939話 謎ギミック
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【骨笛ネクロマンサー】と一緒に何処かに行くぞ!
何処に行くのかすら教えてもらっていないので『何処かに行く』としか言いようがないのだ。
ユニーククエストの縛りというのなら仕方のない話だが、何とも微妙な気持ちにさせられるな……
というわけでやって来ました岩山エリア……堅牢剣山ソイングレストにある洞穴!
床一面に骨が散らかっている惨状が繰り広げられている不気味な洞穴であるが、ここの主はおっかないモンスターではなくプレイヤーの【骨笛ネクロマンサー】だ。
全く、いい趣味してるよな……(皮肉)
「ふひひっ、それは【包丁戦士】さんも同じことだと思いますけどねぇぇ……?
プレイヤーキルも相当な好き者しかやらないですよぉぉ……」
ぐぬぬ、否定は出来ない……
好んで他人から嫌われる行為をするようなプレイヤーは包丁次元であんまり見ないからな!
【検証班長】曰く、俺が悪名高くなってしまって他が台頭してこない影響もあるらしいがプレイヤー間の治安はさほど悪くないらしい。
反面教師、必要悪……言い方は色々あるが俺という共通の敵がいることによって歯止めが利いているのだろう。
「ふひひっ、おしゃべりもいいですけどそろそろ行きましょうかぁぁ……
時間は生者に与えられた有限な資源ですからねぇぇ……」
死者と常に向き合っている【骨笛ネクロマンサー】が言うと説得力のある表現だな……
骨に興味があるのは物質的な意味合いだけではなく、さらに奥まで踏み込んだところも含めてというわけだな。
【骨笛ネクロマンサー】の趣味嗜好について想いを馳せながら後ろをついて歩いていくと、そこは新緑都市アネイブルと堅牢剣山ソイングレストの間の場所……つまり南西に位置する場所だった。
俺も何度か訪れたことはあるのだが、特に何もない平凡なミチが続いているところでしかないはずだ。
初期ログイン地点である新緑都市アネイブルの近くにあった場所なので俺以外にも多くのプレイヤーが探索していたが、やはり俺と同じように変わったものなんて何もないと結論がついていた。
そんなところに【骨笛ネクロマンサー】が何の用事だろうか……?
俺がそんな疑問を頭に浮かべつつ怪訝な表情をしていると【骨笛ネクロマンサー】がふと語り始めた。
「ふひひっ、【包丁戦士】さんも此処のことは知らなかったんですねぇぇ!
実はここに隠しエリアがあるんですよぉぉ……」
な、何だって!?
そんなエリアがここにあるっていうのか!?
まさかの爆弾発言である。
【検証班長】も話題にはしていなかったし、掲示板でも一ミリたりともそんなところがあるなんて書き込みを見たことがないから【骨笛ネクロマンサー】以外に知ってるやつなんて居ないんじゃないだろうか……
でも、俺の目の前に広がっている場所は平凡な場所にしか見えないぞ?
「ふひひっ、ここにただ立っているだけだとそうなりますよねぇぇ……
でもきちんと仕掛けがあるんですよぉぉ!」
【骨笛ネクロマンサー】はそう言うと持ってきていたカゴに入ったフルーツ詰め合わせセットを平らな岩の上に置いていた。
珍しくこんなものを持っていたからピクニックでもするのかと思っていたんだが、どうやら違うらしい。
岩の上に置かれたフルーツ詰め合わせセットは次の瞬間、何かに引っ張られるようにして宙を舞い始めたのだ!
「さあ、追いかけますよぉぉ……」
えぇ……
仕掛けっていうからもう少し謎解きみたいなことを想像してたのに追いかけっこかよ!?
……とぼやきつつも【骨笛ネクロマンサー】の後ろを追走していくのだった。
そうしてついていくと俺の目の前には見たことがない光景が広がっていた。
……これは和風の城だな?
これまで洋風とかファンタジーチックなエリアばかりだったが、ここに来て和風……しかも城とはな。
だが、こんなにデカイ城が堂々と建っているのに俺を含め誰も発見できなかったのはおかしくないか?
物陰に隠れているわけでもないので物理的に発見しやすいようになっているはずだ。
「ふひひっ、それがここの面白いところなんですよぉぉ……
でも驚くことはまだまだあるので気を確かに持ってくださいねぇぇ……?」
また悪寒が……
どうせ劣化天子が余計なことをしようとしているのでしょう……
やれやれです。
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