966話 【8ターン目】待ち伏せと役割
リソースを使いきった俺たちは再び黄金宮殿へと招き入れられていった。
どうやら聖剣次元は再び「攻撃」コマンドを使用してきたようだ。
これで少なくとも相手の攻撃力が再び俺たち包丁次元に並んだ形になる。
つまり、ここからは一撃一撃が致命傷になると思った方がいいだろう。
そんな風に気を引き締めた俺が転送されてきていた場所は玉座の真上だった。
どうやらここは王の間らしい。
転送されてきて早々に座る場所が用意されていたのでそこに座りながら思案していたわけだが、そろそろ移動するか……
そう思い腰を上げると、同じタイミングで俺の視線の先にあった扉が音を立てて開き始めた。
この気配は……
「あら【包丁戦士】様!
宮殿内では初遭遇ですわね!」
どうやら【トランポリン守兵】お嬢様だったようだ。
地味に初めて味方と遭遇したわけだがこれまでは合流する前に本格戦闘が始まってしまっていたので移動する余裕も、探す余裕もなかったからな!
……むしろ移動しながら戦い続けていた【釣竿剣士】が異常なだけである。
「それには同意ですが、ここに来たのはどうやらワタクシだけではなかったようですわ!」
【トランポリン守兵】お嬢様がそう言いながら扉の向こうにいる人物たちを招き入れてきた。
「なんだよオマエラもいたのかwww」
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!」
おいおい……まさか転送されて早々に包丁次元メンバー全員が一ヶ所に揃ってしまったぞ!?
これまでとは大きくことなる状況に俺は思わず困惑してしまった。
「ユニーク」コマンドが解放されたタイミングからも分かるようにそろそろ最終局面に入りつつあるということなんだろうか?
「ここから出ていくか待ち伏せするか悩むンゴねぇwww
どっちでもこの四人が固まっていればそんなに状況は変わらなさそうだがなwww
こっちも全員揃ってるなら聖剣次元もどうせ全員揃ってるだろwww
ここで戦力を分散させるのはアリエナイwww」
【風船飛行士】の判断としては四人行動という点さえ崩れなければ問題ないとのこと。
「こちらが一人でいる時に聖剣次元の三人に同時攻撃されたらひとたまりもありませんから。
一人を受け持つことは出来ますが、あのレベルの相手に二人以上同時に立ち回るのは【包丁戦士】さんのように対集団戦の心得がないと難しいです。
私は【師匠】との特訓で個人戦は鍛え上げられましたが、それより多い人数を相手にする機会はあまりありませんでしたので……」
俺はプレイヤーキラーだからな、悪役である俺を排除しようとするモブプレイヤーたちを何人も同時に相手にする機会は非常に多かった。
それを見ての【釣竿剣士】の意見だろう。
……集団戦の心得はそこ以外で会得したものだがここで言う必要のないことなので黙っておこう。
「ワタクシとしては動いている最中に攻撃を仕掛けられると守りにくいのでこの場所で迎撃する形にしたいですわ!
広さも視認性を抜群でしてよ!」
確かに入口が一ヶ所であり見晴らしのいいこの王の間であれば待ち構えるにふさわしい場所と言ってもいいかもしれないな!
俺としては包丁という武器を使う関係上狭い場所の方が相手の動きに制限をかけられるのだが、俺以外のメンバーの【釣竿剣士】、【風船飛行士】、【トランポリン守兵】お嬢様はそのような場所では力を発揮しにくくなる。
「釣竿は長さが、トランポリンは面積が問題で、風船はそもそも飛べなくなるからなwww
そもそもオレたち三人がこの黄金宮殿で戦うの向いて無さすぎるンゴねぇww」
ヴッ……それを言われると俺の人選ミスみたいで何も言い返せないな。
特に【風船飛行士】は空があるならともかく、天井が低い場所だと得意の航空戦を行えないので強みを活かしきれていないのも事実だ。
まぁ、【風船飛行士】についてはある程度戦えて頭のキレる頭脳要員として呼んだ面もあるから戦いにくさには目を瞑って欲しいところではある。
「それは呼び出された時に聞いてたからいいけどよwww
もう少しなんとか出来たはずだろwww
何ならオレじゃなくても良かったンゴねぇwww」
そこは諸説ある。
近距離戦に特化するなら【ペグ忍者】や【短剣探険者】、【フランベルジェナイト】もいたし、頭脳担当なら【検証班長】がいる。
特殊な動きをさせるなら【黒杖魔導師】や【骨笛ネクロマンサー】、【バットシーフ】後輩みたいな変わり種もいた。
こいつらを呼んでもきちんと活躍してくれたであろうことは何となく予想できるが、その一方で【風船飛行士】で良かったと思える点もいくつかある。
それはどの役割でもそれなりにこなしてくれているということだ!
「暗に器用貧乏って言われててワロタwww
まあ、呼んだオマエが後悔してないならいいけどよwww」
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