943話 綱引き
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【骨笛ネクロマンサー】の【深淵顕現権限】習熟が課題として挙がってきた。
【コラテラルダメージ】のクランメンバーの戦力が整うことで俺に損はないので付き合ってやる所存だ。
……そもそも【コラテラルダメージ】後発加入組には定期的に戦闘指南をしているのでそれの延長だと思えば特に変わりがないとも言えるが、今回はみっちりマンツーマンでの指導の予定だ!
というわけでやって来ました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア!
【深淵顕現権限】を最高状態で行使できる深淵奈落でやってもよかったんだが、それだと実際に他の場所での戦闘との感覚の差が生まれてしまうのだ!
俺のように【深淵顕現権限】を多用しているならともかく使用頻度が少ない【骨笛ネクロマンサー】がやる訓練にしては今後のことを考えると毒にしかならないので避けたのだ。
「ふひひっ、なんであてぃしも深淵奈落に入れるのにここでやるのかと思ってましたよぉぉ……
その理由なら合理的で納得できますねぇぇ……」
それと人気が少ないエリアということもある。
手札が見られる可能性が低ければ低いほどいいしな。
……まあいい、とりあえずスキルの起動からやるか。
そんなわけで事前に呼んでおいた【ハリネズミ】たちを近くに呼び寄せる。
深淵獣たちと遊んでいたようだが、俺が声をかけたらすぐに切り上げて来てくれたのは俺への恩義が未だ比重が重いからだろう。
「それではいきますよぉぉ……
スキル発動!【深淵顕現権限Φ】ですよぉぉ……!」
【骨笛ネクロマンサー】は【ハリネズミ】の一人を生け贄に捧げて身体を深淵の黒い霧で作り替えていった。
そして【骨笛ネクロマンサー】は尻尾のような突起を身体に生み出したのだった。
ちょっと触ってみてもいいか?
……と聞きつつも返事を待たずして【骨笛ネクロマンサー】の突起尻尾を触れてみる。
すると……
「あんっ、ふひっ、そこっ、敏感なんですよぉぉ……」
【骨笛ネクロマンサー】は身を悶えさせながら嬌声を上げてしまったようだ。
突発的な外部からの刺激にはあまり強くなさそうだな。
だが敏感ということは細かい操作に向いているということの裏返しである。
つまり、蜘蛛糸を精密操作するにはうってつけな器官だろう。
そんな考察をしながら【骨笛ネクロマンサー】の突起尻尾を触り続けていると刺激に耐えられなくなったのか、ついには足をガクガクさせて地面にヘタリ込んでしまった。
「ふひひひひひひひ……
【包丁戦士】さんの攻めは激しいというか容赦がないですねぇぇ……
ボマードさんの気持ちが少しだけ分かりましたよぉぉ……」
いや、それは分からなくていいぞ!
というか分からないでくれ!
頭お花畑がこれ以上増えても困るだけだからな……
さて、次は糸を見せてもらおうか。
【ファイヌル】のスキル【儡蜘蛛糸】は使えないって話だったから普通の蜘蛛糸だろうけど、俺に向けて飛ばしてみろ。
「いきますよぉぉ……!」
そうして放たれた蜘蛛糸が俺の右腕を絡めとっていく。
これで蜘蛛糸を通して俺と【骨笛ネクロマンサー】が繋がっている状態となったわけだ。
なのでまずは試しに蜘蛛糸を思いっきり引っ張ってみる。
「わわわっ!?」
【骨笛ネクロマンサー】は地面を踏みしめて堪えているが、綱引きのように純粋な力比べでお互いが張り合う形となった。
双方から引っ張っても千切れる気配の無い蜘蛛糸の強度には感心したが、【骨笛ネクロマンサー】にこれは使いこなせるだろうか……
「【ペグ忍者】さんならもっと使いこなせるでしょうねぇぇ……
普段から使っているワイヤーと似たような感じで使えますしぃぃ……」
たしかにあいつなら数々の活用方法を生み出して使いこなすだろう。
だが【骨笛ネクロマンサー】にあそこまでアクロバティックな動きは出来ないし、俺がそれを求めることはしない。
この蜘蛛糸は【骨笛ネクロマンサー】に合った別の方法で活かしていく他無いだろう。
無理に運用すればただの下策だからな!
「中々悩ましいですねぇぇ……
これは時間がかかりそうですよぉぉ……」
そう叫びながら頭を抱え込む【骨笛ネクロマンサー】だった……
……まあ、がんばれ!
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