883話 超人たちの【恋愛一直線】
本日2話目の更新となります。
前の話をまだ読んでいない方はそちらからどうぞ!
「では【釣竿剣士】、【ペグ忍者】、【フランベルジェナイト】の三名のアイドルグループ【恋愛一直線】から披露してもらいましょう!
それではどうぞ」
「愛に生きる俺たちがこの大舞台で捧げる曲は」
「【淀み無い生産的な愛】……なのら!」
「生産プレイヤーなら当然、心して聞いてくださいね」
「「「それではどうぞ!」」(なのら)!」
「透き通るようなこの想い~」
【フランベルジェナイト】が正面に真っ直ぐ手を伸ばし、純真な表情と声色で歌い上げていく。
それと同時に観客席からは黄色い声援が飛んできている。
流石はイケメン、全ての免罪符となるだけあるな……
「絡まらず~貴方に届ける(のら)~!」
【ペグ忍者】はその短い手足を元気いっぱいに動かし、ステージ上を駆け巡りながらあどけなさをアピールしつつ歌っている。
【ペグ忍者】のパートになると幼女趣味のおっさんたちから野太い声が上がり、会場が異様な空気になる。
ジュニアアイドルよりも幼いくらいの見た目だから、相当深刻だぞこいつら……
「さあっ、解き放てっ、私のっ、生産恋愛ィィィィ!!!!!」
急に転調し、激しい歌い方でサビに入っていったのは【釣竿剣士】だ。
他の二人も同時に歌っているみたいだがセンターを【釣竿剣士】に据えているからか、より【釣竿剣士】の歌声が目立つようになっているな。
そして、釣竿一刀流による派手な演出もあってか、観客席からは息を呑むような音が時折聞こえてくる。
まるで呼吸するのも煩わしくなるほど見入っているということだろう。
こんな三人によるライブが終わると、【菜刀天子】と【山伏権現】が舞台上に上がってきた。
【実に面白いライブを見させてもらったよ。
特に【釣竿剣士】君の釣竿一刀流の演出はいいね!
これだけでもability【現界超技術】を無理矢理実装させた甲斐があるというものさ】
「やはりそのabilityは【山伏権現】の差し金でしたか……
この世界からしてみると明らかに異質な存在でしたから意図的に持ち込まれたものだとは思っていましたが、案の定でしたね。
全く、これだから面白さだけを求める創造主というのは理屈に合いません……
私には理解できませんよ」
【ま、そうだろうね】
「……さて、観客席の底辺種族たちがようやく投票し終えたようです。
それでは結果をどうぞ」
【観客席】ー 75
【菜刀天子】ー 2
【山伏権現】ー 1
「合計78点ですね」
【早速高得点だね、おめでとう!】
【菜刀天子】と【山伏権現】はそう言いながら【恋愛一直線】メンバーたちに拍手を送っているが、ちょっと待て!
審査員の採点厳しくないか!?
【菜刀天子】は……まぁ分かるにしても、【山伏権現】はどうした!?
【恋愛一直線】のライブは面白いと公言していたのにも関わらず、10点満点中1点という辛辣な評価を下したのだ。
そう思っているのは俺だけじゃなく、ライブを行った中にもいたようで……
「観客席投票はいいのらけど、【菜刀天子】とプロデューサーの採点には納得いかないのらよ!
なんで1点と2点なのら!?」
「生産的根拠が欲しいところですが」
「……この二人が教えてくれるとは思えないな」
【その通り、ノーコメントとさせてもらうよ!
明確な基準はあるんだけど、それをここで明かすとフェアじゃなくなって面白さが無くなるのさ。
それは望むところじゃないから、やりたくないね?】
「私は【山伏権現】と違って、純粋に見たままを採点しましたよ。
1点ではなかったということをむしろ誇るといいでしょう。
底辺種族たちがただ踊っているだけでは間違いなく1点か0点でしたから」
なんということだ。
【菜刀天子】は審査を厳しくしているのではなく、上限を先に設定してそこから基準を定めたようだな!
つまり、俺たちがただライブをするだけでは普通は1点、良くても2点止まりということになる。
……辛口テレビ番組でももう少しマシな評価をするぞ!?
そして、ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】は最低点である1点を下したが、何を考えて1点としたんだろうか?
本人曰く基準はあるらしいが、俺にはさっぱり分からないぞ!?
第一候補の「面白さ」っていうのも、ability【現界超技術】を使った演出を「面白い」と言っていたのにも関わらず1点だから別の基準なんだろうよ。
今回のイベントは観客席評価で差が出るのは少しだけだろう。
つまり、本当の勝負は【菜刀天子】と【山伏権現】をいかに攻略するかが鍵というわけだ!
一番目にライブをした【フランベルジェナイト】たちには悪いが、あいつらは人柱になったと思った方がいいだろうな……
恨むなら一番を引いた自分の運を恨むんだな!!!
その通りです。
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