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942話 信頼と実績の修行

 【骨笛ネクロマンサー】は戻ってきたが殺した張本人である【ファイヌル】からは戦闘の意思が感じられなくなっていた。



 「ふひひっ、そうなんですよぉぉ……

 あの修行は一日一回しかやらせてくれないんですぅぅ……」


 デイリークエストってわけだな?

 MMOには昔から実装されているが、基本的にはプレイヤーにノルマを課してゲームから離れにくくするためのものである。

 しかし、こんな人気のない隠しエリアにデイリークエストなんて設定しても需要が無さ過ぎるぞ!

 【骨笛ネクロマンサー】がいなかったらデイリーどころか年単位で受注するプレイヤーが居なかったと考えると、【ファイヌル】も相当悲しい奴だな……



 【……】


 ちょっとショック受けてるじゃん。

 何か俺が悪いことしてみたいで……興奮するな!



 「ふひひっ、そこで興奮する【包丁戦士】さんはやはり異端ですねぇぇ……

 あてぃしのこと言えないですよぉぉ!」


 【骨笛ネクロマンサー】はここぞとばかりに俺を異端認定しようとしてくるが、その同調圧力には屈しないぞ!!

 ショックを受けているやつがいれば気分が良くなるのは同然だろう?


 

 「……これ以上続けても千日手になりそうなので、そういうことにしておきましょうかぁぁ。

 それで、さっきの修行を見て【包丁戦士】さんはどう思いましたかぁぁ?」


 首を傾げながら俺に問いかけてきた【骨笛ネクロマンサー】だが、修行をつけてくれている【ファイヌル】が目の前にいるのにここで言わないといけないのか?

 それなら俺じゃなくて直接あいつに聞いても良くないか?



 「ふひひっ、【ファイヌル】さんの感覚はいまいち分かりにくいんですよねぇぇ……

 レイドボス視点なので条件と合致しないアドバイスが多いんですよぉぉ……」


 強きものは弱きものの心が分からないわけだ。

 そもそもの出力が違うんだから当然と言えば当然だが、【骨笛ネクロマンサー】が求めるようなものはより近い境遇の存在からしか得られないだろう。

 ……だから俺が抜擢されたわけか。



 「そういうことですぅぅ……」


 そういうことなら……

 まず思ったのはお前自身の攻撃手段って何があるんだ?

 基本的に【堕音深笛】のサポートと【粉骨再身】の骸骨兵操作の2パターンしか見たこと無く【骨笛ネクロマンサー】本人が直接攻撃している様子は一度も見たことがないかもしれない。

 良くも悪くも典型的な【テイマー】の戦い方だが、それに囚われすぎているように思えるぞ!



 「ああっ、さっき【ファイヌル】さんが言っていたのはそのことだったんですねぇぇ……?

 確かに言われてみるとパターンが少ないですねぇぇ……」


 そう、【骨笛ネクロマンサー】はたしかに有能だしそれなりに強いプレイヤーだがパターンさえ読めてしまえばハメ勝ちできるほど行動パターンが少ないのだ!

 


 【そのために深淵細胞と【深淵顕現権限】を渡したのでござるが、あまり使われていないのでござる……】


 「ふひひっ、【ファイヌル】さんのことが外に漏れるのを極力防ぐためですよぉぉ……」


 なんという配慮の徹底っぷり……

 その心構え自体は尊いものだと認めてやろう。


 ……だが、ここにいる他のプレイヤーって俺くらいしかいないじゃん!

 何に配慮していたんだよ。



 「ふひひっ、癖でスキルを発動しないようにあまり使わないようにしていたんですよぉぉ……

 あてぃしが【ファイヌル】さんと繋がっていることが知られたくなかったですからねぇぇ……」


 とはいいつつも、前に【ペグ忍者】相手に見せてたよな。

 どういう心境の変化だ?

 【検証班】の秘密兵器である【ペグ忍者】に見せるというのは、そのトップである【検証班長】にも情報が伝わることになる。

 そのリスクは計り知れないものと分かっていたはずだ。



 「それは……」

 【それは拙者が指示したでござるよ!】


 言いにくそうにしていた【骨笛ネクロマンサー】に代わって【ファイヌル】が語り始めた。

 何やら事情があるんだろうか?



 「深淵の力に侵された聖獣を倒すことでプレイヤーたちがより深淵に染まっていくことをボスが望んでいたでござるからな……

 【プシーナク】討伐作戦を必ず成功させるために許可したのでござる!

 ボスの野望と拙者の隠れ家……どっちが重要かは明白でござるよ!」


 自身の身の安全よりも上司の望みを叶えたいという部下の鑑……これはルル様がこの【ファイヌル】を忠臣と例えるのも頷けるものである。

 これほどの忠臣がいるルル様と、部下たちからあまり信頼を勝ち取れていなかった【菜刀天子】とでは種族としての結束力が違うな!

 だからこそ種族としての相性がすこぶる悪くとも深淵種族が聖獣と渡り合えていたに違いない。



 【何はともあれ、手段は数あれども手っ取り早く拙者の修行をクリアしたいのであれば【深淵顕現権限】の習熟に努めることが一番の近道でござるよ!】


 そういうことになった。







 全てのプレイヤーが【包丁戦士】ほど【深淵顕現権限】を使いこなせるわけではないからのぅ……

 深淵種族の人格がプレイヤーに宿れば話は変わるのだが、こやつは深淵細胞のデメリットを別方面で受けているようだな。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり包丁戦士は特殊個体だった? (今更)
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