953話 【3ターン目】秘技開帳
【3ターン目】
【行動を選択してください】
【使用可能コマンド「自陣強化」「ターン終了」】
【使用不可コマンド「攻撃」「ユニーク」】
【ユニット【包丁戦士】】
【ユニット【釣竿剣士】】
【ユニット【風船飛行士】】
また新たなターンが始まり俺と【ランゼルート】を隔てるようにしてぼやかしが入っていく。
これからまたお互いに相手の手の内を読み切り戦力を拡大していくことになるだろう。
「相手は1人増えていましたね。
【ペグ忍者】のような忍者スタイルのプレイヤーでしょうか?」
「あいつみたいなやつが相手にいるなら厄介すぎるンゴねぇwww」
【釣竿剣士】と【風船飛行士】が相手について予測しているが、俺が聞いている【ラクヨウ】というプレイヤーは手裏剣と短刀を使い、スキルでは【燃焼】の力を得意としている鳥獣人プレイヤーという触れ込みだ。
一応【ペグ忍者】が単騎突破したみたいだが、スキル込みの実力はかなり拮抗していたらしいぞ!
ただ、その時はスキルに頼った戦法だったみたいだから素の戦闘技術はどうなんだろうな……
「マジかよwww
相手したく無さすぎるンゴねぇwww」
「それならこのまま状況が変わらなければ私が相手をしましょうか?
【ペグ忍者】のような立体的な機動力を持つ相手なら慣れていますしちょうどいいですよ」
そうしてもらえると助かるな。
最悪MVPプレイヤーである【ランゼルート】さえ倒せば勝ちだから時間稼ぎをしてもらえるだけでも助かるぞ!
「ってことはオレは空から遊撃だなwww
命の危険が少なそうで嬉しスグルwww」
特殊アタッカーとして常に上空に滞在できる【風船飛行士】は他の誰にも代えがたいポジションを担当できる。
与えられるダメージは少量だろうが、常に警戒しないといけない相手が死角にいるというのは相手に圧迫感を与え続けることが出来るはずだ!
……という方針が決まったが、これで3ターン目。
このターンからは3ポイントずつのリソースが配布されていくのでそろそろ今いるユニットたちの強化に移りたいところだ。
……ちなみにだが、3ターン目だけはやりたいことを既に決めてあった。
「生産プレイヤーなら当然ですね。
中間目標というのも生産計画では重要になってきますから!」
「それで何を選ぶんだよwww
最初から決めてたってことはオレたちの強化じゃなくてお前自身の強化ってことだろうがwww
本当なら共通して解除できる【竜鱗図冊】にして欲しいが……w
まぁ、お前の強化ならスペックを上げまくるかコレのどっちかの解除以外アリエナイwww」
そう言ってウインドウ画面を操作した【風船飛行士】が見せてきたのは俺が考えていた通りのスキルだった。
1つは【深淵顕現権限】、もう1つは【深淵纏縛】である。
どっちも俺が多用する地力を底上げする変身スキルだが、使用リソースと効力が全く違う。
【深淵顕現権限】はリソースを2ポイント、【深淵纏縛】は3ポイント必要とするのでどこで折り合いをつけるのかで話は変わってくるだろう。
幸い、ここは深淵奈落なのでデメリットを無視できるためそこは気にする必要がないのは大きいな!
あとは1ポイントをケチるかどうかだが、ここはあえて全て使いきる勢いでいかせてもらうぞ!
「自陣強化」!そして「スキル凍結解除」!
我が身に再び宿れ!【深淵纏縛】!
俺がコマンド選択を終えるとウインドウ画面から光が溢れ、俺の身体にその光が宿っていく。
実感はないが、これで【深淵纏縛】が使えるようになったのだろう。
「これで相手の疑心暗鬼を誘えるなwww
見た目でこっちの様子が変わってないと戦力の変化が分からないンゴねwww」
なるほど、そういう考え方もあるんだな。
俺は単純に戦力の拡充をしたかっただけなんだが、言われてみると1ターン目の聖剣次元の動きでかき乱されたので【風船飛行士】の言うことはよーく分かる。
頭脳担当として呼んだだけあって多方面からの視点で物事を考えてくれているのはありがたい。
「ターン終了」後の【ランゼルート】とのトークタイムで話す内容を誘導できるようになるのでこういう意見は素直に助かるぞ!
というわけでさっそく「ターン終了」ボタンを押していく。
【深淵纏縛】の解除でポイントを使いきってしまったのでこれ以上やることがないからな!
そうして俺と【ランゼルート】の視界が再び明瞭になっていきお互いの姿が見えるようになってきた。
……あっちは1ターン目同様、今回も目に見える変化はないようだ。
「そういう君たちの方も今回は動きがなかったようだね?
それとも他の強化でもしたのかい?」
さーてどうだかな。
案外お前たちと一緒の選択をしているかもしれないぞ?
俺は口からでまかせで、絶対にあり得ないであろうことを言い触らしていく。
【深淵纏縛】のスキル凍結解除なんて聖剣次元が最もやりそうにないことだから一緒の選択なんてあり得ないだろう。
「……ふむ、なるほど。
そう簡単には教えてくれないというわけだね?」
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
生産プレイヤーが自分の情報を簡単に漏洩するなんて甘い考えは捨てた方がいいですよ」
【釣竿剣士】の生産プレイヤー理論、今回は理解できるんだがわざわざ生産プレイヤーということを持ち出さなくても良かったのでは? ……と思わなくもなかった。
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