948話 攻撃的なメル友
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【菜刀天子】と喋ったしその流れで今日は【ミューン】と喋ってみよう。
最近出歩いていることが多いから場所を特定するのが面倒だが……
……と俺が頭を悩ませていると俺が座っていた玉座の裏から【菜刀天子】が姿を現してきた。
これが【釣竿剣士】ほどの隠密性があれば驚いたが、今回は平常心を保ったまま気づくことが出来た。
「いや、今の発言は流石に低脳が過ぎますよ……
劣化天子には連絡手段があるではないですか!
全く、これだから底辺種族上がりは頭が回りませんね……」
連絡手段……?
包丁次元の連絡手段といえば【ジェーライト=ミューン】を倒したときに手に入れた【渡月伝心】しかないが、あれはフレンドにしかメッセージを送れない……は……ずっ!!??
そうだ、何を考えていたんだ俺は!?
【ミューン】はフレンドリストの別枠……一心同体リストに登録されているじゃないか!
名義は【ジェーライト=ミューン】だが、【ミューン】が内包されているから行けるかもしれない。
何で一回も試してなかったんだ……もう947話だぞ。
そろそろ1000話も到達するし、【渡月伝心】を手に入れてから約900話経っているのに【菜刀天子】や【槌鍛冶士】相手にしかメッセージのやり取りをまともにやってなかったな!
「そういうことです。
【ミューン】は偉大なる私の配下ですから無碍にすることないようにすべきでしょう。
これは不敬ともとれますが、劣化天子ならばいつものことなので不問にしておきましょう。
私は寛大ですからね」
そんな上から目線の物言いの【菜刀天子】を横目に俺はスキルを発動していく。
スキル発動!【渡月伝心】!
身体の硬直と共に俺の思考がメッセージ化されて【ミューン】へと粒子がひとりでに向かっていく。
内容は『イマドコにいる?』というシンプルなものを飛ばしておいた。
するとすぐに返信が来て俺は紫色の円環粒子によって千切りにされながらそのメッセージを読むこととなった。
メッセージ粒子と攻撃用の粒子を併せて放てるのは【伝播】の力に精通した【ミューン】だからだろう。
もちろん、死に戻りである。
はい、復活!
【ミューン】から送られてきたメッセージは……
『……不允许假品っ!
にせもの、きらい……【兎月伝心】か【虎月伝心】いがいは、ほうふくする!
……ちなみに、ばしょは、れいはいじょ』
というものだった。
そういえば【ミューン】はマイナーチューンしたスキルである【渡月伝心】をこの上無く嫌っていたんだった……
すっかり忘れてたぞ!
だから当初人型【ミューン】の正体が分かってもメッセージを送らなかったのだろうが、今はすっかり忘れてたのでうっかりやらかしてしまったな。
やらなかったのには理由があったというわけだ。
ただ、記憶というものは使わなければ風化していくので、【ミューン】と会う機会が減っているので失念する原因となったわけだ。
そんな過ぎたことに対する言い訳は置いておいて、【ミューン】が礼拝所にいると分かったんだからさっさと向かうとしようじゃないか!
「……まってた。
それで、なにか、よう?」
若干口足らずな喋り方で俺に口を開いたのは無表情チャイナ娘の【ミューン】だ。
特にこれといった用事はないが、【ミューン】と喋りたくてな?
最近調子はどんな感じだ?
闘技場での噂はちょくちょく耳に挟むがあくまで噂止まりだから直接聞かせてくれ。
「とうぎじょうで、さいきん、底辺種族いがいもみるようになった。
……これ、【ぷれいやー】のつよみ、きょうみぶかい」
どうやら戦闘狂プレイヤーたちが続々と種族転生を成し遂げつつあるようだ。
ハードルが低そうなもので俺が認知しているものは竜人だが【ミューン】が相手にしているのもその辺だろうか?
「たしかに、【おめがんど】ににてる種族も、おおい。
【おめがんど】もつよいから、きもちは、わかる。
わたしも、むかしみたいに【おめがんど】とたたかいたい!!!
……でも、獣人もたまにみるようになった。
これでも、かんしんしてる」
俺の脳裏に戦いをせがまれて苦笑いしている【オメガンド】の姿が浮かび上がったが、聖獣たちが集まれる時代には同僚に戦いをせがんでいたのだろう。
戦闘狂と呼ばれるだけあって身内にも容赦なさそうだ……
いつか聖獣レイドボスたち同士の戦いというのも見てみたいものだ。
「わたしも、そのきかいを、まちのぞんでる……
……聖獣たちはみんな、きょうてき!
だから、だれがあいてでも、まんぞくできそう!」
【ミューン】なら満足出来るだろうな……
そしてレイドボスとしての身体と格を持った者同士でも、プレイヤーと同じ身体同士でも見応えのあるものになるに違いない。
俺だけではなく、他のプレイヤーたちの戦いの見本になるだろう!
なるほど……
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