ですが生産プレイヤーとして、そして散っていった四方トッププレイヤーの一員としても当然ここは退けません!
釣竿一刀流【渦潮】っ!
【ウー】【グウ】【ウイ】も私に続いてください!」
【聖突破魔剣】を止めるべく俺の最後の味方である【釣竿剣士】……とチビ【釣竿剣士】三匹が釣竿をトーチトワリングの要領で回し始め、光線をどんどん切り裂いていっている。
レイドボスの【ジェーライト=ミューン】の極太レーザーさえ千切りにしていた強固な守りの技である。
しかも、それがチビ【釣竿剣士】三匹も同じ技を使っているので四枚の盾となり俺を護っているのだ!
だが……
「い、一部の切断に成功しましたが、自分の身は、守れません、でし、た……」
「くっ、ここまで威力が減退させられるなんて……
流石はあのMVPプレイヤー【師匠】に教えを受けたプレイヤーだね。
だけど【正義】の力を纏った僕の一撃ならこの威力でも【包丁戦士】を滅することが充分可能さ!
さあ、これで終わりだよ!」
とうとう一人になってしまった包丁次元陣営。
このままでは敗北は目前……と誰もが思っていただろう。
いや、誰もがではなかったな!
そう、俺【包丁戦士】はまだ諦めていない!
トッププレイヤーたちの献身により稼ぐことのできた時間で準備は整った!
俺はウインドウ画面に表示されたコマンド選択を素早く終えて仕上げにそのコマンドを大声で叫びながら宣言していった。
『いくぞ!
「ユニーク」コマンド起動!
俺の大一番にはやっぱりお前がいないとな!
現れろっっっっっ、俺の……唯一無二の相棒!!!!!!』
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