918話 闇に呑まれた者たち(挿絵あり)
【Raid Battle!】
【底無し沼の水竜】
【寄聖獣??????=プシーナク】
【沼地蛇竜】【邪悪竜魚人】【チーフイグザミナー】
【深淵に呑まれた沼竜は】
【冒険者を蝕む】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【しかしその身に宿す深淵の力に】
【自我もろとも蝕まれ】
【大いなる力には大いなる代償がつきまとう】
【さあ冒険者たちよ】
【清濁併せ呑む戦いの中で】
【その解答を示せ!】
【レイドバトルを開始します】
「おうおう!
オメーら待ってたぞ!
オレも封印が解けてから本格的に身体を動かす機会が全くねーから、この対戦を楽しみにしてたっつーわけだ!」
脳内に無機質なレイドアナウンスを響かせながら現れたのは破れた着物を着こなす不良ドラ娘……【プシーナク】だ!
……まぁ、今は着物娘姿じゃなくて巨大な沼ドラゴンというレイドボスに相応しい姿だけどな。
思ったよりも深淵に呑み込まれかけてるな、これなら作戦変更もあり、か……?
前に戦った時にはレイドアナウンスが全く開示されていない状態だったから、この短期間で全解放されているのは驚きだ。
まぁ、大方【検証班長】と【風船飛行士】が色々やったんだろう。
【風船飛行士】が【ギルドマスター】権限を手に入れていたのも関係しているかもしれないが、今はそれを確かめる術もないので暇なときに【検証班長】にでも聞いてみるか。
……【風船飛行士】には出来る限り会いたくないし。
「お主ら、よくもおめおめとわっちの前に顔を出せたのじゃっ!
こうなれば、わっちの竜の里に穢れた深淵の力を蔓延させようとした罪を償ってもらわねばいけないのじゃ!」
半分好奇心のような【プシーナク】に対して、怒り心頭の【オメガンド】は前のめりで俺たちに啖呵を切ってきた。
ヤル気満々のようで何よりだ!
それくらいの勢いなら俺たちも気兼ねなくお前たちを倒せるからな。
「悪いけど俺たちは君たちのような存在とお喋りで時間を費やすほど暇じゃないんだ。
それに罪を償うのは俺たちじゃなくて、君たちさ!
フェイちゃんを追放したその罪……その身体で償ってもらおうか!
スキル発動!【深淵纏縛Л】!」
【Raid Battle!】
【深淵域の竜帝王】
【エルラシア=ガルザヴォーク】
【邪悪竜人】【フランベルジェナイト】【プレイヤー(廻)】
【蘇りし無垢なる深淵竜帝王は】
【再び深淵へ誘われ】
【聖なるモノから堕とされる】
【希望を見極め】
【生死を流転する】
【滅びた邪竜がその力を取り戻したとき】
【聖なるモノたちは立ち上がるだろう】
【しかし、その邪なる力はあまりにも無垢であった】
【レイドバトルを開始します】
【フランベルジェナイト】がスキルを発動すると身体が黒炎に包まれていき、その黒炎が形を変えるようにして全身に広がっていく。
そして、その炎の揺れる形を残したまま固まっていき【フランベルジェナイト】は全身を漆黒の鎧で包み込んだ黒騎士姿となった。
炎の形を残した鎧はまるで竜の鱗にも見え、竜騎士と言っても過言ではない威容を見せている。
「なっ、なんじゃとっ!?
その姿、そのレイドクエスト、その力……かつて滅びた深淵の竜なのじゃっ!?」
「おうおうっ!
こいつは驚いたぜ……
名前までご丁寧に同じとはゴクローなこった。
レイドボスからプレイヤーに転生するっつー話なんて聞いたことねーぞ!」
案の定驚いている【オメガンド】と【プシーナク】だが、俺だけはこの姿の【フランベルジェナイト】を見たことがある。
それは聖剣次元との次元戦争の際に己の存在を再認識した【フランベルジェナイト】が発現したものだ。
【フランベルジェナイト】の真の名称……【エルラシア=ガルザヴォーク】ということを公開しているが、スキル【名称公開】の餌食になっていないのはプレイヤーとしての名称とは異なるからだろうな。
「そうさ、この身は【エルラシア=ガルザヴォーク】であって【エルラシア=ガルザヴォーク】ではない。
今の俺はフェイちゃんのための忠実なる守護騎士【フランベルジェナイト】だ!
そんな俺が愛を誓うフェイちゃんに対して、君たちが行ったのは許されざる行為だよ。
だからこそ、この大いなる深淵の黒炎が君たち聖獣を罪ごと燃やし尽くしてあげよう!」
「おう、よく吠えるじゃねーか!
だが、生粋のレイドボスのオレと仮初めのレイドボスの力を扱うオメーとは格が違うっつーことを見せつけてやるぜ!」
「わっちも元レイドボスなのじゃが、それでもスペックはプレイヤーと比べれば上位なのじゃ!
お主ら二人相手であればこの姿、この力でも充分勝てるのじゃよ!」
うんうん、戦う前の殺気に満ちたこの瞬間が一番心地いいな!
テーマパークに来たみたいで俺もテンション上がってきたぞ!
さあ、愉しい愉しい死合いの開始といこうじゃないか!
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