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916話 深き心意気

 はぁっ、はぁっ、はぁっ……

 なんとか……なんとか押し止めたぞ……っ!


 俺は【夢幻深淵】の力をフル放出してなんとか【風船飛行士】と【検証班長】による攻撃を受けずに済み、そのまま押し返すことに成功した。

 ただ、【夢幻深淵】は最低限使うだけのエネルギーを貯めるにも一週間かかるし、今回のようにフル放出するためにはもっと時間を置かないといけないのでこの後に間違いなく控えている【オメガンド】と【プシーナク】に奥の手を使えなくなってしまったのはかなりの痛手だ。



 だがその甲斐あって【検証班長】と【風船飛行士】は光の粒子となって消えていき、俺の十二本の極太レーザー攻撃が終わったときには跡形も無かったぞ!

 ……思ったよりも手間取らせやがって!

 




 さ~て、俺の方は片付けたが他の連中はどうなった?


 「フェイちゃん助かったよ!

 君たち、悪いけどこれで止めとさせてもらう。

 スキル発動!【深淵煉獄】!

 スキル発動!【覇道竜陣】!」




 【スキルチェイン【深淵煉獄】【覇道竜陣】】


 【追加効果が付与されました】


 【深度が増加しました】



 そんな【フランベルジェナイト】の声を聞いてそちらを見ると、双子の竜人が健在であるのに対して俺たち陣営は【軍刀歩兵】も【バットシーフ】後輩も既に死に戻りした後で【フランベルジェナイト】しか残されていなかった。

 不甲斐ないぞ……と言いたいところだが【ギルドマスター】権限によって強化されていた双子の強さは未知数なので下手なことは言わないでおこう。


 だが、その【ギルドマスター】権限は俺が【風船飛行士】を倒したことによって停止した!

 【フランベルジェナイト】が(フェイ)に礼を言ったのはそのことだろう。

 


 「うっ、急に身体に力が入らなくなってきたヨ……

 もう、これ以上動けナイネ……」

 「あれ、【風船飛行士】リーダー負けちゃったんだねっ!

 【包丁戦士】さんも生きてるし、私たちもここまでかなっ!」



 【ギルドマスター】権限の効果が切れたことによって脱力した【ブーメラン冒険者】と【短剣探険者】の双子はこれ以上の抵抗を諦めたようで、【フランベルジェナイト】が放ったスキルチェインを無抵抗で受けていれて光の粒子となり消えていったようだ。



 よお、【フランベルジェナイト】。

 何とかあの厄介な双子を倒してくれたようだな。

 流石はクラン【コラテラルダメージ】の特級戦力だ!

 他のクランメンバー連中には悪いが、諸々の要素を鑑みても【フランベルジェナイト】を超えられるやつはいないだろうし……


 実際、【バットシーフ】後輩はしれっと退場してたから俺がこれだけ【フランベルジェナイト】を誉めたとしても何一つ反論できないだろうよ。



 「何とか倒せたけど、この先にはまだまだレイドボスの【プシーナク】と元レイドボスの【オメガンド】がいるよ。

 今回はフェイちゃんに助けられたけど、次の戦いでは俺が守り抜いてみせるよ!」


 そんな強がりを言う【フランベルジェナイト】だが、その身体は既に満身創痍といっても過言ではない。

 いくら【フランベルジェナイト】が元【上位権限】レイドボスだったとはいえ、今はただの1プレイヤーだ。

 【風船飛行士】による【ギルドマスター】権限の強力なバフを受けた双子を相手に時間を稼いでいたのだから当然だろう。


 だがこのイケメン、それでも目には爛々と輝く熱い炎を滾らせ有言実行しようとしている。

 いくら俺が可憐な乙女だとはいえ、ここまで献身的な男からストレートな言葉をぶつけられると照れてしまうぞ。




 【……【フランベルジェナイト】さんは譲りませんよ。

 ここまでの信頼関係を築いたのはあくまでも私ですからね】


 【フェイ】が俺に釘を刺すように耳元で囁いてきたが、それは百も承知だ。

 照れたのは事実だがお前から奪う気は更々ない。

 どっちにしても俺だし、それにイケメンだとしても俺の好みとは外れているからな。



 【ですよね。

 でも、もう一人の私の口からその言葉を聞かないと安心できないので……

 もしその言葉を違えたときは覚悟してくださいね?

 ……容赦なくその身体もらい受けるからなぁっ!】



 こらこら、素が出てるぞ?

 まぁ、いくら清楚ぶったって元が俺なんだから感情が荒ぶるとこうなるよな。

 逆に言ってしまえば俺自身の限界がそこまでということでもあるのだから、少し悲しい気持ちにもなってしまう。



 そんな複雑な心情をストレートに顔に浮かべていると、俺を心配した【フランベルジェナイト】がポンと肩に手をかけてきて元気付けようとしてきた。


 

 「この先の戦いが心配なのかな?

 フェイちゃんは硝子のように繊細だからこの激しい戦いで不安になるのは分かるよ。

 でも、忌々しい聖獣たちがフェイちゃんを弾劾してきたんだ、その報いをきちんと受けさせないとこの先どんどん厳しくなってくる。

 だからこそ俺たちは手を取り合って立ち上がったんだ!

 俺はフェイちゃんを不幸になんてさせない、全力で幸せに導いてみせるっ!」


 おーおー、この電波系イケメン本当に主人公みたいなセリフを恥ずかしげもなく吐き出すよな……

 つまり取り繕う必要もないくらい本心というわけだ。

 俺はお前が恐ろしいよ……






 カッカッカッ、それでこそ深淵の心意気というものだのぅ……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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