9話 とんでもトッププレイヤーの噂
【Raid Battle!】
【堅牢山の大怪鳥】
【レイドバトルを開始します】
ちょっと気になったことがあるので、いつものジェーさんじゃなくて岩山のニワトリカラスに挑んでみる。
俺の武器もレイドボス素材にパワーアップしたし、前回よりも戦えるという算段も少しあるが、それ以上に試さないといけないことがある。
「【包丁戦士】さんが実際に体験したいというから来ましたが、ボクたち検証から渡した情報だけでもほとんど確定に近いですよね?
それでも【検証班長】としては、検証というものに手を抜くわけにはいかないので全力でお手伝いしますよ!」
今回の同行人は痩せ型メガネの【検証班長】だ。
ちょっと前にこのニワトリカラスと戦ってた時に少し疑問に思っていたが、戦闘中ということで流してしまっていた事例をこの班長に聞いてみたらある推論が上げられたのだ。
まあ、それはおいおいね……
バトル開始直後、このニワトリカラスは3パターンの行動を取るらしい。
岩山エリアの検証班が何度もアタックして調べたらしい、流石だな。
さて、今回は……
「羽をバタバタさせていますね、飛翔蹴りが来ますよ。
さっそくお目当ての攻撃とは【包丁戦士】さんももってm」
メガネをくいっと上げながらこちらを見てくる。
メガネキャラ特有の動作は実在したのね。
なお、その隙に【検証班長】は岩壁に蹴りつけられて死に戻りしている。
この一発目の飛翔蹴りのスピードはめっちゃ速い、前回もボマードちゃんが瞬殺されてたし今回も同様に【検証班長】が瞬殺された。
俺が知りたかったのはこの一発目の飛翔蹴りじゃなくて、その次だ。
白衣の男が散ったのを確認するとニワトリカラスは次はお前だぞという表情を浮かべながらゆっくりこちらへ顔を方向を変えた。
そして、先程と同じように羽をバタバタさせている。
「さあ、来いっ!」
その直後、俺の体は岩壁に叩きつけられた。
ナイス、アタック!
「ナイス、死に戻りです。
それで、体験できましたか?
スピードタイプのレイドボスの力」
「ああ、充分に。
そして、前回の異常も何となく推測できた気がする。
というかあの攻撃、通常状態で避けられるのか?」
「やはりそうでしたか……
今まであの攻撃を凌げたプレイヤーはボクたちが知っている中では【包丁戦士】さんを除くと【釣竿剣士】さんだけですね」
「ここでもまたトッププレイヤー様の話題が出てくるか。
ちなみにそのトッププレイヤー様はどうやって凌いだんだ?」
参考になるかもしれないから一応聞いておこう。
トッププレイヤーの行動を参考にするのはシャクだけどな。
「あの人は岩を砕いて進路を妨害してましたね。
分かりやすい準備モーションがあるにしても、ボクにはあの短い時間で対策することは出来ませんが……」
あの羽をバタバタさせるモーション1秒も無いのに一瞬の判断でよくそんなことできたな。
というかその前に!?
「岩を砕いた!?
どうやって?」
一瞬で岩を砕けるような手段があるのか。
このゲームをはじめて、一度もそんな超兵器みたことないんだが。
プレイヤーに人権のないドン底ゲームでそんな武器が序盤から手に入るとは思えない。
「それはもちろん彼女の代名詞、釣竿で、ですよ」
「釣竿で!?
えっ、えええっ?
そんなギミック搭載してるのその釣竿、それともスキルでも発見されたのか?」
「いえ、今のところあなたが考えているような火力アップスキルや攻撃魔法のようなスキル、武器スキルのようなものは発見されていないですね」
つまり?
「彼女のリアルスキルとしか考えられません。
他にも奇想天外なリアルスキルの噂は絶えませんね、空を飛んだり発光したりしたという真偽不明なものまで都市伝説として語られていますよ。
ゲーム内の掲示板でも動向を探るための専用スレッドが立てられているくらい異質なプレイヤーです」
「とんでもプレイヤーなんだな、【釣竿剣士】は!
とんでも情報過ぎて頭の整理が追いつかないわ!!」
そりゃそんなリアルスキル持っていたらトッププレイヤーになれるだろうよ!
どこかでくしゃみをしている剣士が居たとか居なかったとか……
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