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887話 幽刻修験堂への招待状

 ……と、【菜刀天子】は思っているだろう。

 だがそれは甘い!

 

 イベント終了後、ボマードちゃんの胸を揉みしだこうと思っていた俺は、会場の陰で俺を待ち構えていた【山伏権現】とかち合うこととなっていたのだ。

 

 お前、こんなところでわざわざ俺を待ち伏せするとはいい度胸じゃないか?

 一体何の用だ?


 

 【そんなに怖い顔して構えなくてもいいんじゃないかな?

 【包丁戦士】君が隠そうとしても、こっちからは君の動向なんてすぐ分かるからね!

 それなら泰然自若の姿勢でいた方が楽だよ!】


 俺の情報を透破抜いているやつに言われると説得力があるなぁ……

 確かにこのボトムダウンオンラインはプレイヤーに人権がないゲームだから、俺の個人情報なんて握られているも同然だ。

 実際、俺のバックボーンを知っているような発言を何度もしてこられたから、今さら隠すことは出来ないだろう。



 【そういうことだね。

 それで君が一人になるのをわざわざ待っていた理由なんだけど、勧誘がしたくて声をかけさせてもらったんだよ】


 勧誘……だと!?

 俺は一体何に巻き込まれようとしているんだろうか?

 ゲーム運営プロデューサー自らプレイヤーに勧誘をかけるなんて異例事態だ!

 俺のこれまでの経験則からすると、どうせろくでもないことだろうが……


 

 【なに、君の力を活かせることだよ。

 ()()()()での能力をうちの会社で発揮してもらうわけだね。

 このボトムダウンオンラインを通して君という人材の面白さを知れたからこその勧誘だけど……どうかな?】


 いや、どうかなと言われても内容が曖昧すぎて判断出来ないんだが……

 俺の本職とゲーム会社がどう結びつくのか皆目検討もつかないからな!

 むしろ対極に位置していると言えるほど俺を活かせない場所だと思うんだけど……



 【うちの【株式会社幽刻修験堂】はただのゲーム会社じゃないんだ。

 当然、君のような面白い才能を活かせる部署も存在するからこそ勧誘させてもらっているわけさ。

 ……とはいえ、話が性急過ぎたかな?

 この後メッセージを送っておくから見ておいてよ】



 メッセージと言ったって、俺は【渡月伝心】のメッセージ機能が部分的にしか解放されていないぞ?

 そう気軽に言われても困るんだが……

 俺がそう呆れて肩を竦めていると、【山伏権現】はしたり顔で口を開き俺に言葉を投げかけてきた。



 【もちろんそれは知っているよ。

 だから、こういうのはどうかな?】



 【個人アナウンス】


 【【山伏権現】が一心同体と認定されました】


 【一心同体リストに追加されます】


 【【包丁戦士】が称号【幽刻修験堂への招待状】を獲得しました】 


 【称号の効果で【Bottom Down】!】


 【【包丁戦士】の深度が92になりました】




 【【プレイヤー】じゃないから君のability【会者定離】の制約に引っ掛からないわけだね。

 だからこそ、少し弄るだけでこういうことも出来る。

 あくまでもリストに載せただけだから、この【山伏権現】にメッセージを送ることだけ許可してあるよ】


 相変わらず意味不明な……

 それに称号の【幽刻修験堂への招待状】ってアイテムみたいな名前だな?



 【その称号のフレーバーテキストに概要を載せておいたから、気が向いたら【渡月伝心】でメッセージを送ってね。

 期限は特にないけど、早い方が君のためだと思うよ!

 では、またの機会にお会いしましょう!】



 そう言って俺の言葉を待たずして【山伏権現】は出てきた時の巻き戻しをしているかのように消えていってしまった……

 この強引さ、押し売り販売で商品を買わされてしまった後の虚しさに近いものがあるな!

 あの時に買った包丁、すぐ壊れたぞ……







 【山伏権現】と別れた後、【黒杖魔導師】と遭遇したがログインしていられる時間も少なかったのでボマードと会うことを諦めてこいつと話すことにした。



 「ククク、無事偶像崇拝祭の称号を手に入れられたようだな。

 狂巫女(バーサクプリースト)と悠久の時を過ごしたこと、我輩の新たな世界記録(アカシックレコード)にしかと刻ませてもらおう……

 ……と、忘れるところであった。

 我輩と狂巫女(バーサクプリースト)の姿を戻しておこう」


 そう言うと漆黒の魔法陣が現れ、俺たちの身体がスーッと元のアバターに戻っていった。

 まるで洗濯でもされたような気分だな!


 

 「上書きしていた漆黒闇偽装(フェイクネオダーク)外装(テクスチャ)を剥がしただけであるからな。

 ククク、漆黒闇(ネオダーク)とは便利であろう?」


 

 確かに便利なんだよなぁ……

 【釣竿剣士】の釣竿一刀流とは違った小回りのしやすさが本当に優秀で、こいつが敵に回る機会がないってことがありがたい。

 【包丁戦士狂教団】が陣営対戦で敵に回っていたらと仮定したら二つとも俺は負けていただろうからな!

 縁の下の力持ちとはこのことだろう。

 

 それにしても、【クロユリ】良かったじゃないか?

 言動はほとんど変わってなかったが、見た目が違うだけであれだけ人気になると思ってなかったぞ。

 ただの中二病だと思っていたが中々侮れないな!





 侮ったり、侮らなかったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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