92話 レーザー解禁
ん?
いや、完全に前の話でスルー仕掛けてたけど、現実でもこの技、釣竿一刀流【精霊穴球】を使えてるってことだよな!?
現実では精霊の力を借りているとか言ってたけど、こいつはゲーム外でもゲームみたいなことやってんなぁ!?
そんなに召喚できるなら物量作戦でどんどん召喚すればいいのに……
「そんなに単純な話ではないんですよ。
色々と制限がかけられているみたいですから……」
はい、言質とりました~!
とりあえず、俺は召喚術で押しきられるということを考慮しなくてもよくなった。
あいつの言葉を鵜呑みにし過ぎるのもダメだが、今まで全く使ってこなかった技だし、実際に制限が重い可能性は高い。
とりあえずは信じても良さそうだ。
それなら、今まで通りに攻めていくか。
俺の袈裟斬りを喰らえ!
俺は包丁を左上から右下にかけて振り抜こうとした。
「迎え撃つまでです!
釣竿一刀流【石砕き】!」
【釣竿剣士】は俺の包丁による袈裟斬りを無視するような形で地面に釣竿をぶつける。
そうすると、地面が割れて隆起し、俺の包丁を受け止めた。
は?
とっさの行動でここまで大きなムーヴできるってマジか……
マジか……
地形破壊に特化している釣竿一刀流【石砕き】を、まさかこんな形で使ってくるとは思ってなかった。
いや、まてよ……
そういえば、【検証班長】が前に言ってたな?
岩山エリアのレイドボスであるニワトリカラスの、高速飛翔蹴りを地形破壊で対策してたって……
この対応力で進路に地面を隆起させられるのなら、突進まがいのあの攻撃も止められるか……
ちっ、まさかそれを自分の身で体験することになるなんて思ってなかったがなぁ。
だが、隆起した地面で視界がお互いに潰れているので向こうからの攻撃がないのはラッキーだった。
このまま追撃されてたら回避できないかもしれない。
「……と、でも思っているのでしょう?
それは想像力が足りてないですよ!
その岩壁ごと切り裂いてあげますよ!
釣竿一刀流【斬祓】ですっ!」
【釣竿剣士】は釣竿を鉄扇に幻視させるように、釣竿を高速振動させると岩壁越しに俺に向けて扇いできているようだ。
あっ、これこのままだと不味いわ!
俺は身の危険を察知して、全速力で後方へ退避した。
すると次の瞬間、さっきまで俺の目の前にあった岩壁がスルリスルリと切断されていき、急に見晴らしが良くなってしまった。
まるで鎌鼬みたいだな、おい!
推測だが、あの岩壁の裏に居たままだったら俺も一緒に切断されてたんだろうな……
「中々危険予知が上手いんですね?
あの位置からまさか全力で回避する人がいるなんて思いませんでした。
実際に、今まであの局面で回避できた人なんて数えるくらいしかいませんからね……」
あっぶねぇ……
完全に勘だったが、やっぱり俺は切断されていた可能性が高いらしかった。
というか、あの鉄扇状態維持されたら近寄れなくない?
近寄ったら切り裂かれるのがなんとなく目に見えてるし……多分あの技は俺のスキル【フィレオ】に近いものがあると見た。
もちろん、現実でも出来ている技らしいから種も仕掛けもあるだろが、飛翔する斬擊、切断特化……などなど共通点が多い。
そうなると、射程に入った時点で俺の身体が切り刻まれるというのが自然の摂理だ。
つまり……近寄らずに攻撃だな!
こうなりゃ、今まで使ってこなかったこれも解禁だっ!
行くぞ、スキル発動っ【深淵顕現権限】っ!
俺は観客席にいたその辺の【モブ】を10人くらいと、最前席で見ていたボマードちゃんを生け贄に捧げてスキルを発動した。
俺のお尻からニョキニョキと尻尾が生えてきて自律行動し始めた。
このヌルヌルしたウナギ尻尾をここまでの大衆の前で使ったことなかったし、【釣竿剣士】にも詳しい情報は流れていないはずだ。
……それに、最近強化されたしな!
「うわっ、なんですかそのヌルヌルの触手みたいな尻尾は……
仮にも女性であるあなたが扱うものとは思えませんね……
頭大丈夫ですか?
もしかしてそういう趣味があったりしますか?」
いや、無いから!
たしかに大会の登録写真触手に絡まれているやつだったけども!
だったけども!!!
この尻尾、普通に使う分には2本目の鞭として使うことが多かった。
勝手に攻撃、迎撃してくれる便利な外付けユニットみたいな扱いだ。
……もちろん、その認識は今でも変わっていないが、それ以上にルル様に調整してもらったお陰で出来ることの幅が増えた。
それを【釣竿剣士】への対策としてここで使ってやるよ。
いくぜ、スキル発動っ、【魚尾砲撃】っ!
俺は自分に生えたヌルヌルドロドロの尻尾の根本から先端へエネルギーが蓄積しているのを感じている。
それに気づいた【釣竿剣士】は少し驚いた顔をしている。
「それは……見覚えがあります!?
まさか、そのスキルの使い方は新緑都市アネイブルのレイドボスだったジェーライト=ミューンの使い方そのものじゃないですか!?
スキル【魚尾砲撃】自体は予選で散々見ましたが、どうやらあなたのそれは違うようですね?」
ご明察!
俺のレーザーはそこらの【モブ】が使う【魚尾砲撃】とは違うぞ!
さて、エネルギー充填完了!
放てっ、俺の尻尾ぉ!
俺の尻尾からレイドボスが使っていたのより少し小さいサイズのレーザー砲撃が放たれた。
予選ではほぼ道連れ用の自爆スキルとして悪名を轟かせていたスキルだが、これはそれらとは一線を画している。
このレーザー砲撃こそが真の使い方だ!
観客席の【モブ】たちっ、その眠そうな目にちゃんと刻み込んでおけよっ!
俺の尻尾から放たれたレーザーは【釣竿剣士】へと向かって伸びていく。
このまま直撃すれば俺の勝ちは確定するだろう。
それくらいレイドボスから手にいれたスキルの威力は強大だ。
【モブ】が雑に使ってもプレイヤーキルが余裕なくらいだ、それなら適切な使い方をした俺のやつはもっと凄いのは当然だろう。
「やりますね……
この攻撃中々のものと見ました。
だからこそ生産プレイヤーとして、この攻撃真っ向から受けて立ちます!」
花飾りの少女は仁王立ちして立ち塞がりそう宣言した。
その威圧感はレイドボスにも負けていなかった。
いや、生産プレイヤーとして立ち向かうってどういうことなんだ?(困惑)
あんな攻撃ができるようになっているとは……
私の監視を離れたタイミングですか……?
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