910話 バクシン更地
「ふひひっ、【ペグ忍者】さんをこれで倒せますねぇぇ!
スキル発動!【想起現像】ぅぅ!
砂に埋もれて窒息死してくださいよぉぉ!」
俺がスキルで放った黒い枝に絡めとられている【ペグ忍者】が身動きが取れていないのを見て、【骨笛ネクロマンサー】は【ペグ忍者】の頭上から赤色の砂を降らせて埋もれさせようとしているようだ。
ここまで徹底して【ペグ忍者】の機動力を奪ってしまえばもう危険性はないはずだ。
「……っと【包丁戦士】しゃんは思っているのらね?
確かに【ペグ忍者】はもう終わりかもしれないのら。
でも、ここは分断された戦場じゃないのらよ~!」
……ん?
それはどういうことだ……?
「ふひひっ、時間稼ぎしようとしても無駄ですよぉぉ……
あてぃしたちの勝ちは揺らがないですからぁぁ……」
珍しく強気な【骨笛ネクロマンサー】が勝利宣言をキメているが、それは露骨なフラグだぞ!?
【ペグ忍者】のこの状況下でも未だ変わることのない強い意思の籠った目のこともあるので、何か見落としていることがあるのでは……
「さ~て、掃除の時間なのらよ~!
【モップ清掃員】しゃん、【ドライバー修理人】しゃんやってしまうのら!
スキル発動!【魚尾砲撃】!」
「えっと、あの、その……はい。
スキル発動!【魚尾砲撃】!」
「ほうもうそんな時間ですか、大したものですね。
出来ればこの作戦は使いたくなかったですが、勝利目標の【包丁戦士】さんと要注意人物の【骨笛ネクロマンサー】さんがいるのならここが使いどころですか。
スキル発動!【亀爆座遺】!」
【モップ清掃員】は嫌な記憶が蘇ってくるスキルの発動を宣言してきた。
あれはこの次元では貴重な亀獣人のスキルだ。
スキルを発動した【モップ清掃員】はまるで石になったと錯覚してしまうほどの硬直状態になり、その場で動きが止まってしまった。
だが、その足場からまるで亀の甲羅のようにひび割れていき爆炎が周囲に広がり始めた。
さらにそこから一定距離離れたところにいる【ペグ忍者】と【ドライバー修理人】も自らの身体を爆発させて爆心地を連鎖的に拡大させてきた!
……これは亀獣人の防御力を強引に活かした自爆攻撃だなっ!?
不味いっ、このままだと全員巻き込まれて死に戻りルートだぞ!?
「あっ、オジサンの足だともう間に合わn」
「こうなったら【戒焔剣レヴァ】を解放すr」
【短弓射手】やリデちゃんが最期の言葉を遺している最中に、地面から沸き上がってきた花のような形をした爆炎に巻き込まれて光の粒子となり消えていった……
そして、爆心地の中央にいた【モップ清掃員】も当然消えていた。
だが、その爆炎は今もなお広がってきており、俺や【骨笛ネクロマンサー】も巻き込もうとしている寸前まで来ていた。
「ふひひっ、このままだとあてぃしたち死んじゃいますよぉぉ……
あてぃしは死んでも続きますけど、【包丁戦士】さんが死んだら負けですから不味いですねぇぇ……」
【骨笛ネクロマンサー】はこの死の間際で覚悟を決めた表情でそう呟いていた。
……お前、まさかっ!?
「ふひひっ、【包丁戦士】さんは生き延びてくださいぃぃ……っ!!
【包丁戦士】さんはあてぃしたち闇の陣営のトップなんですから、最後には勝ってくれると信じてますぅぅ……っ!!」
【骨笛ネクロマンサー】はそう言い残すと、俺に蜘蛛糸を飛ばしてきて爆発圏内から押し出してくれた。
覚悟は決めていたがどこか切なそうな表情の【骨笛ネクロマンサー】が爆発に呑み込まれていくのを背中で見送りつつ、俺は生き残るため更なる行動に移っていく。
そこから爆風に巻き込まれないように、ルル様の骨翼によって飛翔して上空へと舞い上がっていったぞ!
上空から爆煙の晴れた爆心地を見てみるとそこには草木一つ残っていない更地になっており、そこで戦闘をしていた【ペグ忍者】、【ドライバー修理人】、【モップ清掃員】、【骨笛ネクロマンサー】、【短弓射手】、リデちゃんは死滅しているのは確実だろう。
鬱陶しく周りで戦っていたモブプレイヤーたちも巻き込まれて死に戻りしていっただろうから、両陣営合わせて100人近くは被害が出ただろう。
ここまでやるか【検証班長】……
【ペグ忍者】が指示した作戦はあらかじめ【検証班長】がやるように教え込んでいたもののはずだ。
わざわざ使うタイミングまで事前に決めていたっぽいから、おそらくは俺たち闇の陣営プレイヤーが一つの戦場に集結し始めた頃合いを狙っていたのだろう。
姑息な真似を……っ!
ただでさえ人数で負けている闇の陣営プレイヤーの数はもはや風前の灯火レベルで、攻め込んだはずなのに戦況はより悪化してしまった。
これが姑息と言わずして何と言うんだろう。
劣化天子も姑息といえば姑息ですが……
いえ、悪辣の方がより適切な表現かもしれませんね。
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