896話 ハリネズミの狂船
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
俺がログインすると広間で輪になってトランプで遊んでいる連中がいた。
……何やってるんだお前ら?
「あっ、リーダーがログインしてきた!」
「待ってましたよw」
「拙者ロリ待ち待ち侍」
……どうやら俺を待っていたらしい。
こいつらは【ハリネズミ】という、俺が運営するクラン【コラテラルダメージ】に所属する連中だ。
ほとんどがモブプレイヤーの集団なのでまとめて【ハリネズミ】と呼んでいるぞ!
それで、わざわざ天子王宮で待ち構えているなんて珍しいな?
【ハリネズミ】たちはいつもは岩山エリア……堅牢剣山ソイングレストにあるクランハウスでたむろしているはずだが、今日に限っては俺を出待ちしていたのは何故なのか非常に気になるところだ。
「リーダーってあの船しばらく使わないって聞いたんだけど」
「勿体なくね……と思ってw」
「【包丁戦士】さんが使わないなら、その間俺たちが海エリアであの船使ってもいいか確認に来たわけです」
耳聡いな。
俺が魔海城船アンサンセを積極的に使うつもりはないってことは、ボマードちゃんにしか話していない内容だからボマードちゃんがポロリと漏らしたのだろう。
同じクランメンバー相手だから特に咎めるつもりはないがな!
そして、俺の魔海城船アンサンセを【ハリネズミ】たちが使いたいというのは意外だな。
どうしてだ?
「だって俺たちも素材の運び出しに手伝ったし……」
「お零れに預かりたいな~とw」
「それにクランハウス以外のたまり場も欲しくて」
「拙僧としても、この尺八の音を世界に広めるべく活動範囲を広げたいと思っていたのである!」
平凡な理由だが、【ハリネズミ】たちはそれくらいがちょうどいいんだろうな。
張り切って素材を運び出し作ったもののもて余していたから、せっかくだし使わせてやるよ!
「えっ、マジっすか!?」
「来たwこれで勝つるw」
「流石リーダー! 太っ腹!」
「海蔵王に俺はなる!」
海蔵王……?
な、なんだか知らんが頑張ってくれ!
王って付くほどだから高い目標なんだろうが、俺の船を使うからにはそれくらいはやってもらわないとな!
でも壊したらすぐ教えろよ?
修理に必要な素材だけここの宝物庫から外に出してやるからな!
……もちろん、【深海造船所】まではお前らで運んでもらうが。
「えっ、修理の素材も出してくれるって気前良すぎw」
「流石リーダー!」
「拙者ロリ好き好き侍。
義によって海でも大暴れするで候」
「拙僧たちも、リーダーの期待に応えるためより一層励まねば!」
うんうん、いい感じに士気が高まってきたじゃないか!
その調子で俺の船、魔海城船アンサンセの名前を思う存分広げてやってくれ。
「魔海城船ってネーミング好き」
「俺たちレッドプレイヤーが乗る船って感じするよなw」
「アンサンセって何?」
「フランス語履修してるけど確か……「狂った」とかそんな感じだった気がする」
「うわっ、リーダーにぴったり!」
「狂人って呼ばれてるしw」
ほら、操縦権利共有してやるからさっさとそこに並べ!
これがないとお前らはあの船に干渉できないぞ?
「はーい!」
「いやいや、俺が先にもらう!」
「じゃあ、ジャンケンで決めようぜw」
「いいね! では……ジャンケン~ポン!」
「くそ~負けた~」
「拙者ロリ好き好き侍。
義によって一番乗りするで候!」
どうやら侍モブがジャンケンに勝利したらしい。
それならご褒美に一番でお前に権利を共有してやろう!
そうしてお互いにウインドウ画面を開き、俺は指で船の権利の項目を侍モブのウインドウ画面に直接引っ張っていく。
他にも方法はあるが、この場にいるのならこれが一番手っ取り早かった。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!
感激でござる!!!!!」
そ、そんなに一番乗りが嬉しかったのか……
喜んでもらって何よりだが、普通そこまで喜ぶか?
「こいつリーダーのファンだからな~」
「よかったじゃんw」
「流石ロリ好き侍……」
「ばーか、リーダーはロリじゃねぇって!」
「諸説あるな」
あったり、なかったりする……
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