960話 【7ターン目】「攻撃」の恩恵
【7ターン目】
【行動を選択してください】
【使用可能コマンド「攻撃」「自陣強化」「ターン終了」】
【使用不可コマンド「ユニーク」】
【ユニット【包丁戦士】運動能力強化②】
【ユニット【釣竿剣士】運動能力強化②】
【ユニット【風船飛行士】】
【ユニット【トランポリン守兵】】
【スキル【深淵纏縛】【竜鱗図冊】【魚尾砲撃】【近所合壁】】
「あっっっっぶなwww
完全に死ぬ間際だったンゴwww
何でオレばっかり連続であのチート野郎と戦わないといけないんだよwww
あの美女と戦いたかったンゴねぇwww」
俺たちが転送されてきてターンが移り変わった後、すぐさま愚痴を言い始めたのは【風船飛行士】だ。
どうやら今回も【ランゼルート】と戦っていたらしい。
「ワタクシも一緒に戦っておりましたが、随分と苛烈なお方でしたわ!
【風船飛行士】の風船偽竜とワタクシの【近所合壁】の盾を合わせてようやく防戦の構えが取れたくらいでしてよ!
攻勢になるなどもっての他でしたわね……」
【トランポリン守兵】お嬢様も珍しくげっそりした表情で嘆いていた。
それほどこの短時間で集中力を使ったのだろう。
一撃一撃が必殺となる戦場ではタンクの役割を担う者への負担がより大きくなるので、こうなるのは予想できていたものの御愁傷様である。
「私は前のターンで【包丁戦士】さんが戦っていた【ラクヨウ】さんと戦いましたね。
【ペグ忍者】と似て非なる戦い方だったのでその誤差さえ掴めば戦いやすかったですよ!
途中で逃げられましたけど……」
そして【ラクヨウ】と戦っていたのは案の定【釣竿剣士】だったらしい。
【ラクヨウ】を圧倒していたらしいが、一方でこの【釣竿剣士】から逃げ切ったアイツはそれだけで曲者だとわかる。
真っ正面から戦うより、背中を見せて逃げる方が難しいからな……
それで俺と戦う【アイシア】への助っ人に来たんだから大したものだ!
俺からの情報提供は【アイシア】が【緑王顕現権限】【緑王絶対封印】という2つのスキルを使ってきたことだな。
【ランゼルート】は【アイシア】にご執心のようだから一気に2つも専用のスキルを解除したのだろう。
お熱いこった。
「その口ぶりからすると他の連中ならなんとか勝てそうだなwww
オレも【ランゼルート】以外と戦いたスグルwww
なんで毎回ムリゲーを強いられるんだよwww
酷すぎてワロエナイwww」
気持ちはわかるがそうカリカリするな、結局のところ【ランゼルート】を倒さないとこの戦いに勝てないんたから何とかして勝機を見つけ出すしかないだろう!
それに、まだスキルがそこまで解放されていないんだから手のつけようはある。
【ランゼルート】の真の脅威は多彩なスキルを自由自在に操るというプレイヤーのお手本みたいな動きだからな。
「あそこからさらに強くなるのですか……
末恐ろしい殿方ですこと……」
「つまり、同じペースで強化が続けば私たちに勝ち目が無くなるというわけですね。
生産ラインの大きな工房に場末の小さな工房が勝てないのと同じ理論です」
土台からして俺たちとは作りが違うプレイヤーだからな……
NPCというだけあってこの世界に適応しきっているのが俺たちとの違いだろう。
動きに違和感が無さすぎるし。
「ということはワタクシたちはそろそろ決着をつけなければなりませんわね?
これ以上【ランゼルート】様と戦いを続けても消耗戦でワタクシたちが負けると明言できるわけでしてよ!」
「そうなりゃそろそろこっちからも「攻撃」コマンドを使うか?www
全部強化に回して迎撃するのも手だがここからは余ったポイントで差を埋める方が良さそうンゴwww
ルールブックを読み漁って「攻撃」コマンドのメリットも見えてきたことだからなwww
どうりで聖剣次元が「攻撃」コマンドを連発してくるわけだwww」
ん?
どういうことだ?
時間がなくて俺はルールブックの序盤から中盤にかけてしか目を通していないが、俺が見ていない後半部分に「攻撃」コマンドの有用性が書かれていたのだろうか。
「その通りだwww
「攻撃」コマンドにポイントを使うとダメージ倍率に上方補正がかかるらしいwww
この効果は微量みたいだがなwww」
確かに有用だが、微量なら無視できる範囲じゃないか?
それならそのポイントを他に割り振った方が良さそうだからな!
「ところがそういうわけにもいかないンゴwww
「攻撃」コマンドを続けていくとその倍率が徐々に上がっていくらしいwww
最終的には触れるだけで相手が消滅するレベルになるらしいぞwww
怖すぎワロタwww」
うわっ、そんなレベルまで凄いことになるのかよ!?
流石にそうなるまでに猶予はありそうだが、このまま受け身の姿勢でいれば確実に負けるということが分かった。
「攻撃」コマンドは攻撃を仕掛けるだけじゃなくて、攻撃力強化コマンドでもあったというわけだな。
ルールブックを読み込まなかった俺も悪いが、なんという落とし穴を仕込みやがったな!?
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