878話 無意識の故意
昨日は二話更新しています。
もしまだ読まれていないのであれば、そちらからどうぞ!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
いや~昨日は初ライブだったが何とかなったな!
誰も俺が【包丁戦士】だと気づかないまま応援していて非常に滑稽だったぞ!
まぁ、見た目も喋り方もガラっと変えたから別人だと思うのは仕方ないことかもしれないが……
ただ、懸念点は【クロユリ】もとい【黒杖魔導師】だ。
あいつ……姿を変えたのはいいが、喋り方を一切変えていないからバレるんじゃないかとヒヤヒヤしながら隣で立っていたんだからな!
「ククク、我輩にかかれば造作もないことよ……
このまま我輩と狂巫女で漆黒闇を作りあげるのだ!」
言っていることはよく分からないが、「このまま頑張ろう!」とかそんなニュアンスだろう。
言葉は通じるのに会話をしている気分がしないのは、異世界人相手だからだろうか?
……いや、異世界人と一括りにしても【バットシーフ】後輩のように多少分かり合いやすいやつもいるから、こいつが特に異質なんだろうな。
【それは暴食が同種だから言葉が通じたり、通じなかったりしてる……】
なんか急に【大罪魔】が割り込んできたが、毒にも薬にもならないアドバイスなのでスルーしておこう。
というわけでやってきました無限湖沼ルルラシアの特設ステージ!
昨日ライブをやった新緑都市アネイブルと比べると人が少なくガランとした様子だが、その分一回当たりのライブ時間を多く割り振ってくれるらしい。
それに、競争相手も少ないのでコアなファンを引き込むチャンスでもある。
……さぁ、いっちょかましてやるか!
ーーーーーーーーーー
『はぁ~いどうも~☆
あたし【ツバタ】と~☆』
「我輩【クロユリ】による【ユニフラワー】の独裁的饗宴の始まりだ!
ククク、お前たちを我輩の闇へと引き摺り込んでやろう……」
『い~や、あたしの光へ引き上げてア・ゲ・ル☆
今日の一曲目は【蕩けるような甘い罪】だよ☆』
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この人が集まりにくい無限湖沼ルルラシアの特設ステージでゆったりとステージを見ているのは、クラン【紅蓮砂漠隊】の支援隊長を務める俺【バグパイプ軍楽隊員】だ。
リーダーの【トンカチ戦士】さんは今日も草原エリアのボマードちゃんのライブを見に行っているらしいけど、俺は昨日付き合わされて人混みで酔ったからパスした。
ただ、他のことをやろうにもどこもかしこもアイドルイベントの影響で、まともに事を進めることが出来ないので空いてそうな無限湖沼ルルラシアのステージをボーっと眺めているわけだな!
最近は狂人……【包丁戦士】も大人しくしているらしいから、安心してボーっと出来るのは嬉しいことだ。
油断しているといつの間にか死に戻りさせられてたことが何度もあったから、俺はあいつが気にくわない。
何が楽しくてプレイヤーキラーなんてやってるんだろうな?
そんなことを考えていると、これまで出てきたアイドルグループよりも一際異彩を放つやつらが出てきた。
アルビノ少女の【ツバタ】とオッドアイ黒髪長身の【クロユリ】か。
ん?
……あんなアバター設定出来たっけ?
俺は女アバターの設定をしたことがあるわけじゃないが、オッドアイなんて作れなかった気がするんだが……
まあ、俺はどこぞやの検証に熱心な連中とは違うからあんまり詳しく知ろうとも思わないけど。
だが単純に、こいつらがどんなライブを聞かせてくれるのか気になってきたのも事実。
ちなみに、俺の好みは……アルビノ少女の【ツバタ】だな。
うちのクランにはあんな感じの小動物系の可愛い女の子がいないから、新鮮なのもあるだろう。
……【虫眼鏡踊子】の姐御に怒られそうだからこの辺にしとこ。
うわっ、なんだあのダンス!?
2つ名持ちのプレイヤーでもあんな動きが出来るやつなんて一握りしかいないぞ!?
うちのクランに勧誘したいくらいだ。
歌声も可愛いし、リーダーの言葉を借りるなら『これは推せる』な!
【クロユリ】って女の歌声もかなーりカッコいい感じだったけど、俺はやっぱり【ツバタ】の猫撫で声に近い庇護欲をそそるような歌声がアイドルとして素直に可愛いと思った!
よしっ、投票券は昨日はボマードちゃんに使ったけど、今日からはこの【ユニフラワー】に使うとしようか。
また一人、絶望の淵に立たされてしまっているようですね。
哀れな底辺種族たちです……
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