956話 【5ターン目】集結するトッププレイヤー
……「攻撃」の時間が終わり俺たち三人は黄金宮殿の外に押し出されたわけだが、視界は再びそれぞれの次元の集団を分断するようにしてぼやけている。
「あっぶなwww
死ぬ間際だったじゃねーかよwww
なんだあのMVPプレイヤー……強すぎワロタwww
あんなやつにお前一回勝ったのかよwww」
「正直楽観視し過ぎてましたね……
防戦一方というのも恐れ多いほど戦線がボロボロでした。
生産活動だったら成功率1パーセントのアイテムを作ろうとしている時の心境です。
つまり無理ゲーに近いです、【師匠】が負けるのも頷ける話ですね」
どうやら俺が【ラクヨウ】と戦っている間に、【釣竿剣士】と【風船飛行士】は【ランゼルート】と戦っていたようだ。
御愁傷様……
この短時間の戦闘にも関わらず二人の身体はボロボロで、体力ゲージという概念があれば多く見積もっても半分くらいだろう。
特に【風船飛行士】については既に片足を失っているし、まさに死屍累々だな!
「他人事だからって気楽に言いやがってwww
ウザすぎるンゴねぇwww
あんなやつ相手に俺たちをぶつけようとしてたのかよwww」
「少なくとも現状の戦力でどうにかなるとは思えませんね」
「ただ、時間をかけてもあっちの伸び代もあるからなwww
スキル無しであの強さなのに、スキルを使い始めたらどうなるのか考えたくもないwww
これはワロエナイwww」
えっ、【ランゼルート】はスキルを使ってこなかったのか。
俺が対峙していた【ラクヨウ】は【比翼炎禽】というスキルを使ってきたぞ!
炎の翼をダーツのように飛ばしてくるスキルだ、覚えておけよ?
お前たちがスキルを使ってないのなら情報アドバンテージではこれで優位に立てたはずだ。
俺もスキルは一切使わず戦ってたからな。
「それは【包丁戦士】さん的に不味くないですか?
弱点属性じゃないですか……」
まぁ、確かに弱点だが……
それ以上に厄介な【ランゼルート】という存在がいるので霞んで見えるのだ。
「せめて守りに徹してくれるプレイヤーが居てくれたら楽なんだがなwww
あいつ呼ぼうずwww
あれだけ猛攻を仕掛けてくる相手なら間違いなく役立つだろwww」
守りに徹してくれるプレイヤーか。
数人思いついたが、【風船飛行士】がそこまで推すプレイヤーは一人しか思いつかない。
それにこの三人が集まっているんだから後一人欠けた状態というのも味気ないだろう。
よしっ、「自陣強化」からの「召喚」!
現れよ、【トランポリン守兵】!
ついでに「自陣強化」……「スキル凍結解除」!
【近所合壁】を使えるようにしてくれ!
俺は【トランポリン守兵】お嬢様を新たに呼び出した。
東のトッププレイヤー【風船飛行士】、北のトッププレイヤー【釣竿剣士】、西のトッププレイヤー【包丁戦士】がここに揃っているからな!
包丁次元の総力を結集させるという意味でも南のトッププレイヤーである【トランポリン守兵】お嬢様を呼び出すのは【風船飛行士】の言葉というのは癪だが合理的だ。
「ワタクシを呼んでくださいましたのね!
呼んでいただいたからにはきっちり皆さま方を守らせていただきますわ!」
お前の得意スキル【近所合壁】も使えるようにしておいたから存分に使い回してほしい。
一切の遠慮はいらないからな!
「オレも片足失ってるしこれ以上ダメージは受けたくないンゴねぇwww」
「あらっ、本当ですこと……っ!
【風船飛行士】様のお痛わしい姿はワタクシがこれ以上悪化させませんわ!」
「頼りになりますね」
うんうん、これぞパーティーって感じだな。
タンクの【トランポリン守兵】お嬢様に、オールラウンダーの【釣竿剣士】、支援後衛の【風船飛行士】、そして前衛アタッカーの俺……【包丁戦士】。
実にいい!
包丁次元基準だとこれ以上ない豪華な四人の集まりだなぁ。
「それで残り1ポイントはどうするよwww
このターンはもう味方を呼べないぞwww」
「私としてはもう一回今度はこっちから「攻撃」するのもアリだと思います」
「ワタクシはスキルを増やしてみたいですわね。
選択肢を増やすのもいいでしてよ?」
様々な意見が出てきたが、ここは一度も使っていないコマンドを使ってみたい。
「それならスペック強化コマンドのどれかだなwww
無難に運動能力強化しようずwww」
……そういうことになった。
というわけで、「自陣強化」からの「運動能力強化」!
対象は【包丁戦士】だ!
そうしてリソースを使いきったのでターンが終わり、俺たちの視界が再び明瞭なものとなっていく。
聖剣次元陣営はここに来てさらにメンバーを補充してきたようだ。
【ラクヨウ】が若干負傷しているのを懸念したのだろう。
その新たに現れたのは薄緑色のヴェールをかけた色白の肌、薄黄色の髪、スラッと伸びた体型の女だった。
服も軽い服装で前衛プレイヤーでは無さそうで、薄緑色のローブに黄色の模様が施されているものだ。
そして、手に握られているのは長い杖だ。
杖の先に緑色の宝石がはめ込まれており、そこを中心にしっかりとした装飾が施されていることから、ステッキというよりは、魔術を使うためのものに見える。
こいつは……【アイシア】!
聖剣次元の森人の【上位権限】レイドボスだ!
「今回はお互いにメンバーを増やした形になったようだね。
さっきの戦いで自陣の不足している点を見つけたからだろうけど、そっちの風船君の負傷のことを考えると僕たちの方が有利なままさ!」
勝手に言ってろ!
こっちもお前対策に新たなメンバーを呼んだんだから次の戦いでは圧倒してやるよ!
「ふっ、それは楽しみにしておこうじゃないか!」
ちっ、余裕綽々だな……
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