947話 羅アメン
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【菜刀天子】とゆっくり話しをするとするか!
【特異次元????離宮】
というわけでやって来ました【菜刀天子】がいる謎の場所!
ここにはじめて入ったときは高難易度ダンジョンである【誓言の歪曲迷宮】を経由したのだが、今は天子王宮の王の間から直接ワープ出来るようになっているのだ!
……ただし、一度ここに来たことがあるやつしかワープ出来ないみたいだけどな。
「また懲りずに私の前に顔を出すとは勇気も行きすぎれば蛮勇……愚者の行いですね。
むざむざと私に倒されに来たのでしょうか?
全く、これだから劣化天子の行動は読めないのですよ……」
座りながら俺を見下ろし、上から目線の物言いをするのは相変わらずだな。
背が縮んでも中身は一緒というわけだ。
それにしても、ここの装飾とか雑貨品、家具が前よりも増えてないか?
前回来た時よりもより一層豪華になっているような気がするんだが……
「それは公式イベントを開催した時に発生した私への報酬ですね。
次元天子だった時はプレイヤーを導くことが私の使命でしたからこのような物品を得ることはありませんでしたが、今の私は代理でイベントを開催している形です。
天子王宮の宝物庫から幾つか拝借したのと、ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】から与えられた正当な対価としてこれらを得ました」
あー、なるほどね。
外部委託形式だから報酬が発生するのか……
代わりに俺の宝物庫の中身が横流しされてしまうデメリットがあるみたいだが、大規模な公式イベントを開き運営することの手間を考えれば悪くない選択肢だと思う。
「いや、私の宝物庫なのですけどね……
劣化天子が簒奪したので私の手から離れているだけですよ」
簒奪したとは人聞きの悪い……
レイドバトルで正式に手に入れた報酬と言ってもらいたいところだ!
俺たちプレイヤーがレイドバトルで手に入れたものは他の誰でもない、そのプレイヤーの所有物になるはずだからな。
アイテムとか、スキルとか、称号とか、深淵細胞とか……
「最後の深淵細胞については否定したいところですが……
悔しいですが、その他は劣化天子の主張を認めましょう。
冒険者たちは己の手でミチを切り拓きその道程で得たものを糧に新たなミチを切り拓いていくものですからね……
私の役割はその過程で先導者となり補助していくものでしたし、他の次元天子たちもそうでしょう。
……あの【ランゼルート】という底辺種族の勇者は存在からしてこのゲームの趣旨を破綻させていましたけど」
聖剣次元のMVPプレイヤー【ランゼルート】か……
NPCかつ、俺たちプレイヤーの初期種族である底辺種族という希少な存在の【上位権限】レイドボスだったな。
初期種族が底辺種族である場合の特権である【プレイヤー】を保有しているが故に【次元天子】を獲得してしまい、二重で【上位権限】を持ってしまっているみたいだったがあの力はとても驚異的なものだった……
【菜刀天子】と【ガルザヴォーク】そして俺が共闘してようやく打倒できたくらいだから、単騎で太刀打ちできるやつがいるのかすら怪しいレベルである。
【菜刀天子】が言いたいのは、そんなNPCが次元天子を独占し続けているのはゲームとしてよろしくないということだろう。
「私は倒されましたが、理想系は譲位による次元天子の世代交代です。
その方が色々と都合が良かったのですが、私の理想はプレイヤーたちには理解されませんでしたからね……
【千年王国計画】はプレイヤーたちに庇護と安寧をもたらす予定でしたが、包丁次元のプレイヤーたちはそれよりも刺激と戦いを求めました。
その考えの違いこそが私が敗北した理由でしょう」
システム内時間を操作し時間を千年スキップさせるという恐ろしい計画……それが【千年王国計画】だった。
俺たちは【菜刀天子】を討伐することでそれを防いだが、【菜刀天子】は自らの善意によってその計画を実行しようとしていた。
【菜刀天子】は庇護と安寧とか言っているが、実のところ停滞と空虚感をプレイヤーたちに与えるだけだったと思う。
レイドボスが死滅した包丁次元なんて麺が入っていないラーメンのようなものだからな!
その例えはもう少し何とかなりませんでしたか……?
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