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930/2204

930話 ブリーダーの馬

 【Raid Battle!】


 【包丁戦士】


 【包丁を冠する君主】


【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】

【サブ】ー【次元天子】【上位権限】



 【聖獣を担うが故に】


 【深淵へ誘い】


 【聖邪の境界を流転させる】


 【会うは別れの始め】


 【合わせ物は離れ物】


 【産声は死の始まり】


 【この世の栄誉は去ってゆく】


 【故に永遠なるものなど存在しない】


 【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】


 【ああ……この世は無情である】




 【ワールドアナウンス】


 【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】


 【レイドバトルを開始します】




 はい、今日も元気にログイン!

 今日は無限湖沼ルルラシアに行ってみようと思う。

 野放しにされている深淵獣たちがどうなっているのか気になるしな!








 というわけでやって来ました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア!

 そこでは珍しくプレイヤーキラーである俺以外のプレイヤーたちがドンパチを起こしていた。



 「拙者【ブリーダー】侍。

 深淵獣を従え一網打尽にするで候!」


 ……あれは【ハリネズミ】のうちの一人の侍モブだな。

 珍しくプレイヤーキラーを見たと思ったら身内だったらしい。

 だが、あの侍モブが俺がいない時でも暴れていると知らなかったな。

 

 そんな侍モブだがチュートリアル武器の日本刀を片手に深淵獣に騎乗して縦横無地に駆け巡る戦闘スタイルのようだ。

 ……あの深淵獣は初めて見るが馬と似て非なるものだな?

 おそらく前に深淵奈落にボマードちゃんと【骨笛ネクロマンサー】を連れていくときにルル様に奉納した【失伝秘具】ー【地這連丮】の影響だろう。

 【フランベルジェナイト】からカツアゲしたものだが、あれで四足歩行する深淵獣が生まれるきっかけになったわけだ。



 「こいつは最近噂のジョブ【ブリーダー】に就いてるぞ!?

 深淵獣を操ってやがる!」


 「掲示板で噂になってたやつか……」


 「侍に馬……武将のつもり?」


 侍モブと対峙するプレイヤーたちは口々に分析した内容を伝え合いながら深淵獣の攻撃を防いでいる。

 野生の深淵獣と違って、侍モブの従えている馬の深淵獣……以下深淵馬は速さは並みのようだが身体の強靱さに優れているようだ。


 ちなみに【ブリーダー】というジョブの名前は把握していなかったが、深淵獣を操れるジョブになれるように教唆したのは俺だ!

 その成果が実ったようでなによりである。


 そんな深淵馬は体当たりでプレイヤーたちにダメージを与えながらそのまま通り抜けていく……という単調ながら対応させにくい戦術を取っているようだ。



 「拙者戦国武将好き好き侍。

 せっかく馬を手に入れたので活用してみたで候!

 拙者の馬さばき、いかがでござるか!」


 「くっ、地味にウザイ……」

 

 「誰も死んでないけどダメージが蓄積されてってるのは鬱陶しいな!」


 「こうなったら……スキル発動!【渦炎炭鳥】!」


 

 深淵馬による攻撃に痺れを切らしたジョブ【メイジ】のプレイヤーは、赤色魔法陣から火の玉を生み出して飛ばし始めた。

 深淵馬がいくら速くても急に軌道を変えることが出来ないため、そのまま馬上にいた侍モブに直撃していったようだ!


 侍モブは特段戦闘力が高いプレイヤーというわけでもないので深淵馬から落とされてしまえば、多人数を同時に相手取ることは不可能だろう。

 それを自分でも理解しているのか、侍モブは悔しそうな表情を浮かべている。

 

 数発のスキルで勝敗がついてしまうのは情けない……と思いたくなるが、そもそも侍モブは集団を一人で相手にしているのでこうなるのは自明の理である。

 対多数プレイヤー戦が得意な俺ならともかく、一般的プレイヤーは普通こんなものだ!



 「最期に言い残すことはあるか?

 侍ロールプレイしてるっぽいし最期に情けをかけてやるよ」


 プレイヤーキルを仕掛けられたのにも関わらずモブプレイヤーの一人が侍モブに問いかけてきた。

 優しいやつだが、甘いな。

 俺が侍モブだったらこうやって相手が近寄ってきた時に【魚尾砲撃】を使うなどして相手諸とも爆発するだろう。



 だが、侍モブは俺とは違うようで……


 「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。

 一度生を享け、滅せぬもののあるべきか。

 これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ」


 「???」


 「意味不明な呪文を唱え始めたわ!?」


 「へー、敦盛か。

 武将と敦盛といえばあれが思いつくけど……」



 侍モブは渋い趣味してるんだな。

 侍ロールプレイをしているだけあって、死に際も拘るとはやるじゃないか!



 「では、あの世へ参ろうぞ!

 武士道とは死ぬこと見つけたり!

 スキル発動!【濁流万花】!」


 侍モブはそう叫ぶと腹部から背中にかけて濁った水の花弁を生み出し、その花弁が身体を貫いたことによって光の粒子となって消えていった……

 腹切りってやつだな!

 まさかのタイミングで【濁流万花】の有効的な使い方を見せつけられたぞ。

 






 ……それはそれとして、俺のクランメンバーをよく可愛がってくれたようじゃないか!

 せっかくだ俺もお前らを可愛がってやろう!


 「げげっ、【包丁戦士】!?」

 「あ、終わったわね……」

 「詰んだ詰んだ」


 そうして今日も俺はプレイヤーキラーとしての活動に勤しむのだった。






 無限湖沼ルルラシアで包丁による断末魔が響き渡ったとか、なかったとか……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] 使えねースキルを、こうも演出に使うとは。 やはりクソゲーに適応したモブはキャラが濃い
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