表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

889/2208

889話 沼の流れのように

 それで、なんで【プシーナク】は封印されていたんだ?

 封印ってことは危険物に蓋をするようなものだ。

 それが聖獣にされていたとなれば理由が知りたくなるのも当然だな!



 「おう……

 これオレから言わないとダメか?」

 

 いや別に?

 【オメガンド】が教えてくれるなら自分の口から言わなくてもいいぞ?

 自分で言いたくないことって誰にもあるものだからな!



 「ではわっちから説明するのじゃ!

 この【プシーナク】は過去に深淵の邪気を浴びて不調を起こしていたのじゃよ。

 【ミューン】や【クシーリア】のように正気を失う前に天子権限で封印していたのじゃ。

 その後わっちらの主も封印されてしまったから、【ミューン】や【クシーリア】は助からなかったのじゃがな……

 わっちもエリア移動制限がつけられてからはあやつらのことを感知出来なかった故に、あそこまで侵されているとは思わなんだが」

 

 なるほど、確かに俺たちが会ったときには【ミューン】は深淵種族の【ジェーライト】に、【クシーリア】は深淵種族の【アルベー】に取り憑かれている状態になっていた。

 つまり、この【プシーナク】もその一歩寸前だったわけだ。

 この荒い口調もその影響か?



 「おうおう、なんだその言い草は?

 でも、だいたいそんな感じだ!」


 あ、やっぱりそうなのね。

 それで、その深淵の影響は今どんな感じになっているんだ?



 「おう!

 今はオレが抑え込めているぞ!

 深淵の力もオレの意思で使えるみたいだが、下手に使うとオレの意識が薄れちまう……

 【オメガンド】のように青かった髪も濁って今は茶色になっちまったが、あの聖獣深淵対戦を乗り越えるためには深淵の力を使わざるを得なかったっつーわけだ」

 

 そんなに苛烈な戦いだったんだな。

 その戦いの話は何度も聞いているが、俺たちプレイヤーでは想像もつかない大規模戦闘だったんだろう。

 毒をもって毒を制すとは言うが、毛嫌いしているはずの深淵種族の力を行使してまでも勝ちに拘らないといけないくらいだったんだからな!


 ……まあ、聖獣たちに深淵の力を宿して正気を失わせていくのはルル様の策略っぽそうだけど。

 手駒を失うとはいえ、勝手に相性の悪い相手が自滅していくんだから儲けものだろうよ。


 

 「こうしてわっちが復興した竜の里に同胞が戻ってきて活気が増してきたのは嬉しいことじゃ!

 わっちがプレイヤーたちを使ってこの里を直した甲斐があったということじゃな!

 感激なのじゃよ~!」


 【オメガンド】は頬を緩ませてご満悦といった表情を浮かべて目を閉じている。

 【風船飛行士】たちがであった頃からの計画がようやく成就したのだから感慨深いものもあるのは分かるが、これほどまでに嬉しそうな様子は初めて見たぞ。



 「おう!

 ここまで喜んでもらえるならオレも戻ってきて良かったって思えるな!

 【オメガンド】は昔からこういう笑顔が可愛いやつだから、何かと喜ばせてーわけよ!」

 

 「こ、こら何を言うのじゃ!

 恥ずかしいのじゃよ……」



 どうやら力関係的には【プシーナク】の方が【オメガンド】よりも上みたいだな。

 【菜刀天子】が重用していたのは【オメガンド】の方だったみたいだが、それは【菜刀天子】との性格の兼ね合いもあるだろう。

 仕事が丁寧な【オメガンド】と、気性が少し荒めな【プシーナク】なら堅物の【菜刀天子】は【オメガンド】の方を選ぶのは確定と言ってもいいだろう。

 逆に考えるのなら、もしかしたら別の次元天子なら【プシーナク】を重用していた可能性もあるけどな。

 あくまで何に重きを置いているかが論点になりそうだ。

 


 さて、聞きたかったこともあらかた聞き終えたことだしレイドボスとしての姿を見せてもらおうじゃないか。



 「おう、見せてやろうとも!

 これがオレの竜の姿だぜ!」




 【Raid Battle!】



 【底無し沼の水竜】



 【レイドバトルを開始します】



 レイドアナウンスと共に姿を変えた【プシーナク】は少女の姿から一変し、まるで水に溶けかけの姿をした巨大な竜の姿となったのだ!

 泥ドラゴンと言えば伝わるだろうか……?

 端から見ると、濁った水が身体を形成しているように感じるが実態はどうだろうか。


 とりあえず俺は包丁を取り出し、【プシーナク】へ接近するとそのまま刃先を表皮に沿わせて切り裂いていく。

 ……手応えが薄いぞ?

 肉を切り裂いた感覚がほとんどしないのが違和感の原因だろう。

 ダメージは通っているが、物理攻撃の効果は薄そうだ。

 超耐久レイドボスだった【ウプシロン】とは違って、特殊耐性の防御型レイドボスと言えるだろう。

 この段階でそこまで断言できるのには理由がある。


 それを確認するためにも……

 スキル発動!【天元顕現権限】!

 さらに続けてスキル発動!【渡月伝心】!


 

 【スキルチェイン【天元顕現権限】【渡月伝心】】


 【追加効果が付与されました】


 【スキルクールタイムが増加しました】



 俺は顕現スキルを使い黄金色の翼を生やし天子の力を増大させ、そのまま【伝播】の力を持った円環粒子を【オメガンド】へと飛ばしていった。


 【おう……これはアイツらが得意だったスキルの劣化版ってわけか。

 っていうことはこの身体で受けるのはゴメンだ。

 出会って早々だけどよ、感謝の証にオレの得意技を見せてやるよ。

 回れ、【水流万花】ァ!】


 【プシーナク】が起動したスキルによって水で形成された花弁が俺の円環粒子を受け止め消失させてきた。

 しかもそれに留まらず、水の花弁が【プシーナク】の周りを離れ俺の身体を果物でも切るかのように腹部を上下に真っ二つにして切断してきたのだ!



 くっ、やっぱり初見のレイドボスと戦うとこんなにあっさり負けるか……

 攻略法が見えないぞ!




 底辺種族上がりのプレイヤーでは荷が重いでしょう。

 


 【Bottom Down-Online Now loading……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ