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885話 試金石と原石の【ユニフラワー】

 「さて、二組目まで終了したので次はクジで3を引いたアイドルグループの登場です!

 【ユニフラワー】の二人……どうぞ」



 『みんな~お待たせ~☆

 【ツバタ】ちゃんの出番だよ~☆』


 「悠久なる時を経た先にある失楽園を見せてやろう。

 ククク、我輩たちが堕落へと誘うのだ……」


 とりあえず【山伏権現】対策として、ability【現界超技術】ではないability……つまり俺のability【会者定離】を活かす方策で行く!

 そのための仕込みは一応やっておいた。

 

 あとは【菜刀天子】対策としては俺と【黒杖魔導師】が協力して、それぞれの最高点を目指してパフォーマンスをするだけだ!

 あいつらのお眼鏡にかなうかは知らないけどな!



 『あたし【ツバタ】と【クロユリ】が歌うのは【黒百合(くろゆり)杜若(かきつばた)萌色紫(もえいろぞめ)】だよ☆』


 「混沌たる激情に絆された物語を歌い上げ、この偶像崇拝舞台を狂気に陥れてやろうではないか!」


 

 



 『色香に誘われやってきて~☆』


 「二輪の花を摘み嗅ぐ、腐敗の悪魔が囁くっ!」



 俺……【ツバタ】がいつものように舞台を駆け巡りながら観客席へと営業スマイルを振り撒いていく。

 プレイヤーキラーの【包丁戦士】が正体だと知らずに声援を投げかけてくるやつらは見ていて滑稽なので、時間が経つにつれて俺の笑みがより自然なものになっていった。


 そして、難しいフレーズについては【黒杖魔導師】……【クロユリ】に担当してもらっている。

 こいつは呪文の詠唱が上手いからな。

 噛みそうなものもスラスラと口から出てくるのは流石である。

 その分ダンスについては最低限で、センターに近い位置でメインボーカルのように歌に集中してもらっているぞ!

 【ツバタ】がバックダンサーのように絵面を盛り上げ、【クロユリ】が聴く者たちの耳を盛り上げていく。

 これが俺たち【ユニフラワー】のスタイルだ!



 『あたしを誑かしたのは~あなた~☆』


 「色欲嫉妬傲慢強欲百人切りの欲深さっ!」


 

 ここで仕込みを開始するぞ!

 まずは……


 『スキル発動【深淵龍脈】(小声)』


 俺はダンスをしながら後ろを向いた瞬間に口を動かし、そのまま足を伝わせてステージを黒く染め上げていく。

 そして、俺に都合のいい環境を整えていった。

 さらに……


 『称号【煌めく血塗られた闘志1位】セット(小声)』


 【個人アナウンス(一時的森人補正により周囲に秘匿)】


 【Warning!】


 【孤高なる闘志の持ち主よ】


 【挑戦者を打倒せよ】 


 【【アリーナチャンピオン】権限により挑戦者の行動範囲を制限】


 【挑戦者【菜刀天子】は【包丁戦士】から一定距離離れることができなくなりました】



 「これは……やってくれましたね?

 全く、奇想天外とはこのことですよ……」


 【深淵龍脈】によって周囲の存在からの干渉を受けにくくした上で、さらに特定対象……つまり【菜刀天子】との繋がりのみ強化していく。

 【菜刀天子】は呆れつつも危害がないと判断し、そのまま動かないでいてくれるらしい。

 素直に助かるぞ!

 ちなみにもう一回【槌鍛冶士】に頼んで森人のマスクデータを被せてもらったので、エリアアナウンスレベルの影響力を個人アナウンスに落とし込めた。

 これで俺が【包丁戦士】だとバレずに済むのはありがたい。


 そして、ここからが最後の仕上げ。

 一度も検証していないが……


 【ability【会者定離】が起動しました】


 【槌鍛冶士】に自害してもらってabilityのトリガーを引いてもらう。

 これで第一段階、第二段階完了だ!



 『スキル発動!【鳳仙火花】花びら散らして~☆』


 「暴食怠惰憤怒七大罪重ねるのさっ!」


 

 俺は本来作っていた歌詞を無理矢理アドリブで改変してスキル【鳳仙火花】を放った。

 そうして放たれたスキルは、2羽の炎の鳥が羽を広げてくっついているようにも見える3枚の炎花弁となり【菜刀天子】へと向かっていく。

 ability【会者定離】の対面タイマン能力と、一心同体が死んだときの能力を同時に起動している状態のため攻撃力が大幅に上がっており、大規模な炎花弁が演出としてステージに浮かび上がったのだ。


 

 【おっと、それは面白いね!

 でも、危ないからちょっと手を加えさせてもらおうかな】


 【山伏権現】は徐にそう言うと、右手を団扇に見立てて【鳳仙火花】を軽く一回一振で火の粉へと変化させ、ステージ上に小さな火花が大量に降ってきたのだ!

 【山伏権現】がダメージ判定を消したのかこの火花に当たっても誰もダメージを受けずに済んだようだけどな。






 そうしてライブが終わり採点が始まる。


 「全く、こんな強引な手段に出てくるのは思いませんでした。

 ですが、ライブ自体のレベルは比較的高水準でしたので素直に評価しておきましょう」


 【菜刀天子】は俺が攻撃したことに対して呆れていたが、怒っている様子ではなかった。

 俺の性格を理解してのことだろう。



 【うんうん、君は面白いね。

 さっきの【鳳仙火花】はこの【山伏権現】がこのライブで何を見ているのか判断して盛り込んだものだろう?

 これは是非とも連れていきたいよね】


 【山伏権現】は何か意味深なことを言っているが、俺を何処に連れていくつもりなんだ……?

 拉致とか止めてくれよな、このゲームはプレイヤーに人権がないから罷り通ってしまうのが怖いぞ……




 「さて、採点結果は……

 これです!」


 観客席ー 74

 【菜刀天子】ー 2

 【山伏権現】ー 4


 「80点ですね。

 【山伏権現】がやけに評価を上げているのが気になりますが、私としては基本的プレイヤーのアイドル指数上限はこのレベルだと思っていますよ」


 【ソロだったら8点くらい上げても良かったんだけど、グループならこのくらいかな?

 もう一人の君も悪くはないけど、あくまで試金石だからね。

 ここまで魅せてくれたのは本当に面白いよ!】

 


 



 現状一位か、悪くないが……

 最後のボマードちゃんがどうなるか見物だな!


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] さらっと攻撃すんな! いや、それでこそだ包丁戦士
[一言] ボマードちゃんは観客席得点だけで90くらい行ってもおかしく無いからなぁ
[気になる点] さて、次回本命!!
感想一覧
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