897話 大罪と名無し
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
海エリアでの活動は意図せずして【ハリネズミ】たちに任せることになったので、俺はこれまで通り地上で活動していくぞ!
というわけでやって来ました堅牢剣山ソイングレスト!
ここを占領してたら【大罪魔】と会ってなかったので様子を見に来たわけだ。
おーい元気か?
「元気だったり、元気じゃなかったりする……
やることが多いの」
【大罪魔】は褐色の肌に映える銀髪を揺らしながら俺のほうを振り返り、そう呟いた。
なんだか忙しそうだな?
「当然だったり、愚問だったりする……
聖獣の力がまだ大きいエリアだから作り替えるのに苦労しているの!
少しずつこの堅牢剣山ソイングレストを私のエリアに変えるつもりだったりする」
元々あった力を失ったお前だとその辺の大規模なことは出来ないんだろうな。
ルル様とか力が健在だった【菜刀天子】とかならエリアを占領した瞬間に力を蔓延させていきそうだし……
それだけルル様たちが強力なのか、はたまた【大罪魔】が弱いのかは分からないがな。
「ここで力を蓄えて【荒野の自由】に挑みたいの!
それにはまだ時間が必要だったり、リソースが必要だったりする……
でも下僕が手に入ったのは嬉しい誤算なの」
下僕?
そう言いながら【大罪魔】が指差した方向を見ると、そこには薄着になって土木作業をする【クシーリア】の姿があった。
「うぅっ、名前を失った私にはもう価値なんてないわ……」
何だか泣きべそをかきながら作業をしてるんだが、あいつってそんなにネガティブ思考のやつだったか?
レイドバトルの時は自意識過剰なナルシストっていうイメージだったんだけど。
「レイドボスとしての格を他のレイドボスの格で補った者の宿命なの。
その種族の上位者がいる状態で再命名しないとずっと名無しだったりする……
名無しなのはレイドボスとしてはこれ以上ない屈辱なの」
そういえば【ミューン】もそうだったな。
あいつは白虎の格で補ったから敗北と同時に自身の名前を代償に失ったが、この名無しとなった【クシーリア】は鳳凰の格で補って同じ現象が起きたのだろう。
いい感じに没落してていい気味だな!
これが悪役令嬢追放ものってやつか。
「どっちかというと私たちの方が悪役だったり、悪役じゃなかったりする……
でも、没落したのは本当なの!
これからもどんどんコキ使うの!」
自分で自由に動かせる駒を手に入れた【大罪魔】は少し自慢げに胸を張っていた。
配下のいない種族だからこういうのに憧れていたのだろう。
それに律儀に従う【クシーリア】も力関係をワカラセられたから従順なのだろう。
この辺は獣の習性がAIとして反映されている……と思う。
「【クラフトマイスター】だっただけあってアイテム生産も上手いから本当に役立つ下僕なの。
このままいけばあの【荒野の自由】を倒すのも夢じゃなかったり、遠い目標じゃなかったりする……
あとは相手のリソースを削りたかったりする」
まぁ、自分がいくら全盛期に近づけたとしても根本的に【荒野の自由】の方が相性が上なのだから妨害工作くらいは必要だろう。
……俺がやったとしても今はすぐに感知されるので他のやつに頼んでくれよ?
「【暴食】はケチだったり、甲斐性なしだったりする……
もうちょっと私のために働いて欲しいの」
あっ、そういえばお前のために働くといえば渡しておくものがあったな。
お前も最終的に持っていくつもりだったと思うが、一応知らせておこう。
「ではさっそく貰ったり、剥奪したりする……」
【個人アナウンス】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】の上位権限】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】は【包丁戦士】から称号【『sin』暴食の捕食:憂鬱の現界超異能】を徴収しました】
「これも良いものなの!
前の骸ほどじゃなかったりするけど使い道があったり、なかったりする……」
何に使うつもりなんだ……?
俺には分からん!
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